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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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591話 高揚した状態で発せられる言葉


投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。


 フェクトが負けた。ナズナの新たな一撃が決まり、魔神王フェクトは起き上がることが出来なかった。

 回復時、フェクトはとても悔しそうな表情で、自分の不甲斐なさ、未熟さに打ちのめされていた感じだった。


「それにしてもあの詠唱は何だったんだ? まるでアリアのようだったけど」

「私も気になってた、すごく覚悟が決まったような感じがしてたけど」

「あれはアリアの真似ニャー、なんか気分が高揚して言ってみたくなったニャー」


 確かにその気持ちはわかる。私の詠唱剣技は今でこそ、決め技を放つ的な感じで言っている。

 そんな感じを真似したくなるのは、時間の問題だっただろう。

 それにしてもあんな攻撃を隠し持っていたことの方が驚きである。フェクトは一撃でダウンしていたが、あれは本来ならば連撃だ。それを真正面から受けてみたいと思ってしまったが、その思いはまだ、隠しておこう。


「そんなことより俺の魔法はどうすんだこれ? ここまで来てまだ掴めてない」

「まだ始まったばかりなんだから良いんじゃない? 今から連戦ってやっても無理だろうし」

「いや、やるとは言ってねぇよ。それにアリアの場合は戦いたいだけだろ!」

「当たり前じゃん……とりあえず先に進もうか」


 そうして私たちは、ほうきに乗り込み上空へと高度を上げる。

 春の風から夏の風へと季節の変わり目の風。そんな風を目一杯に受けながら、私たちはあてもない旅を再開させた。

 上空から見た平原はなにもなく、ただずっと果てしなく続いている感じだった。

 そんな場所を今日もほうきに乗って旅に出る。それはこの上ないほどに幸福に満ちた瞬間だろうと、いつも思う。

 それほどまでに旅に出るということは、素晴らしいものなのかもしれない。

 そんなことを考えたら、いつの間にかだいぶ進み景色は変わっていた。

 平原から山脈地帯が見えてくる。それにオレンジ色に輝く夕日はとてつもなく輝いていた。

 

 思わず「綺麗」と呟くほどには。


「明日はこの山を登るっていうのもアリだな、今の季節は涼しいぐらいで結構登りやすいからな」

「そうだね、ずっとほうきで飛ぶっていうよりはたまには自然をこの身に感じさせた方が良いよね」

「そんなことを言ってるけど、いつも自然は結構感じてるニャー」

「それはそうなんだけど、最近山は登ってないからさ」

「そうだね、楽しみ!」


 そうして夜は更けていく。自然の真ん中でテントを立ててそれぞれの城に入っていく。

 この城の中だけは、自分一人だけの時間。そんなことを考えたら、なぜかより特別感がある感じがした。


 翌朝。朝目覚めると、まだ外は薄暗さがあった。季節の変わり目でまだ朝の気温は低く、少しばかり半袖では肌寒さを覚える。

 ボックスから椅子を取り出し、焚き火の準備をしていく。そうして魔法で出来上がった焚き火は、薄暗い朝にほんのりと光を灯してくれた。

 そんなことをしているとその光に寄ってきたのか、魔物がゆっくりとこちらへ歩いてくるのが見えた。


「随分と早い登場だね、君たちがここに寄ってきたこと、後悔するといいわ」


 椅子から立ち上がり、腰に下げていた剣を抜いた。私がやる気になったと知るや否や、咆哮を上げ、こちらへ向かってきている。


「随分と好戦的なオーガだね、この私が相手してあげる」


 オーガは私を見つけるなり、持っていた金棒を振りかざすが結界に阻まれてしまう。勢いよく放ったものだから、反動で少しばかり後ろによろけた。


「そこだ! まずは一体」


 オーガたちは口々に喚き散らすが、内容なんてわからない。わかったところで、倒すのには変わりない。

 そうして全滅する頃、二人が出てきた。


「ほんと朝から元気だよね……無理に戦わなくても良いのに」

「そんなこと一つも思ってないよ、それに戦うのは好きでやってるものだし」

「それはそうかもしれないが、それでもこんな楽な相手に時間を掛けなくても良いって言ってんだ」


 フェクトの言い分はわかる。だが、そんなことをしたところで、魔物は私たちを倒せるまで攻撃の手を緩めることはないだろう。

 だからこそ、ここで倒しておくのが先決なのである。だが、そんなことを言ってもフェクトはあまりいい顔をしない。


「とりあえず朝ごはんにしようぜ、ここで喋ってても埒があかねぇからな」

「それもそうだね、せっかくだからわたしが簡単に何か作るよ」


 そうして本当に簡単なご飯を二人に出した。


「コンソメスープとパンって、ほんと簡単なやつできたな」

「あの山登るならもう少しほしい」

「いや、それは出来ない。なぜって? 魔物が出現したの」


 奥の方に見えるのはオーガ。私の目でも見えるというのだから、相当近くまで寄ってきている。

 おそらく先ほどのオーガの仲間だろう。怒りに満ち溢れた気配が、こちらにまで漂ってきてしまう。

 私は地面を蹴り上げ、一気に間合いを詰めてく。一体、また一体と斬り裂きつつ戦闘は再開させる。


「威勢のいい割には、そこまで強くないみたいね? そんな力で私が倒せると思ってるわけ」


 怒りに満ちた咆哮が返ってくるだけ。なんとなく言葉の意味を理解しているかのようなオーガたち。

 コンビネーションが取れた動きで翻弄してくる。確実に攻撃を放ち、邪魔立てた感じである。


「ピンポイントで避けてくるところに放ってるの、よく私を観察しているみたいね」

「いや、感心している場合か! コイツら先ほどまでとは明らかに違うぞ」

「なんかずっと、私たちの攻撃を観察してましたって感じニャー」


 だが、対処さえわかれば、簡単に間合いを詰め攻撃に専念できた。オーガは体の至るところから血を流し、それでも武器を手放すことはしない。

 ずっと握り締め、一瞬の隙を突いて放ってくる一撃は鋭く重い一撃だった。


「――くっ!」


 思わず声が漏れ出すが、体勢を整え、一度大きく後ろに飛んだ。


「せっかくだ、剣聖たる所以の剣技、汝らに示すは我が刃の一撃。剣聖剣技・大太刀一閃」


 首は宙を舞い、これから始まる戦いの準備運動にはもってこいの相手だったと私は思う。

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