67話 星空の前では、エールを飲むのは当たり前のことかもしれませんね
私は、どうやら眠っていたようだ。部屋は暗くなっており、目が慣れた私は両隣の二人に目がいった。
フェクト、ナズナが心配そうに眠っている。
二人とも寝落ちしたかのように、眠っているのがわかる。相当遅くまで起きていたということだろう。
私は傷元が気になり、手を当てるがジュクジュクしていたような肌は綺麗になっているのがわかる。
ただ、どうやら傷は残ってしまっているのが感触でわかる。
「だいぶ本気でやったんだろうな。傷元がまだ暖かいよ」
全てを包み込んでくれるような、回復魔法をしてくれたリカバーの本気が窺えるほどである。
ただ、その暖かさは悔しいという気持ちもあるような気がした。
完全に治しますと豪語していた以上、後には引けなかったのが傷元をさわればよくわかる。
私は、二人を起こさないように慎重に体を起こした。
硬くなった体を、ストレッチなんかをしてほぐしていく。そして、二人に布団を掛け私は、部屋から出たのであった。
「気配感知には、見張り役が引っかかる程度か」
まぁ、特に問題ないであろう。そんなことを考えながら、私は誰もいない廊下を進んでいく。
あまり探索ができなかったことによる、冒険欲と言ったら良いのだろうか。そんな思いで私は動いている。
「もうすぐ夏だっていうのに、ここはほんとに過ごしやすい場所だね」
夜の風は涼しく、とても心地よい。風が入ってくる窓のほうを眺める。
そこには、満天の星が見えていた。とても綺麗で美しく、まるで故郷で見た星のようだった。
その星に惹かれるように、私は窓の縁に足をかける。周りに誰もいないかをキョロキョロと確認して、箒を取り出す。
そして、天高く舞い上がるように、箒を上空に動かせる。
「めっちゃ綺麗じゃん、こういう時ってエール飲みたくなるよね」
そう言って、私はボックスから瓶酒瓶を取り出し直接口をつける。
「めっちゃ美味しい」
思わず口に出してしまうほどだ。満天の星を見ながらエールを飲む、これほどの贅沢はないであろう。
だがそんな私は、ニコッと笑う。
箒の上に、板を魔法でくっつけ物が落ちないように、魔法を唱える。
そしてその上に、ご飯の間にとっておいた晩酌のおつまみを出す。
時間が経ってベチョベチョになった野菜炒め、オーガ肉である。
二人ががっついてくれてる間に、とっておいて正解だった私は思う。
あの時、そう判断した私ナイス! そう心の中でガッツポーズをする。
つまみを食べつつ、酒を飲む。そして星を眺める。完璧すぎる、ループが完成していた。
そして私は、満天の星にあてられたのか、酔わないはずのエールに酔ったのか、色々なことを思い出していた。
初めてダンジョンに潜った日のこと、初めて一人で国に着いた時の喜び、様々な出会いと別れ。そして仲間となる二人の出会い、私はこの旅をして良かったと一人で思っていた。
あの頃の私は、多分こんな旅になるだろうと思ってはいなかっただろう。
ずっと一人で、旅をしてどこかで生涯を終える。そんなことを考えていた。
それが今では、様々な出会いをしてきた。そして、国を離れるたび、別れを経験してきた。
そして、仲間と呼べる二人に私は出会えたのだ。
それは、私にとって大切な思い出であり忘れることができない経験だろうと、私は思ったのだ。
「二人には、感謝しないとな」
「おーい、思い出に浸ってるのはいいが、少し俺たちまで恥ずかしいじゃねぇかよ」
私の体温が上昇するのを感じとる。そして、顔まで赤くなり後を振り返れずにいた。
「えーと、なんで居るの?」
私は振り返らずに言ってみる。こんな顔を二人に見られたら、なんて言われるわかったものではない。
「そりゃ、起きたらいねぇからに決まってるだろ。ナズナなんて泣いてたんだぜ」
「え、泣いてないよ! フェクトはいつもそんなことを言う」
私は振り返り、二人に顔を見せる。その時には、だいぶ治っているし大丈夫だ。
「いやごめんね、起こしちゃって。ちょっと星空片手に、なんかしたくなったんだよね。アハハハハハッ……」
二人は、そんなことだろうと思ったよと言わんばかりの顔で、こちらを見つめてくる。
「そんな目でみられると恥ずかしいかな」
「俺たちも混ぜてくれよ」
そう言って、酒をとりだす二人。そして、星を眺めながら夜は更けていく。
まだ、朝日が登るまで時間はまだまだある。三人の会話は、ずっと続いていくのであった。
結局その日は、朝まで飲み明かしていた。部屋に戻ってくる頃には、眠たくて仕方なかった。
ただ、部屋の周りで人盛りができているのがわかる。私たちは、眠たい目を擦りながら気かづいていく。
「あ! ご無事だったのですね、心配していました」
眠たい私たちには、頭が回らず状況を飲み込めずにいた。
「見てください、部屋がこの有様でして」
扉はボロボロになり、木々の藻屑が出来上がっている。中は、私たちがいた時とはまるで違う荒れようである。
どう考えも、第三者が侵入しやったのは明らかだった。
「これは全員に聞いていることなのですが、皆様は昨夜どちらに行かれてましたか?」
部屋に居ない以上、そう聞いてくるのも無理はない。私はありのまま話した。
「ありがとうございます、おそらくそれは本当ですね、中庭の上空から酒を飲んでいる三人が目撃されていましたから」
バレてるやん。
「あ、そういうことだからさ新しく部屋って用意ってできないかな。眠たくて、少し眠りたいんだよね」
「かしこまりました、こちらへご案内いたします」
そうして、部屋は隣に移る。
「私ラメリーと、シュシュ様、リカバー様の三人以外通ることができない結界をはらしていただいております。皆様は、もちろん出入り自由となっております」
「ありがとうございます。何から何まで」
そう言って、私たちは部屋に入り先ほど同様に、同じ位置ですぐさま眠ってしまうのであった。




