705話 ピース
彼らは水柱が消えたことにより、どうにかしようとするが私という壁がそれを邪魔していた。彼らからしてみれば私は、相当大きな壁であり、それを潰すことはそう簡単に出来るわけがない。
それでも彼らは、あの存在を知ってしまった。一度、あんなものを浴びたら、魔物たちは何度でも浴びたいと思い、中毒作用で周りになんて気にしないだろう。
それでも、そんな状況になったとしても私という存在は、それを打ち消すだけの力があることを確信していた。
「あの力が欲しているんでしょ? だったら私に勝ってフェクトを倒さないと絶対に無理だね。それが君たちに出来るのかな? 私に、そんな力をぶつけてみないかしら」
彼らはめいっぱいの威嚇を披露するが、格上の私には全く効かない。それどころか、私が威嚇した場合、彼らは恐怖のあまり簡単に失神してしまうだろう。
そんな中、魔物の一人が無謀にも走り出した。決心の覚悟とでも言えば良いのだろうか、とてつもなく覚悟の決まった顔でその魔物は攻めてきた。
そんな魔物の頭に向かって、私は杖をフルスイングする。彼は簡単に体勢を崩し、そのまま地面に倒れ込む。地面には、血が滲み出しすぐにでも死にそうだ。
それを見ても、他の魔物たちはそんなこと知らないと言わんばかりに無視をする。まるで彼らには、この光景が全く見えてないような感じだ。
そんな彼らを見て、私は特段何も思わない。ただ、無謀にも向かってきた子が今にも消えそうな蝋燭の火を必死に燃やし、何かを伝えようとしている。
そんな状況でも無視をし続ける彼らは、それ以外で自分たちが助かる方法がないとでも思っているのだろうか。
「そっちが攻撃をしてこないのなら、私は攻撃するよ。だって、君たちは目障りな存在だから。そんな理不尽を壊したいのなら来なさい」
だが、そんな言葉は彼らには届かなかった。それが最後の通告だというのを気付いているはずなのに。
「フラッシュ!」
彼らに杖を向け、私は魔法を唱えた。ただ閃光を一瞬放つだけだが、補助魔法としては優秀の部類に入る魔法である。
彼らは一瞬何が起こったのか、わからなかっただろう。情けない声を出し、気が付けば地面に倒れているのだから。
「フラッシュからの直接心臓に杖を突き刺すっていう荒技だけど、こんな戦法もやれるのは便利だね、ほんと。君たちが反撃しなかったのは、そんな理由どうでも良いけど、反撃をする気ぐらいは見せてほしかったな」
……
「やっぱりこれを抑えるのは相当厳しいな。自然に発生したみたいだけど、ここまで亀裂が入ってる状態は中々お目にはかかれないな」
魔力の流れを修復するのはそう簡単に出来ることではない。完全に破損した魔力の通り道を一つずつ、丁寧に繋ぎ合わせていく作業をしなければならない。
その上、一度魔力のパスに亀裂が入るとその魔力に合わせた魔力を流し込むことでしか、元には戻らない。それをただするのは時間は掛かるが、そこまでめんどくさいことではない。
今回の場合は、地下水という存在によってそれをめんどくさくしており、それらを抑え込む必要があり、魔力が先に尽きるか、作業を完了させる我慢比べ状態である。
「ここの地下水、随分と力を含んでやがる。どれだけ適応したらこんなことになるんだ? これ、もしかしたらサンプルをイデリアにあげたら喜ぶかもしれんな」
ただ、そうは言ったものの、それが出来るならこんなにも苦労はしていない。
「おーい、フェクト! 私さ、オフセットしてみようか?」
一瞬頭の中が真っ白になったのを感じる。それほどまでに、アリアが言ったことは俺が考えもつかなかったことを簡単に発言している。
だが、その質問は解答だと思ったが、冷静になって考えればそれをしたらダメだということに俺は気がつくことになった。
「一瞬でもありかもって思っちまったじゃねぇか! そんなことをしたら、魔力のパスが死ぬ可能性がある以上、絶対にやるなよ」
「でも、何かしらやらないとフェクト一人だったらきついでしょ?」
「だけど、アリアが言ったことはしたらダメだ。大人しく、ナズナと待っててくれ!」
アリアは「せっかく閃いたのに」と、言わんばかりの顔で少しばかり不貞腐れているのが顔をみればわかる。
そんな時だった。
唯一かろうじて繋がっていた魔力のパスが魔力を流し込んだことにより、力強く繋がったことが感覚で分かる。
その瞬間、俺は笑みが溢れ落ち、心の中でガッツポーズを力を込めて踊り狂うかのように披露した。
「あれが繋がったんだから、ここからは一気に行ける。魔神王の力を持ってんだから、当たり前のはずだ!」
魔力の流れが急激に良くなった気がした。魔力のパスが繋がったことにより、ちぎれていたパス同士が再び繋がろうと、とてつもないほどに暖かい魔力の流れを感じる。
やはり魔力というものは『生きている』のがわかる。生きているからこそ、魔力はまた繋がろうと動いている、そんなことを今更ながら理解出来たような気がした。
「もうここまでやれたらあとは大丈夫だな」
それでも慎重に魔力を流し込んでいく。魔力が馴染み合い、互いをまるで思いやって手を繋ぎ合わせるように力が一つになっていく。
それが二本、三本、四本、五本、六本と繋がっていき、最後の一本が繋がり合い、魔力水はようやく力を正常へと戻り、俺はようやく魔力を解くことが出来たのであった。
「お、終わった……終わった!!」
思わずそんな言葉を叫んでいた。それほどまでに、俺は喜びに満ちた声が自然に出ており、安堵した表情のまま地上に戻ってくる。
俺の喜びに満ちた声を聞いたアリアはどこか自分までもが嬉しそうにしていた。
「急激に上手いことピースがハマっていく感じだったわね。魔力の流れを追ってたけど、やっぱりフェクトは凄まじい力を持っているわね」
「ほんとそうニャー、わたしも戦っている最中、魔物たちが急激に弱くなったからフェクトが何かをやったんだって思ったよ」
その後、俺たちは今あったことをイデリアに報告すると、イデリアも安堵した声で(お疲れ様)とテレパシーで伝えてくるのであった。




