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06 勇者のつるぎに選ばれし者

【シャアザローナ】・・・珍しい植物。希少価値が高い。伝説や幻説のある美しい花。架空設定。


 ―――――

 【堂万寿 龍宮りゅうみや

 ―――――


 祈りの間にて。


 スナッピーは、管理案内人と話をしている。


 パアラト王子があまりにも嫌がるので、祈りの間に入れなかったのだ。


 祈りの間でパアラト王子の熱がひいてきて、ケビンに言った。


 それを、共に祈りを捧げた『きょうだい(はん)』たちが聞いている。


「スナッピーは魔法国をゆるがす悪党なり」


「やはりか」と、プボスマ。


「天啓で、そんなことを聞いた」とリガパト。


「わたくしも知っていました」とカドア。


「うん。パアラト、大丈夫だよ」とリールー。


「これから先は、わたくしめがリールー姫の付添人です」と、メイト。


「スナッピーが入室できなかった理由が分かった気がする・・・」とケビン。

 

 メイトとケビンは、元はひとつの血筋だからじゃないのか、とパアラト。

 

 なるほど、と、メイトとケビンは素直に王子の英知に関心した。


 

 祈りの間を出てきた面々に、スナッピーが首をかしげる。

 

 管理案内人が、祈りの間の鍵を閉めたからだ。



 リールーとメイトは、真新しい白い服に着替えた。


 そのまま秘密の通路を渡り、これからアーサーをたまわりに行く。


 その儀式の決まりで、心を静め、いそいそと歩を進める。



「別の回り道があるようです。これから本格的な儀式があるので」


「ほーう・・・」


 ケビンが言うと、スナッピーは鼻を鳴らして、案内人の先導の軌道に歩き始めた。


 王子や姫は皆口をとざし、神妙な面持ちでシュアザローナの緑のアーチの道を出た。


 陰っていた視界と場所が拓け、陽光に目が慣れた頃、そこは暗闇の中。


 赤く淡く光る魔法陣のようなもので、地面ができている。


「どういうことですっ?」


 スナッピーが叫ぶと、案内人の老婆が「試練の間です」と答えた。


「スナッピー・・・ぬし、まことに王に仕える気はあるのか?」


「え?」


 プボスマの言葉に、急に挙動不審になるスナッピー。


 その険しさを隠せぬきつい視線たちに、スナッピーは何かを感じ取ったようだった。


「もちろんっ」


 スナッピーは、斜めに大きくうなずいた。


 リガパトが言う。


「なにを、もちろん、って言ってるの?」


「もちろん、で、ございますっ」


 スナッピーは手を合わせるふりをして、片手をななめにあやまるふりをした。


「これは人を表すと思う、入るための挨拶です」


「ちゃんと言いなさい」


 カドアの言葉に、スナッピーは顔をゆがめた。


「あの~、あの~、あの~、はいっ、もちろん、ですっ」


 パアラトが叫ぶ。


「答えよっ」


 スナッピーが直立不動になって固く言い放った。


「もちろん、わたくしめは、王に仕える気など、さらさらありませんっ・・・あ、やばい」  


 王子と姫がつるぎを魔法石の指輪、藏之助から抜き出した。


「ならばなぜ、王宮にいるっ?答えよっ」


 プボスマの精悍な問いに、スナッピーは半べそをかきはじめた。


「答えよ、と言っているのだっ。答えぬと斬るぞっ」


「わたしが王にふさわしいのだぁ~、みな、わたしに下ればいいのだぁ~っ」


 あまりの不格好に、ケビンは顔をしかめた。


「イヤだな・・・」


 ケビンは藏之助から魔法銃を取り出し、すぐさまかまえて、引き金を引いた。


 標的はスナッピーのひたいで、そして射抜いた穴が見えたころ、スナッピーは倒れた。


 数秒の間。


「あっけないな・・・?」


 プボスマのつぶやきで、まるで転んだことを言ったかのような口調でそれは言った。


「いーたーいーっ」


 起き上がったスナッピーが、くそうくそうと、だんだんと大声になっていく。


「こうなったら、死なばもろともだぁーーーーーーっ」


 黒い光とでも言うかもしれない何かがあふれ出し、体が侵食されていくスナッピー。


 それが呪いの姿なのだろうかと思わせる恐ろしい姿にへんげした彼は、言った。


「お前たちはなぜわたしより美しい?」


「その炎で身をほろぼせっ、『ファイラガ』っ」


 ケビンは魔法銃から、真っ赤な光の気を放つ炎属性の銃弾をスナッピーに撃ち込んだ。


 腹のあたりに大きな穴が開き、スナッピーが「なんで?」と繰り返し始めた。



 ―――――


 堂万寿(とうます)龍宮(りゅうみや)芯間蜜納(しんまみつな)、そこは森の木々に囲まれた泉。


 その真中に円形の拓けた場所が見え、そこまでまっすぐと大理石でできた道がある。


 今まで控え、うしろを歩いていたメイトが、リールーの隣を歩く。


 大理石を踏む素足で、白いまっさらな衣装が神妙をあおる。


 ひたひたと水は満ちていて、自分が聖なる場所にいることをまるで知らせている。


 円形の拓けた場所に、何もないつるぎ台がある。


 信託の通り、メイトとリールーは身長差はあるが、左右対称に舞いを始めた。


 その弾くような、それでいてなめらかな動きはしばらく続き、そしてやんだ。


 ゆっくりと目をつぶるふたりに、大きく風が吹いた。


 風が通り過ぎ、そしておもむろに目を開ける。


 体勢を慎重に戻すと、目の前の台に、いつの間にかつるぎが現れていた。


 リールーが言う。


「アーサー、勇者のつるぎ・・・そのつるぎに選ばれし者がいずれ王となる・・・」


 リールーは細く息を吐き、アーサーに手をのばす。


 両手でうけたまわると、そのつかに片手をやった。


「定められし時にだけその刃が姿を見せ、悪しきを裁く王のつるぎ・・・」


 カタカタと、アーサーが震えだした。


 リールーが数秒、その意識に集中する。


 メイトを見たリールーが冷静に言った。


「兄上たちが戦っておられる。メイト、参戦しようぞ」


「御意」


 メイトはそう言って、帰り道を走り出したリールーのうしろに従った。


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