66話 回復術師リカバー
案内されるがまま、廊下を歩いていく。忙しそうに通り過ぎるエルフもいれば、立ち止まって一礼するエルフもいる。
立ち止まる度に、フェクトがビクッとさせているのが、前に居ても分かるほどだ。
「お部屋はこちらです」
「ありがとう、もう下がって良いわよ」
案内をしたエルフ族の少女は、何か言いたげな表情をしていたが、一礼して去っていた。
そうして、扉を開ける。
中には、宿のようにベッドがあり机やアメニティが置いてあった。
「随分と広い部屋だね」
「まぁ、三人だしちょうど良いと思うよ。フェクト、一度深呼吸して落ち着きな」
フェクトは言われた通りに、行動をする。青ざめていた表情が、少し和らいだような気がした。
「エルフ族はやっぱ苦手だ」
「フェクトにも、苦手なものがあったの以外だな」
「ナズナ、当たり前だろ。エルフ族は、俺でも容赦せずに殺せる連中だぞ」
少し疲れたのか、左端のベッドに腰をおろした。そして私は真ん中に座り、ナズナは右端のベッドに座ったのだ。
「ダンジョンで疲れただろうし、ゆっくりしましょうか」
「「賛成〜」」
へとへとな声が両端から聞こえてくる。そして、すぐさま静かになり寝息を立てて眠っていた。
私は、そんな二人を眺めつつ読んでいた本を開く。窓を開いており、心地よい風が部屋中に流れ込んでくる。
そうして、数時間経った頃だろうか。私は、読んでいた本を閉じた。
その理由は、ドアを叩く音である。
「剣聖様、お食事の準備ができました。会場に案内します」
最初、案内してくれたエルフとは別人の声である。二人は、まだぐっすり眠っている。
起こすのも、正直に言って悪いともっている。可愛い寝顔が、起こすなと顔に書いてるような気がするからだ。
私は、扉を開け事情を説明する。
「そうですか、それでしたらこちらにお食事をお運びしますね」
にこやかな笑顔を見せながら、そう言った。
「申し訳ない、よろしくお願いします」
それから、十五分も経っていない頃だろうか。もう一度扉を叩く音が聞こえてくる。
私はすぐさま開ける。そこには、野菜中心の料理の数々を持って複数のエルフがいた。
そうして、そそくさとテーブルの上に置いて去っていた。私は、二人に声をかけるが起きそうにもなかった。
ただ、食欲に忠実なる僕の二人が起きるのはほぼ確実だ。
窓を閉め、だんだんと匂いが部屋の中に漂ってくる。
ナズナは、耳がぴこぴこと動いている。
フェクトは、よだれが垂れそうになっているのを見て笑ってしまう。
「二人とも起きられるかい?」
「ご飯か、食べるぞ」
「たべるー」
そうして、体を起き上がらせた二人はテーブルの方にノロノロと動き始め、料理を見るなり目を輝かせていた。
そうして食事は、始まったのだ。
「この野菜炒め美味しいな。シャキッとしてる」
「私は、ベチョベチョ派なんだけどこれもいいな」
「肉食べたい〜!」
ナズナは、物足りないのか肉が食べたいと駄々をコネはじめている。
「ナズナ、心配すんな今からだ」
ナズナはとても嬉しそうにしている。そして出てきたオーガ肉をかぶりつく姿はとても可愛かった。
ただ食べ方は、完全に野生児である。それに関しては、私たちも言えることだと思った。
そうして、デザートであるシャーベットを食べ終えた頃、入ってくるエルフがいた。
「あらお偉いさんじゃん、何かよう?」
「申し遅れました、私はシュシュと申します。お食事は楽しんでいただけましたでしょうか?」
「美味しかったですよ、要件はなんでしょうか?」
シュシュは、深呼吸したのち話し出した。
「あの、剣聖様の体を治せて欲しいのです」
別にもうなんともない傷のことだろう。確かに、血が沸騰したような影響で、傷跡が結構グロい。ただそれは、もうこれ以上は治せないはずだ。
「それは直せないはずでは?」
「回復術師のトップでありエルフ族の、リカバーをご存知でしょうか?」
「その人が私をみたいってことね」
シュシュは、スッと頷いた。
そしてその後ろから、気配を感じ取る。それは、優しげな気配だ。
ずっと、癒され続けていたいと思わされるような感覚に陥る。
「剣聖様、お初にお目にかかります。王都にて病院を経営しております、リカバーと申します。
思っていたよりもだいぶ若めな顔立ちである。緑色のロングヘアーをしており、カジュアルな服装な女医さんである。
見ただけでわかる、相当な回復魔法の使い手であることは間違いない。
「本当は、もう少し早く来る予定だったのですが管理者様に捕まっていて遅れて申し訳ありません」
フェクトが、笑いを堪えられずに笑い出した。ナズナは、疑問の顔でこちらを見つめてくる。
どうせ、どこかで私のこの状態を知って追いかけようとしたけど、来ることができなかったというオチであろう。
容易に想像できる。
「それは、お気の毒に。これでも治りますか?」
私は、諦めさすために見せたのが大失敗だったと言えるであろう。
逆に、彼女に火をつけてしまったことにすぐに気づくが、それは遅かった。
彼女の目は、メラメラ燃え上がっているような気がしてならなかった。
「これは骨が折れそうです。でも治した時の達成感がハンパなさそうです」
私は、これには苦笑するしかなかった。そうして、私は案内されるがまま別の部屋に移動する。
部屋の中には、助手と思われるエルフ族も待っていた。そして私は、誘導されるがままベッドに横になり回復が始まるのを待つ。
助手とリカバーは、少し話をしている様子である。そして終わったのち、リカバーの魔法が発動されたのだった。
傷元に手を当てているのに痛みがなく、暖かく心地よいほどだ。
「すぐに終わりますからね」
優しげな声で、安心させるかのように声をかけてくれており、感心してしまうほどだ。
そして、気がついた時にはすっかりと眠ってしまっていた。
作者はベチョベチョしか作れません。




