07 聖戦 其の壱
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試練の間にて、未だ「なんで?」と続けるスナッピーにいらつきはじめる面々。
「なんなのだ?」
パアラトが呆れいぶかしみながら言う。
「なんで天命はお前たちなんかを選んだの?」
固く表情を守るきょうだいだが、ケビンが言い放った。
「お前を王に選ぶ理由は、天命にはないぞっ」
また、「なんで?」と繰り返し始めるスナッピーに、魔法書を開いていたリガパト。
「多分こいつ、時間をかせいで体が再生するの、待ってるのかも」
「なるほど、そこまで汚いのか」
「死なばもろとも、って言ったのに?」
プボスマとカドアが困惑している。
「こうなったら、我が先に。水をやるから、姉さまははやしてっ、兄さま、耕してっ」
「どういう意味だ?」
「そしたら、リガパト兄さま、雷魔法であいつに落としてっ」
「ほう、なるほど」とケビン。
「一回しかできそうにないっ、伝わているかっ?」
「お守りします、王子」とケビン。
分かった、と言って、ムラサメを取り出すパアラトは、その脇差を組んだ。
「『ウォーター・ウォタリ・ウォタル』っ」
パアラトがつるぎをかかげると、とんでもない大きさともよべる水玉が空中に浮いた。
その水玉から一部が小さく分かれると、銃弾のように水圧弾がスナッピーを撃った。
そのあとふたつに分かれた水玉の片方がが弾けてスナッピーの上に落ちる。
「なんだ、これくらい?」
スナッピーは調子に乗って、うごめき出し、パアラトに気をとられた。
案内人の老婆が、「わたくしめは、少々退室いたします」と言った。
空間にひびが入って、まるで割れるような感覚がしたあと、そこは広い庭。
「なるほど、『タガヤス』っ」
長刀菊一文字でプボスマが地面を切ると、その波動で固い土が盛り上がった。
残りの空中に浮いた水玉が、雨のようにあたりに降った。
そこでパアラトは気絶して、ケビンが強く抱きとめる。
「理解した、『サカス』っ」
すらりと指揮をとるようにカドアがつるぎを抜くと、魔法でつる植物がはえだした。
パアラトの魔法のおかげで急速に成長する植物が、スナッピーの体を戒める。
「なにをしているっていうんだ?」
スナッピーは不思議そうだ。
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再び錠前を開く案内人は、祈りの間の扉を開けた。
そこに、メイトとリールーが走って来る。
「兄さまたちはいずこかっ」
案内人は、庭でございます、と丁寧に言った。
「メイト、行くぞっ」
「はいっ」
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「『フウダ』っ」
エクスカリバーでしめしたスナッピーに、風圧が飛ぶ。
「バリアっ」とスナッピーが言って、風圧はそよ風になってどこかに溶けた。
「ふふん、これくらいなのか」
リガパトが、続けて言う。
「スナッピー、忘れたのかい?僕を怒らせると、きっと雷が落ちるよ?」
「ほ~、晴れてますけどね」
「『サンダー、サンダリー、サンダウル』っ」
リガパトの放った、順番により強度の強くなる雷魔法。
水に濡れた小さな雷玉がまずスナッピーに付着する。
「痛い」
ケビンが開けた大穴、その体の中に侵入した雷玉が弾けて放電。
その悲鳴をかきけすかのような雷刃がななめにスナッピーの体を傷つけた。
「痛いじゃないかーっ」
プボスマがぼやく。
「しつこいな」
「おのれぃ、聞こえたぞぉ、いけしゃあしゃあ、とぉーっ」
リガパトがめまいでその場に倒れる。
それを見て、すぐにスナッピーに向き直すプボスマ。
「制裁を下す」
プボスマはその大きな体ににつかわぬ速さで走り近づき、直接スナッピーに斬り込んだ。
横に払ったその攻撃は、スナッピーの体をたいがい停止させた。
「参戦いたすっ」
そこに現われたのはリールーで、すぐあとからメイトが走って来る。
リールーは、「アーサーよ、力をかしてくれ」と叫んだ。
悪しきものを貫く王のつるぎアーサーのつかをにぎると、するりとその刃を見せた。
さやをメイトに投げてあずけると、リールーは神がかりになって、走り出した。
標的はスナッピー、そして大きな雷が青空に走るかのような攻撃だった。
「兄さま、飛ぶから、協力してぇっ」
「承諾するっ」
プボスマの腕に走り飛び、そして勢いをつけた彼の腕の補助で、巨体の頭上まで跳ぶ。
「飛龍降臨斬っ」
頭上からまっぷたつに割れたその体をよけて着地したリールーが、めまいをおこす。
プボスマが「よく頑張った」とリール―を片腕で抱き上げて飛びすすさる。
「いやだぁ~、いやだぁ~、わたしを殺さないほうがいいと思う~」とスナッピー。