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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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706話 生命力に満ちた木々にはご注意を


 春の陽気に包まれているかのように暖かく、長閑な日々を相も変わらず過ごしていた。

 ほうきの上から見える景色は、草原地帯から森に変わっており、その雄大な大きさを前にして私たちは景色を楽しんでいた。

 地上にある森は上空からでもわかるぐらいに生命力に満ち溢れている。

 あんな木々に触ってみたいと少しばかり思うほどに。


「相当大きな場所だな、ダンジョンでもありそうだけど、マップには何かしら反応があったか?」


 私はフェクトに促されるがまま、マップを展開する。だが、そこに表示されているのは、フェクトが喜ぶようなものではない。

 森がマップ全体に広がっており、それ以外の情報は何もない。それはつまり、ダンジョンという存在はなく、この何もない森を通り過ぎることが手っ取り早いようだ。

 フェクトの顔は、項垂れるかのようにショックを受けており、ほうきの速度はそんな彼の思いを反映するかのように、少しずつ早くなっていく。それを追いかけるような形で、私もほうきの速度を上げた。


「フェクト、ショックなのはわかるけど、急にほうきの速度を上げないでよ。びっくりしたじゃん!」

「えーだってよ、こんなところから早く抜けたいと思うのは当然なことだろう?」


 確かにフェクトの言いたいことはわかる。だが、ここでこんなふうに進むのは反対である。


「言い分はわかるけど、私はゆっくり行きたいよ。長閑に過ごせる時はきちんとそうするべきだよ」

「でもよ、今もだいぶ長閑に過ごしているぞ。ここまで長閑に過ごしてたら体が鈍りそうになるレベルだ」


 フェクトはあんなことを言っているが私は知っている。フェクトは動いていない間は、大抵の場合攻めによるコンボ攻撃を練習している。

 そのため、だいぶ毎日負荷が掛かっている以上、このようなことは必要であると考える。そんな言葉をフェクトに言ったところで、何も響かないだろう。

 それでも私は、何かしら言うべきだと口を開いた瞬間だった。春の陽気で当てられていたお昼寝をしていたナズナが口を開いた。


「うるさいニャー、人がせっかくお昼寝をしていたのに、邪魔をするなら許さないよ」

「ごめん、シンプルにちょっと声がうるさかったね」

「俺もすまねぇ、ちょっと血が上りすぎた。互いの意見がここまで不一致すると、どんな状況でもヒートアップする癖を止めるべきだな」

「フェクトは休むことニャー、最近ずっと修行をしているみたいだけど、今日のなんて精度が落ちてたよ。あんな風になるまでやるならわたしだって容赦しないよ」


 フェクトは、完全に言い負かされてしまう。フェクトはあれ以上何も言い出せず、そのままナズナはまた人の背中を枕にし眠り始めた。


「ナズナもこう言ってるんだし、今日はゆっくり休もう。これ以上何言うのであれば、私は徹底的に潰すわよ」

「ナズナには気が付いていたのか、やっぱりナズも侮れないな」


 そうしてフェクトはほうきの速度を下げ、そのまま高度もゆったりとした調整をしながら落としていく。どうやら、ここで休むことを決めたようであり、私もそれに続く形で地面に降りた。

 陽の光が、木々の間をチラチラと見えている程度で、温度は比較的涼しいと呼べる環境だった。私たちは、とりあえず休める最適な場所はないかと探し始める。

 マップを展開させても、ひらけた場所はそう簡単には見つからず、森が自由気ままにただただ生きているのが伝わってくる。

 それに、どの木もやはりとてつもないほどの生命力を感じる。

 その木々を見てナズナも興奮が止まらない様子で口を開く。


「どれも随分と育った木々だニャー、ここまで人の手が入らなかったことでしか、今はほとんど見られない光景だね」


 私は一本の大きな木に手を当てた。目を瞑ると、生命力が循環しているのがよりわかる。それに触れているだけで、力が湧いてくるようなそんな感じである。

 それに、溜まっていた疲労感が木々に吸い込まれる形で消えていき、とてつもなく軽い。今なら軽快にステップを振りながら、駆け出してしまいそうだ。


「それにしても生命力すごいね、溜まってた疲労が一気に吸い取られて体が軽い」

「もしかしたら、久しぶりのお客だからサービスをしてくれているのかもな」

「それにしては、ここまで悪かったことはほとんどないよ」


 そんな時だった。

 気配感知に魔物の気配が浮かび上がった気がして、私は瞬時に振り返る。そこにいたのは私という存在であり、彫刻で石を掘って作られた像のようなものであり、私たちは困惑した顔で見た。


「こんにちは、これはあなたが触れて吸い取られた疲労の塊をあなた自身として表したものです。私を倒さない限り、この森から抜けることは許しません。再度触れたら、また増えていくのでそこは気を付けてください」

「随分と説明してくれるのね、それにしてもこんなことなら、触るんじゃなかったかしら?」

「ここから抜け出せた冒険者は今までおりません、って言ってもここに来られる冒険者は二桁程度なので参考になるとは思いませんが」


 おそらく、何かしらのクエストで立ち寄った冒険者たちなのだろう。この生命力に惹かれて触ってしまい、今目の前にいる存在によって殺された。

 それもおそらく、何度も触ったことによるのが原因で間違いない。わざわざ忠告したのは、それが全ての死因であると自白しているようなものだ。


「簡単に壊してあげる、今の私にあなたが勝てるとは思えないけどね」

「その言葉、そのまま返しますわ。なぜなら、あなたはすでに毒に体を蝕まれているのですから」


 思わず声が出そうになった。それでも、私は何も反応することなく腰に下げてあった剣を抜き、駆け出していく。体はやはり軽く、今ならもっと強い剣技を放てるのではと思うほどには力が漲っていた。

 それなのに私は、気が付けば木々に触れているのであった。


「は? なんで私は触れているの」


 思いがけない行動に私は、思わずそんな発言をしており、先程まで真っ直ぐに走っていたはずなのに、どうしてだと思うことしか出来なかった。

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