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「お前なあ」
溜息混じりに俺は玲に呟いた。
「何よ、花菜さんにこれっぽっちも意識されてないくせに。あんなに分かりやすいのにね」
玲は冷ややかに言い放つ。コイツ、黒木玲は小学校からの幼馴染で、俺に対して容赦無い。昔から頭も良く、血の滲むような努力をして今の高校に入った俺とは違い、入学時から学年でもダントツ1位の成績だ。
「玲、おはよう」
「おはよう」
玲の友人たちが玲を囲む。
「拓海、数学で指名されるんでしょ。早く行きなさいよ」
わざとらしく俺に言うと、楽しそうに話をしながら、玲が友人たちと校舎へと入って行った。
「おはよーまっつん、今日数学指名されるのか?」
親友の山根に、後ろからガシッと肩を組まれ、声をかけられる。スポーツ推薦で入学した山根は無駄に力が強い。
「山根、今日指名されるのはお前だよ」
痛みを堪えながら、少し睨んで山根に言う。
「マジで?やっべー、まっつん、いや松村様、教えて下され〜」
山根は俺の前に出て手を合わせて、勢いよく90度に頭を下げた。山根は数学が大の苦手だ。さらに数学の田中先生は、予習しなければ補習で倍以上の宿題を出す鬼だ。
「今日の学食奢りな」
「ひでー、俺金欠」
そんな話をしながら、俺と山根も校舎に入った。
放課後、数学を教えてあげたお礼にと、金欠の山根は学食ではなくジュースを奢ると言い出した。俺は、中庭の自販機のブラックコーヒーをリクエストした。
「いやー助かった。まっつんのお陰」中庭の自販機の前で山根に奢ってもらったブラックコーヒーを一口口に含む。コーヒーの渋みと苦味が苦手な俺は、少し顔をしかめる。
「せっかく奢ってやったのに、そんな顔して飲むなよ、苦手なら違うの奢ったのに」
「別に苦手じゃねーよ」
グビリとコーヒーを一気に飲む。
「あ、拓海」
「たっくん」
2階の渡り廊下を花菜と玲が一緒に歩きながら、花菜は中庭の俺に手を小さく振っている。2人は生徒会役員で、よく一緒に行動しているのを見かける。
「まっつんの周りは美人が多いよなー。清水先輩も黒木も。清水先輩はふんわり優しいお姉さんタイプだし、黒木はクールビューティーって感じ?」
「⋯」
俺は無言でコーヒーを飲み干した。




