第五十一章 檻の中の祈り
――鉄が軋む音が耳を劈いた。
目の前で、二人の刑事が黒い影とぶつかり合っている。
銃声、鎖の音、叫び声。
すべてが渦を巻いて、鼓膜を突き破るように押し寄せてくる。
私は膝を抱え、震える身体を必死に押さえ込んでいた。
それでも止められない。
歯の根が合わず、がちがちと鳴る。
――もうすぐ、助かるのか?
それとも、次に殺されるのは私なのか?
視線を上げると、檻の外で刑事のひとりが叫んでいた。
「鍵はどこだ! この檻を開けろ!」
もうひとりは、鎖の嵐を受け止めながら影に向かって突っ込んでいく。
その姿は命懸けだった。
――私のために、命を張っているのだ。
胸の奥が熱くなった。
涙が、視界を滲ませる。
その時だった。
鎖の先端が檻の格子にぶつかり、鉄がきしんだ。
衝撃で私は思わず叫び声を上げる。
「いやぁっ!」
すぐ近くで火花が散り、頬に熱がかすめた。
髪の毛の先が焼け焦げる匂いがした。
「落ち着け! 絶対に助ける!」
刑事のひとりが、こちらを振り返って叫んだ。
その言葉に縋るしかなかった。
私は必死に首を縦に振った。
――信じるしかない。信じなければ、この檻の中で心が壊れてしまう。
影が低く笑った。
『救いを待つ者ほど美しい……だが、救いなど最初から存在しない』
その声に、全身の血が凍る。
嘲るような調子が、心臓を握り潰すように響く。
「うるさい!」
刑事の声が響き、銃声が再び轟いた。
私は両耳を押さえ、目をぎゅっとつむる。
――お願い、早く……早くこの檻から出して……!
喉の奥で必死に祈るような声がもれた。
祈りは届くのか、それとも鎖に断ち切られるのか。
檻の中で、私は震えながら、ただ出口の音を待ち続けた。




