73話 箒が上手く飛べない少女
すっかりと夏らしくなってきた今日この頃、私たちはいつもと変わらず箒に乗って旅をしていた。
太陽の日の光を体いっぱいに浴びていく。その灼熱は、私たちを脅かすようなものになっていった。
全員、一言も喋らずただ耐えている。結界をしていても、それを焼き切るように結界を貫いてくる。
誰もが暑さで、精神がおかしくなりそうになっていく。それでも、なんとか前を見ると遠くの方に国が見えてきたのだ。
「二人とも国が見えてきたよ」
私は、声を振り絞るかのように二人に話しかける。だが、暑さにやられているのか、声という声は聞こえてこなかった。
そうして、私たちは国が肉眼でもはっきりと見えてくるところまで移動した。
「結構大きそうな国だね」
「そうだな、早く冷たくて美味しいものを食べようぜ」
フェクトは、絶対に願望を叶えると言わんばかりの声で、言ってくる。
これで私が買わなかったら、信頼関係に小さな傷が入るっていうものだ。
それを理解しての行動だろう。暑さでさっきまで何も喋らなかったのに、ここでの発言。やりおるな、アイツ。
「わたしも何か食べたい、冷たいやつ〜」
ナズナは、完全にフェクトの声で覚醒したかのような声だ。冷たくて美味しいものと言う単語で、反応したのが丸わかりだった。
「とりあえず、手続きが済んだらね」
そうして私たちは、簡易的な書類にサインをして入国した。街並みは、どこか静かで穏やかそうな国である。
それに、自然を大事にしているのか木々もだいぶ多いように見えた。
「冷たいものを探そうぜ〜」
相当バテてるのが、見るだけでわかる。完全に冷たいものに取り憑かれた亡霊のようだった。
ナズナも後をそれに後を続かせ、声を出す。そして二人は、ノロノロと、人数の少ない大通りを駆けていくのであった。
「どうした、これが食べたいのか?」
「「うん」」
まだ元気はないものの、顔色はだいぶ良くなっていると印象が付けられた。
二人は、アイスを受け取り一口食べた。とても美味しそうに食べ、とても満足げにしている。
「二人とも美味しい?」
「ミーテル味美味しすぎるやろ」
「レーンも美味しいよ」
二人は、大事そうに食べていたアイスを一口差し出してくる。
「アリアも食べてみてよ!」
「こっちも美味しいぞ」
「ありがとうね」
そして私たちは、とりあえず宿を見つけるべく移動していく。
街中は、本当に人通りがまばらでそこまで賑わっている様子ではなかった。
どこか寂しげな雰囲気を放つ街。そんな街で私は、何日間か滞在することを決めたのであった。
「どいてどいてー!!」
撤回しよう、寂しげな雰囲気とは嘘である。とても騒がしい街だとでもいってみようか。
前方から、暴走した箒が飛んでくる。とても焦っている様子なのがすぐにわかるほどだ。
私は、ため息をつきつつ箒を遠隔で魔力を流し込んで止める。
乗っていた彼女は、急ブレーキをしたようになったためか、彼女は前方に顔面から倒れ込んだ。
「君、大丈夫かい? なんか、箒の調子が悪そうだったけど」
「いてて……あ、先ほどはありがとうございました」
白髪の少女は、すぐに立ち上がり一礼した。
そして、近くに落ちた箒を持って足早に去ろうとしていた。
「もしかして君、箒の扱いがまだ苦手なのかい? だいぶ低空飛行してたけど」
私は興味本位で、彼女に話しかける。
「え、いや、あの、そうです。もしよろしければ、教えていただけないでしょうか?」
「うんいいよ、私の名前はアリア。後ろの二人は……」
「俺様はフェクトだ」
「私はナズナよ。よろしくね」
彼女は、服についた砂を落とす。そして背筋を整え、私たちに名前を教えてくれたのだ。
「私はスカイよ! 魔力の制御が苦手な十二歳」
「スカイね、ここでは危ないから門の外でやりましょうか」
「よろしくお願いします」
私は、宿をフェクトたちに任せ再び門外に戻ってきた。スカイは、どこか緊張した感じで箒を握っている。
そんなのでは、箒が言うことを効かないのも納得できるような気がした。
「少しリラックスしましょうか。せっかく空を飛ぶのだから緊張してたら逆に危ないわ」
「わ、わかりました」
スカイは、深呼吸を何度かして箒に跨ったのです。私は、スカイに簡単なアドバイスします。
だが、それはそう簡単には行きません。スカイは、深呼吸して気持ちを切り替えても、失敗してきた記憶からかうまく飛べなくなっているのです。
「そういうことね。だったら私の後ろに乗ってみない?」
「え、良いんですか!?」
「成功するイメージを持った方がうまくできそうだからね」
そう言って、私は箒を取り出し乗ります。そしてナズナが後ろに乗るような形でスカイを乗せます。
「緊張もいいけど今を目一杯楽しむことを考えて」
「はい!」
そして、スカイを乗せ箒は飛び上がりだんだんと地面から遠のいて行きます。
それをみたスカイは、とても楽しそうにしているのが感覚でわかる。
それはとても、私が初めて箒に乗って空を飛んだ時と同じように見えたのだ。
思い出に浸りながらも、箒は高く飛び上がり緩やかに進んでいく。
「私もこうやって乗りたいです!」
「そうくると思ったわ。今は、楽しんでちょうだい」
そして、大きな国をぐるっと一周門の外から周ります。スカイは、自分の住んでいる国がこんなふうになっているのを見てとても楽しんでいる。
「本当にありがとうございました! 私頑張ってみます」
そしてスカイは、もう一度箒に跨りゆっくりと上昇していきます。
そして緩やかに前に進みだすが、どこか不安定さが残っている。
とても危ない様子である。
私は、いつ何があってもいいように準備だけは怠らないようにしていた。
そしてそうならないようにも願っていたのだが、結果はそう上手くはいかないものである。
箒は、不安定のまま進んだせいで急激に急降下してしまいスカイは落ちそうになる。
「跳躍!」
私は上手いことスカイを掴み、ことなきをえる。だが、箒は地面に激突し粉々になってしまったのだった。




