64話 髪って些細なことで無くなるのですね
私は、少し眠ってしまっていた。目を開けると、洞窟に居るのが分かる。
その横で、腕を枕にして寝息をたてて気持ちよさそうに眠るナズナ。
フェクトは、旅の途中で買った本だろうか。物音を一切立たせず読んでいた。
フェクトは、本に落としていた目線をふとこちらに上げる。
私とフェクトの目が合う。私は、少し気まずくなってしまうがすぐさま声をかけた。
「フェクトおはよう〜」
「まだ寝ててもいいけど、もう行くんだろ?」
フェクトは、私がどうしたいかわかっているようで先に聞いてくることがある。
私は、考えが見透されているようで、少しむず痒く感じる。
「そうね、もう行くわよ。ナズナ起きて」
私は、ナズナを触り起こそうとする。まだ眠たそうな顔ですぐさま目が開いた。
ナズナは、辺りを見渡してから挨拶をした。
そうして、身支度をすませ私たちはダンジョン内を歩き始めた。
今回は、魔法がないとほとんど行動できないといったものになっている。
幸い、険しい道はなく、分かれ道を進んで行くことばかりだ。
「ねぇ、ソードインパクトってどうだった?」
ナズナは、聞きたくてうずうずしていたのがバレバレだった。
聞くタイミングを伺っているのを、感覚でわかっていた。
「刺された瞬間、体内の血が沸騰するかのようにブクブクして爆発したような感じ」
「それって痛いどころじゃ済まないだろ? お前、色んな場所から血が噴き出てたし」
フェクトが心配した声で、言ってくる。相当焦っていたのがわかる。
「フェクトあの瞬間、飛び出そうとしてたしね」
「それはナズナも同じだろ」
「心配してくれてありがとうね、極力一閃とかかっこいい技もあって最高の組み手だった」
目をキラキラさせて言うもんだから、二人のドン引きした表情が心に突き刺さって痛い。
そうして歩いていると、大きな扉が見えてくる。
「二人とも、お話はここまでのようだ」
「いつでも行けるよ!」
「俺もだ」
二人は、いつ開けても大丈夫のようだ。私抜きで攻略を始めそうな勢いだ。
それだけ、何もできなかったことが悔しいと思っているのだろう。
二人は確かに強いが、彼には一切勝てないと断言できる。彼は、なぜならまだ余力を残しているようなものだった。
そんな彼と、二度と戦うことはないだろうと私は思うのだ。
あんなにも楽しい組み手は、そう何度も起こっては面白くないと思うからだ。
ただずっと、頭の片隅には入れておこうと思う。魔王殺しの元勇者ロード、私の体に傷跡残した相手として。
「ーい、おーい。アリア戻ってこい?」
体を揺すっているのに気がつき、ハッとする。
「ごめん、考え事してた」
「心配したよ、ボスは私たちが倒すからゆっくりしておいて」
そう言って、ナズナは扉を開けた。
そこにいたのは、ヴァンパイアロードである。ヴァンパイアロード、簡単に言うと吸血鬼の王である。
圧倒的な戦闘力を誇り、ワイバーンなど狩ってワイバーンヴァンパイアなどを作り出した伝説を持つ魔物だ。
「やっぱりここ、ダンジョン内容が大幅に変更してるだろ」
思わず口をこぼしてしまう。本来であればここのボスはキメラである。
そう、ナズナが最初の方でボコった所にいたキメラこそがここのボスとして出るはずだったのだ。
何かおかしいとは思っていたけど、ここまでおかしいとは流石にダンジョンはしばらくいいと思ってしまう。
「二人とも気をつけてね。私がやれば早く終わるけど、君たちはそうはさせたくないみたいだし」
本来であれば、私が攻撃した方が有効打で早く消滅できるのだが、二人を邪魔するのは悪いと思い私は壁際で座る。
「これ以上、お前たちの好きにはさせない」
おー知力が高いのか。流暢に喋れている。それだけで上位の魔物って感じがする。
「はぁ? しらねぇよそんなこと、さっさと終わらせるぞ」
「当たり前でしょ! ファーリー武術・雷豹」
素早い右ストレートを放つが、それを嘲笑うかのように無数のコウモリとなって飛散する。
「何やってんだよ、効くわけないだろ。黒玉・バレット」
一瞬にしてコウモリが死骸に変貌していく。
瞬間的な高火力は、凄まじいものだと思い知らされる。それだけの威力の光線を放っている。
「魔物が魔神に敵うと思うな。片腹痛いわ」
「せめて、一人でも道連れにしなければ」
肉体が先ほどの男性のように戻る。ところが、一部が死骸となったのだ。戻らない場所もある。
先ほどまで美しかったサラサラの白髪が、一本足りとも残っていない。
私たちは、笑いにこられるのに必死である。
まだヴァンパイアは気がついてない。ただ、最初に笑いを堪えられなくなったのは、フェクトであった。
大爆笑したのち、ヴァンパイアにことの真実を伝える。
「ほんまにすまん。お前の頭、ハゲにしてもうた」
「はぁ?」
すかさず触る仕草に、全員堪えられなくなり爆笑する。見なくてもわかることだが、ヴァンパイアの顔は血のようになっていた。
「貴様らー! この屈辱決して許さぬぞ」
「まぁ、来世に期待しな」
私は、二人に変わって奴を斬った。聖水とやらを王都で買っておいて正解だったと、私は心から思う。
あの時ケチケチせず買った私、ナイス! 自分で自分を褒めたくなるほどだった言えるであろう。
そうしてダンジョン攻略は、幕を閉じたのであった。
魔法陣の上に両足を置き、揃い次第最初に居た場所まで戻ってきた。
「ダンジョン攻略おわり〜」
なんて抜かした場合じゃなかった。私たちを睨みつける集団。
フェクトは、今すぐにでも逃げ出したいのが伝わってくる。一方のナズナは、いつでも戦闘開始しても良いように、辺りを睨みつけている。
「ナズナ、手を出したらダメだよ。それでエルフ族がなんのようですか?」
「剣聖様、及びお仲間方。我がエルフの里に訪れてはいただけないでしょうか?」
「それにしては、随分と暴れる準備ができてるみたいですね」
凄まじい魔法と剣がぶつかる。これが初めて会ったエルフ族である。
ヴァンパイアに関しては、なろう作品の中で一番酷い扱いをしてるのではないかと思っています。




