第三十章 突入
合図と同時に、黒ずくめの突入部隊が篠崎の屋敷へと雪崩れ込んだ。
深夜の静けさを切り裂く破砕音。玄関の厚い扉が破られると同時に、私たち刑事も後を追う。
「確保!」
怒号が飛び交う。屋内に散開した部隊が次々に部屋を制圧していく。
私は心臓の鼓動を抑えながら、懐中電灯の光を壁に走らせた。
豪奢な調度品、無駄に広いリビング。だがそこには誰の姿もない。
冷たい緊張感が漂うだけだ。
「篠崎は?」
後方の若い刑事に声をかける。
「上階を確認中です!」
だが、私の直感は別の方向を指していた。
この家には――地下がある。
そして、そこにこそ核心が隠されているはずだった。
「地下を探せ!」
私は叫び、部隊の数人を伴って廊下を走った。
そのとき、階段の影から黒いスーツ姿の男が現れる。
篠崎だ。
だが、彼は意外なほど落ち着いた表情を浮かべていた。
「……これは一体どういうことだ。夜中に突然押し入ってきて」
声は震えていない。むしろ挑発的ですらある。
「篠崎一誠、警察だ! 動くな!」
部隊の一人が銃を向ける。
篠崎は両手をゆっくりと挙げた。だが、その目は冷ややかだった。
「私は何もしていない。ただの企業経営者だ。証拠はあるのか?」
胸の奥がざわつく。
この男は自分の罪を認める気など毛頭ない。
そして――おそらく地下を隠そうとしている。
私は篠崎に近づき、鋭く睨みつけた。
「証拠は……今から見つけ出す」
篠崎の眉が僅かに動いた。
――図星だ。
この家の奥底に、必ず何かがある。
「地下はどこだ」
私は低く問いかけた。
しかし篠崎は答えない。
その沈黙こそが、すべてを物語っていた。
背筋に冷たい汗が流れる。
時間がない。
もし篠崎が先に何かを仕掛ければ、救えるはずの命を失うかもしれない。
私は拳を握りしめ、部下たちに向かって叫んだ。
「――急げ! 地下を探し出せ!」




