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09 最終回 ポテトチップス

【フェミニン】・・・女性らしい、という意味合い。

 

 魔法の森に戻って来た姉とケビンに、ジェイミーが飛び跳ねて両手を振った。


「おねーちゃーん、と、ケビーン」


 隣を歩いていた両方が少し笑う。


「日常が戻って来た」


「普通では、ないが」


 お姉ちゃんだぁ、と言いながら周りを跳ねまわるジェイミー。


 四葉しかないクローバー畑のクローバーのしおりを渡す。


「お土産だよ」


「おいしそー」


「うん、本にはさんでね」


 え?とケビン。


 しおりにして、使って、って意味です、とメイト。


 ああ、と少し動揺するケビン。 

 

 ジェイミーがケビンを見た。


「おぬしからの、お土産は?」


「ポケットいっぱいに、どんぐり、を、詰めてきたから」


「はよう、見せたも」


「それから、これ」


 メイトが魔法石藏之助から、豪華な飾りのついたフェミニンな箱を両手で示す。


「なにこれ?」


「小物入れだよ」


「やったーっ、どんぐりを、入れてしまおうっ」


「おさまるか分からないほど、どんぐり、持ってるね」


「うはうはだぁーっ」


 受け取った箱のふたを開けると、小さな鏡がついていることに気づくジェイミー。


「すげぇ、すげぇよお姉ちゃん、どんぐりが二倍に見えるじゃんっ。ありがとーっ」


「民はすこやかであれ」


「どうした、お姉ちゃん?」


「ううん」



「お姉ちゃんって、時々変になるよね、疲れてるんだろう、休め」


「うんうん、ありがとう」


 ケビンが言う。


「しばらくしたら、王に謁見の機会があるらしい。ジェイミーも呼ばれたよ」


「ん?ああ、そう」




 ―――――

 王宮 謁見えっけんの間

 ―――――



 『きょうだい伴』たちは、詰襟の緑色を基調にした服を着ている。


 部屋の奥に立派な椅子があり、その椅子に座るべきして座っているのは王。


 うやうやしく形式通りに挨拶をして、そして王ポテトティニウスが言った。



「わたしの妻、亡き正妻にあたるが、わたしは正直、義務でお前たちを作った。


 正妻は若き頃のわたしが争いの渦中をおさめにいく時に、言った。


 残虐な殺しをする連中だと聞くから、重々お気を付けをと。


 あなたはポテト、このままじゃわたしは、マッシュポテト夫人よ、と。


 わたしはその時、生きて帰ったら、まずその女のために風呂に入ろうと思った。


 王になって正妻になったその女は、わたしを奮い立たせるためのその言葉で、


 天により子をなせなくなっていた。


 正妻が亡くなって、そして今からでも血のつながった世継ぎを、と言われた。


 ポテト、頑張った。


 長男が二十歳、一番下が四歳、我、いつの間にか八十歳。


 なんだかよく分からないが、頑張っているお前たちの顔を見て安心した。


 なかなか可愛く思っている自分に気づいた。


 なにを気にしていのか、自分の子供だというに、このままでは正妻に怒られる。


 未だ子供ができた自覚がむずかしいが、君たちのことを愛している。


 待っている間に我が考えておいた。

 

 きょうだい伴になったというので、君たちのことをポテトチップスと呼ぼうと。


 お前たちが、いやでなければだが」



 リールーが、ほまれだかいです、と言った。


 嬉しさなのかジェイミーが小さく、かかとでリズムを刻み始めた。


 

「ジェイミー、ジェイミー、ジェイミー」


「もう、あかーん、あかん、あかんで~」



「ん?どうした?」と王。



「ポテチ」



 なるほど、ときょうだい伴たち。


 王に向かって、ポテチ、と頭をさげる。



 メイトも動悸を押さえているのか、胸元に手を当てた。


「ポテチ」


 ケビンがはっと気づいて、声をあげた。




御意ぎょい、的なこと?」




ーおわりー

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