02 アーサー
【ゴブリンズ】・・・ゴブリンが経営しているとうわさのファッションブランド。架空設定。
【ドレステイル】・・・訳→豪華な布の切れはし。ファッションブランド「ヴィナ」のアイテム。架空設定。
【オビスカート】・・・女性物の着物のオビをスカートみたいに切り取って、ベルトに通す簡易の正装。架空設定。ちなみにブランドは「ヴィナ」。
指定された待ち合わせの場所に先についたのはメイト。
藤の花が見ごろな頃合いで、頭上に広大と枝垂れている。
今回のメイトは、Yシャツに七分丈の黒いズボン、三つ折靴下に、パンプス。
腰のうしろに造花、ふんだんにフリルを使ったドレステイルをベルトでしめている。
藤の花に触れようとしたその指先が少しためらう。
「やぁ」
そこにケビンが現れ、メイトが振り向いた。
メイトが用意したケビンへの贈り物は、ネクタイとオビスカート。
ケビンは黒が好きだと言うので、似合うように計算したつもりだ。
ケビンはシルバーアクセサリーが好きで、すでに腰に見新しいものを飾っていた。
梅の花のシルバーチェーンで、花粉の部分は金でできている。
「その腰の飾りは、ゴブリンズ?」
「そう、新作だ。気に入っている」
「よく似合ってる」
「うんうん。ドレステイル、似合っているよ」
「ありがとう」
「本題に入ろう」
「うん」
「僕たちは王族に仕える身」
「うん」
「隠された王の血筋が召し上げられ、寮に入った」
「それは少し前に聞いたわ」
「うん、王位継承権の証として、伝説のつるぎをたまわることになった」
「確か全員腹違いで、五人きょうだいよね?」
「そう、これは天命だ」
「分かった」
「いや、まて、まだ話の続きがある」
「ん?」
「君も選ばれた」
「どういう意味?」
「もとはひとつの家だった王族が、お家騒動をおさめるために、一方に仕えた」
「それが我が家のはじまりだって、小さい頃に聞いたわ」
「つまり、俺達は王族の血をひいている」
「昔の話でしょう?」
「君が、天命に選ばれた」
少しぎょっとするメイト。
「どういう意味?」
「隔世遺伝で君はお姫さまかもしれないんだ」
きょとんとするメイト。
「私、そんな出世欲ない」
「意味分る。ただ、天命だ」
「伝説のつるぎって、何?」
「普通、王位継承権を持たせるのは、勇者のつるぎアーサーだ」
「そのアーサーって言うつるぎに選ばれたら?」
「選ばれた者は、次の王になると言われている」
「なるほど」
「アーサーだけではなく、伝説のつるぎに選ばれた者は、
王になる可能性をそのまま王に仕えることになる」
「きょうだいでも?」
「そうだよ」
「その人たちは、それでいいの?」
「彼らはもともと、生まれが違う。思考回路が通常ではないときく」
「異常って意味?」
「いや、特別な作りだと言いたかったんだ」
「失礼しました」
「うん」
「確か姫に、私に年齢が近い方がいらしたわよね?」
「そうだな。姫はふたり。王子は三人。末弟は、まだ四歳だ」
「遠出に連れて行くの?」
「そうなんだよ。僕はそのお守役だ」
「なるほど」
「うんうん、君は伝説のつるぎのどれかに選ばれた、だから取りに行くってこと」
「分かったわ」
藤の花がそよ風に吹かれ、さわさわと音をたてた。




