表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『見えない鎖』  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/173

第九十章 出口の光



 地下室の奥深く、由紀と奈々の前にかすかな光が差し込んだ。

 それは温かく、柔らかく、冷たい地下室の闇とは明らかに異なる光だった。


 「見えた……出口?」

 奈々の声が震える。

 由紀は頷き、手をさらに強く握る。

 「そうだ……もう少しだ」


 影は依然として二人の足元で蠢き、仮面の人物の冷たい視線が背中を射抜く。

 低く唸る声が響く。

 「逃がすな……ここからは……」


 だが、リボンの光は揺るがなかった。

 微かな希望の光は、奈々の意志と由紀の決意を繋ぎ、出口への道を照らしていた。


 ***


 被害者の意識も再び幻視の中で追体験していた。

 地下室の通路を進む二人の姿が鮮明に映る。

 影が揺らぎ、仮面の人物の存在が近づくが、奈々の声とリボンの光が二人を導く。

 「もうすぐ……出口が……」

 被害者は息を呑み、手を握りしめる。


 ***


 由紀は奈々の手を引きながら、足元の散乱した錆びた道具や鎖を避けて進む。

 影は最後の抵抗を示すように床や壁を這い、二人の進路を阻もうとする。

 しかしリボンの光が影をかき消し、進む道を確実に示していた。


 「もうすぐ……行ける……」

 由紀は心の中で繰り返し、奈々も小さく頷いた。

 「ユキ……行こう……」


 出口は確かに存在した。

 微かに差し込む光が、冷たい鉄格子と暗い通路を照らし、外の世界への道筋を示していた。


 ***


 仮面の人物は一歩前に出た。

 「逃がすな……絶対に……」

 低く響く声は、恐怖と怒りが混ざり合い、地下室全体に反響した。


 由紀は足を止めず、奈々の手を握り続ける。

 「もう怖くない……光がある……」

 心の中で呟き、最後の一歩を踏み出した。


 影が暴れ、最後の抵抗を見せる。

 しかしリボンの光が闇を切り裂き、二人を出口へと導く。


 出口の扉が目の前に現れる。

 鉄の扉は古びていたが、差し込む光が確かに外界の存在を示していた。


 「行くぞ、奈々! 一緒に外に出るんだ!」

 由紀は声を張り、奈々の手を強く握った。


 奈々も震えながら、力強く頷いた。

 「うん……行く……」


 出口の扉に手をかけると、錆びついた金属が軋む音を立てた。

 微かに響く振動に影は怯え、仮面の人物の存在も瞬間的に揺らぐ。


 リボンの光が一層強く輝き、二人の足元の影を完全に消し去った。

 その光に導かれ、由紀と奈々は扉を押し開ける。


 光が一気に差し込み、地下室の闇が押し流される。

 風が吹き込み、冷たい空気が温かさに変わった。

 出口の向こうには、外の世界の匂い、空の光、自由の感覚が広がっていた。


 奈々は涙を流し、由紀に抱きついた。

 「ユキ……ありがとう……助けてくれて……」


 由紀も涙を流しながら、彼女を抱きしめ返す。

 「大丈夫……もう怖くない。外に出たんだ」


 地下室の闇は消え去ったわけではない。

 影の残滓、仮面の人物の存在、過去の記憶――それらはまだ二人の心に影を落としている。

 しかし、今は確かに光の中にいる。


 出口の光は、二人に未来を示していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ