76話 モルモット
(じゃあそういうことだから)
私は至って冷静だ。何度か深呼吸をしながら街中を掛けていく。
スカイが襲われた場所まで来ていた。そこには、暴行されていたのであろう血痕がべっとりと地面にある。
近くには、血のついた鉄パイプが複数転がっており、事件の重さがずっしりと伝わってくるような気がした。
「女の子一人によってたかってやりあがって」
行き場のない怒りを、壁にぶつける。わざわざ、路地に追い込んでいるのがクソである。
「絶対に許さない、どうせまだこの国にいるのはわかっている」
あの箒には、ある特殊な加工をしておいたのだ。そのおかげで、犯人がどこにいるのか私には丸わかりだった。
とりあえず事件現場を見たのは、正解だったかもしれない。まだ多少冷静さを取り戻せるっていうものだ。
そのまま、アジトに行っていたら奴らは死んでいただろう。
そこだけは、感謝してほしいものだ。
そうして、箒が反応する方に足を向けて動いていく。足は、どこか軽やかでとても動かしやすく感じた。
そして見られていることにも私は、気がついていた。それは、スカイが私たちの前に現れたのを知ってからの行動だろう。
今にも倒れそうな子が、街中を歩いていたら目立って当然だ。
だが、それを不思議にも思わないのもわかっているつもりである。
今まで箒を暴走させ、怪我をしてきた子だ。街の人たちからすれば、日常茶飯事のことなのだろう。
だが、状況が一変した。それは、私たちに出会ってしまったことである。
それで、私がキレたのだ。監視をしようとするのも当然だ。
「だが、甘い」
「え、どこいった?」
次の瞬間、家の屋根からこっそり見ていた男が屋根から落とした。
「自分たちの状況も掴めていない者に、私が負けるわけないだろう」
男を、裏路地から突き落とし即座に落下の最中にキャッチ。
そのまま近くにあった、ゴミ捨て場に投げ捨てた。
「遊びも終わりにして向かうかしら、必死に逃げようとしているけど無駄なのに」
私は、不敵な笑みを浮かべつつ奴らを追った。だが、奴らは逃げられない。
魔法界にアジトの周りは占拠され、結界により転移すら使えない状態。
正面突破以外では、逃げられないのである。
「やぁ、ご苦労様です。後は私がなんとかしますので」
「くれぐれも殺さないようにお願いします」
せっかくアジトに着いたっていうのに、テンションを下げるようなことを言う。
おそらくイデリアの余計な一言だろう。せっかく、モルモットを提供すると言っているのに、そんなのを言ってくるのは、反則だ。
私は、髪をポリポリと掻きつつドアを開けた。
一階は、誰も居ない。二階に複数人いるのが気配でわかる。とてもあたふた様子なのか、落ち着きがない。
「ごめんください、剣聖でーす!」
とりあえず声を出してみるが、反応もないので二階へと続く階段を登っていく。
「お熱いお出迎えだね」
この状況で、魔法攻撃を放つとはいい度胸である。とても気にいった。
一撃では、終わらせないようにしよう。だが、その直後のことだ。魔弾の威力が急激に下がったような気がした。
顔が青ざめているような気がする。
「どうしたの? もっと楽しんで戦闘しなきゃ面白くないでしょう?」
「何言ってんだコイツ。頭がおかしいのか?」
次の瞬間、階段前にいた二人は、家の壁を突き破って飛んでいった。
「失礼なこと言うわね、本当に……」
そして、複数部屋があるみたいだが一箇所以外誰もいない。
そのドアの前で立ち止まり、ノックをする。
「すみません、こちらに用があるのですが開けていただけませんか?」
ドアノブには、ご丁寧に鍵がかかっている。ガチャガチャと触るが、開く様子はない。
「開けないのであれば、実力行使がお望みなのですね」
私は、ドアを蹴り飛ばした。その衝撃で、ドアは吹き飛んだ。
「へぇー、タイミングよくドアを破壊したか。これで倒れてくれたら、ありがたかったのにな〜」
部屋の奥に、ここのボスであろう人物が椅子に座っていた。
「私は剣聖よ。あなたは?」
「グーレン」
グーレン、どこか引っかかる名だった。というか、その名前は知っている。
「お駄賃稼ぎとしては丁度いいね」
「テメェ、お頭になんてことを! 死ねぇぇー」
「黙ってたら、手荒なことはしなかったのにな」
部屋に入ってすぐのかどにいた男たちを、床にめり込ませた。
私は、木剣を構える。
「あなたたちは、殺しはしないわ。ただ、モルモットになってほしいって魔法界からの依頼でね」
「チッ、アイツら。クソがー」
お頭さんがやる気になって結構結構。そっちの方が早く片付く。
「ハイ、お終い!」
一瞬にして、気絶させ魔法界に突入させた。
「お金の方は、ギルドによろしくね」
私は、魔法界の職員たち全員に聞こえるように言った。そして、私は事件が解決したので箒屋に戻る。
「剣聖様ー!」
スカイは、抱きついてきてまた泣いている。
「はいこれ、ちゃんと取り返してきたよ」
スカイに返し私は、店主をぶん殴った。
「テメェ、わかってるよな。お前のせいでもあるんだからな」
「わかってるよ、それより行った方がいいぞ」
「言われなくてもわかってるよ」
私は、箒屋を飛び出しギルドに向かう。フェクトたちもまだ動いていないのがわかる。
私を待っているのか、それともまだその時ではないので出発しないのかわからない。
それでも、国の周辺が明らかに雰囲気が変わっているのを感じ取る。
魔族が指揮をして攻めてくるのかと思ったが、それは違うみたいだ。
反応があるのは、一体だ。
ただ、禍々しさで言えば魔族とそう大差変わらないであろう。
そんな魔物だった。
「二人ともなんで行かないの?」
私は、ギルドの扉を勢いよく開けた。
そこには、大勢の冒険者たちがいたが気にしない。
「アリア、丁度良かった。出発するところだったんだ。ドラゴン退治、楽しもうぜ」
フェクトは、そう言ったのだった。
投稿を忘れていました。
お待たせしてしまって申し訳ございませんでした。




