82話 喋れるデュラハン
夏の暑さがまだまだ続く今日この頃。私たちは、村に着いていた。
「日中に着けて良かったね」
「そうだな、暗くなったら村は入れないからな」
「二人ともキンキンに冷えたエール、飲まない?」
「「飲む!」」
私たちは、宿の一階にある食堂スペースで旅の疲れを癒していた。
三人とも、いい飲みっぷりである。ビンに入ったエールを喉を鳴らせ飲んでいく。
それを見ていた村人たちも、こぞってエールを頼み出す始末である。
「やっぱりエールはうまいな」
一本飲み終えたフェクトが、満足気な表情をして言っている、
それに共感するかのように、ナズナも頷いている。
旅の疲れを癒していると、村長らしき女性が慌てた様子で入ってきた。
「あ、剣聖様。少しお話よろしいでしょうか?」
「何かありました?」
「あの、魔物討伐をお願いしたいのですが」
申し訳なさそうに、頭を深く下げている。
「別に構いませんよ、二人とも行くわよ」
そうして、私たちは外に出た。村の周辺に魔物の気配がするが、村の中心部近くでは視認することはできない。
「ナズナ、高いところから見てきてくれる?」
「ヘーイ」
持ち前の跳躍力を生かし、すぐさま見張り台の屋根に飛び乗った。
ナズナは、辺りをキョロキョロと見渡している。
「どう何かいた?」
「なんでか知らないけど、デュラハンが居る」
村人たちは、パニックを起こしてしまった。すぐさま、逃げようと言い出すものも居れば、動かないと言っている人もいる。
「みなさん落ち着いてください!」
村長らしき女の人が、声を出して収めようとするが全く治る気配なんてない。
「みなさん聞いてください! 私がどうにかするのでどうか落ち着いてください」
「剣聖様……」
村長の声で、気がついていた人をのぞいて驚いて声も出せない人まででた。
先ほどまで、言い合っていたのが嘘のようだ。
「みなさん落ち着きましたか? 家の中で待っていてください。ここの護衛として、フェクトを置いておきますので」
フェクトは、驚いたのか目を見開いてパチパチさせていた。
「アリア、デュラハンが結界に向かってきてる!」
「アリア、君はそこで警戒を続けて! 他の魔物が出たら討伐よろしく」
そう言って、私は一気に結界外に飛び出していった。
「残念だったな! お前は結界には触れられねょ!」
攻撃しようとした剣を弾く。体勢を一瞬崩れた様子だが、すぐに体勢を整える辺り、訓練された動きである。
「攻撃してこねぇのか? しないのならこっちからするぞ!」
そう言っても動く様子はなかった。ジッと立ち止まったままだ。
ただ、私は次の瞬間理解した。
「カウンター狙いかよ、上等じゃねぇかお望み通り、こっちから手を出してやるよ」
カウンターを狙うだけあって、攻撃の対処がしっかりいているのがわかる。
それにあの剣、ただの魔物が持てるような剣ではない。
「その剣、ドワーフの職人が作ったやつだな」
何も答えない。それはわかっていたが、尋ねて見たくなったのだ。
何か反応を示してもめんどくさいだけだが、好奇心にはつくづく抗えないと思い知らされた。
「私は、カウンターでは殺せないわよ」
その瞬間、動き出す体。どうやら、それは本能で理解しているような感じだ。
私は、剣を弾き攻撃を叩き込むことに集中した。だんだんと、避ける受けるといった行動を取らなくなるデュラハン。
「ねぇ、そんなつまらないことをする気?」
声は普通だが、内心イライラが溜まっていた。先ほどまで、本能的に殺そうとしていたのが完全に消えている。
終いには、なんら抵抗せずに殺されようとしている。
「がっかりだよ君には……」
剣を強く握り込む。次の瞬間、私は確かに斬り込んだはずだ。
それは、失敗に終わる。
「ワガケン、マダシナヌ」
腕の中で大事そうに抱えている首が喋った? 特殊固体として、再生成されたのか? わからないが先ほどに比べて格段に強さが上がってる。
馬を降り、剣を構えや直している。
「イッサツイットウ」
それは確かに剣の技である。それに驚きを覚えつつも受け流す。
「まさか、魔物になった姿でも技を使うとはな。面白い、遊んでやる」
「ザンシュバットウ」
先ほどまでの、カウンター戦法をとっていたとは思えない攻撃の仕方だ。
完全に即攻撃に移る、即攻撃型の戦い方だ。
「戦法がバラバラじゃねぇか! そんなんで、私に敵うと思うな!」
即攻撃型には、即攻撃で潰すに限る。魔力を足に集中させスピードを上げる。そして一撃お見舞いしたのだ。
「対応出来るわけねぇだろ、一つを極められてないお前に私が負けるわけない」
デュラハンは、そのまま消滅した。そうして村に戻ると、完全に私をほったらかしにして、先に宴会を始める二人。
「二人ともいい度胸してるね」
「「はいすみませんでした」」
二人は平謝りを即座にしてきた。
「まぁいいよ、明日には出発するから今日は楽しみましょう」
そうして、他種族との交流もあった数ヶ月を過ごしたのだった。
まだこれから先私たちは、色々と交流していくであろう。それは、剣聖だからとかではない。旅というのは、出会いと別れの連続である。
それをどう過ごすか、それは自分自身がどのように行動するのかで、変わっていくものなのだ。
「っておーい、何考えてんだ?」
「いやね、冬までの間どうしようって思ってね」
「そんなの簡単だよ! 旅を続ければいいんだよ」
そんな当たり前の答えに思わず笑ってしまう私。二人は、不思議そうな顔でこちらを見ているが、移ったのか三人とも最後は笑い出していた。
「いや、昨日はよく笑ったね」
「本当だよ、でも楽しかったからいいの」
そんな中、村長が話しかけてきたのだ。
「昨日は本当にありがとうございました! 村の皆さんも楽しまれていました」
「いやいや、私たちは自由に探していただけですよ」
「旅の幸運をお祈りいたします」
私たちは、お礼をつげ新たな旅に出発するのであったとさ。
二章最終回です。




