表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第5話 消える白さ

夜勤明けの帰り道、自転車を押しながら、家の灯りをぼんやり思い浮かべていた。


 娘はもうほとんど会話をしてくれなくなったけれど、それでも誰かが待っている家があるだけ、まだマシだと思っていた。


 登り坂がきつい。足は鉛のように重い。


 街の片隅、車通りの少ない道。

 誰にも気にされないこの道が、私の人生みたいだと思う。


 ふと、遠くからライトが近づいてくる。


 その光に、反射的に目を細めた。

 次の瞬間、耳元で金属音が跳ねた。

 何が起きたのか、よくわからなかった。

 体が宙に浮いて、地面に叩きつけられた。

 自転車と一緒に側溝に転がり落ちる。


 誰の声も聞こえない。

 助けてほしいとも思わなかった。


 ただ、見上げた空には、街灯の蛍光灯が一つ、どこまでも白く、何も照らさずに灯っていた。


 寒さも痛みも遠ざかっていく。


 自分が消えていく気配だけが、静かに、世界から切り離されていく。

 誰にも見つからないまま、私は、蛍光灯の白さの下で、静かに消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ