68話 私のせいで……
私たちが目を覚したのは、それから数時間経った後だった。昼間の光が、ベッドに流れ込んできて目が覚めたのだ。
二人も、そんな感じで起き上がっていく。
そんな中、そんな空気を遮るかのように扉を叩く音が部屋に響き渡る。
「どちら様ですか?」
「シュシュです。ご相談したいことがあるのですが?」
少し困ったような声が聞こえてくる。それに、どこか焦っているかのような声ともいえる。
そうして、私はすぐさま開けた。開けた瞬間、安堵した表情が飛び込んでくる。
「良かった、あなた方を襲おうとした犯人が分かりました」
それについては、私も心当たりがある。その原因を作ったのは、おそらく私であろう。
「軍隊長ですよね」
「はい、それとあなた方を最初に案内した使用人です」
やっぱりか。私は最初にそう思った。それしか、考えつかないからだ。
「今奴らは?」
「精鋭部隊が、追っていますが相当厄介らしくなかなか捕まえられないみたいです」
「フェクトはここで待機してて。私とナズナで応戦するわ」
ナズナはとても嬉しそうに、尻尾を動かしている。フェクトは、異論がないのか特に何も言わなかった。
そうして、案内されるがまま正面入り口までやってくる。そこには、負傷したのであろうエルフ族が大量に運びこまれていた。
「これは、あの子らと戦った影響です。怒りに身を任せた二人にこの有様です」
「とりあえず任せておいて、解決してくるわ」
シュシュが動けないのがわかっているから、できた作戦だろう。
それだけ、彼女たちにしてみれば、暴れるならこれほど都合の良いものはないであろう。
そんな考えをする、二人に腹がたって仕方なかった。私を、恨んでいるのであれば、私だけを狙えばいい。
それなのに、ここまで関係のないエルフ族を巻き込んでやるのは間違っている。
「狙いは、私だろ! それだったら私だけを狙え!」
外にでた瞬間に、大きな声で叫ぶ。それは広範囲に聞こえただろう。
それだけ大きな声を出したのだから当たり前だ。
気配感知も、声に気がついてるのがバッチリっとわかる。視線がこっちに飛んできているのも、モロバレだ。
それだけ、奴らにとっては私はそこまでの存在なんだろう。
「来ないのなら、こっちから行くか」
私は、ナズナにアイコンタクトで箒に乗るように指示する。それをわかっているからか、すぐさま近くによってきている。
「しっかり掴まってろよ」
「ヘーイ」
全速力で、箒を飛ばす。高速で飛ばすものだから、エルフ族の視線が痛いぐらい感じる。
それだけ珍しいことなのだろうとも、実感する。
そうして、出会った時には周りにはのびているエルフ族の精鋭やらが周りに散らばっていた。
「随分と派手にやるんだな」
「あんたが、私にさっさとしたがっていれば良かったものを」
殺意の目がこちらに向けられる。
「そんなアツいラブコールされても出てくるのは、剣だけだぜ」
魔弾が私に向けて飛んでくる。どれも弱過ぎて、話にもならなかった。
がっかり顔で、私は二人の前に降り立った。
「なんなのよ、その顔!」
軍団長が、吐き捨てるように言ってくる。
「弱過ぎて話にならないってことよ」
雷魔法が頭上に落ちるが、フェクトが事前に張っておいてくれたおかげで無傷ですむ。
それだけで、軍団長の顔を曇らせるには充分すぎた。
メイドちゃんは、ナズナといつの間にか遊ばれているようだし、もう長くはもつことはないだろう。
「シュシュが言ってたわよ、大人しく投降するなら何もお咎めはしないって」
嘘である。ただそれで止まってくれるなら、そっちの方がありがたいと思うのは当たり前である。
私が心から誠心誠意土下座でもなんでもしてやろうっていうもんよ。
「はぁ? 何言ってのキモ」
「テメェは、ここで殺す」
木剣が、軍団長の体を吹き飛ばす。ほぼ一撃で、いつ気絶してもおかしくないレベルだ。
案の定、軍団長は動けていない。
「さっさと力を見せてみろよ。見せろって言ってんだろうが!」
木剣を、振りかざす。なんとも言えない、鈍い音が耳に残る。そして、苦痛の声が耳によりへばりついて聞こえてくるようだ。
「アリア、それ以上はダメだよ!」
もう一度、木剣を振りかざそうとした手が止まる。エルフの女は、完全にのびていた。
私は、剣をしまい一度大きく深呼吸をする。そして、私が怒りに任せてやってしまったことを反省する。
「申し訳なかった……すぐにポーションを掛ける」
ボックスから、ポーションを取り出しかけていく。だんだんと、腫れ始めていたところが元に戻り出していく。
私は、彼女を抱える。ナズナは、使用人のエルフをおんぶし私に寄ってくる。
「転移」
そうして私たちは、戻ってきた。シュシュは、とても焦ったような顔で、駆け出してくる。
「剣聖様、この度は私の不手際で申し訳ございませんでした」
シュシュは、深々と頭を下げ謝罪した。
「元はといえば、私が全て悪い。この方々には、なんら罪はない。どうか、穏便に済ませてやってはいただけないだろうか」
顔をハッと上げ、もう一度深々と頭を下げた。その顔は、ホッとしたような顔つきで、安堵した顔だったいえるであろう。
「私たちは、もう少し滞在しようと思う。今度は、ちゃんと食事会場で食べるわ」
「承知いたしました。存分にエルフの里を楽しんでいってください」
そう言って、シュシュとはそこで別れた。二人は、回復術師に任せ私たちも部屋に戻る。
「良かったの、フェクト的には早くここから出た方が良かったのでは?」
「まぁ、私のせいで迷惑をかけちゃったしそれにもうちょっと話しておきたいことがあったしね」
フェクトは、行くのかと思って部屋から出る準備をしていた。
フェクトの顔は、完全に青ざめており、早くここから出たいと顔にそう書いてるようだった。
それでも、フェクトの顔は最初にきた時と比べて、本当にマシになっているので、慣れ始めているのは間違いないことなのだろうと、私はフェクトの顔を見てそう思うのだった。




