54話 襲撃の真実
門は、結界によって守られている。煙は、結界の外みたいだ。
外には、魔物が取り囲んでいる。このような行動、フェクトの言った通り、魔族の指揮で間違いないであろう。
だが、不可解すぎたが、今はそれを考えるのは辞めた。
「ナズナ! 一緒のタイミングで飛び出す、まだ逃げてる人も多いから待て!」
ナズナにその言葉が届いているかは、わからない。もうすでに、臨戦体勢に入っている。
威嚇行動に移って、今にでも飛び出しそうな勢いだ。
「ナズナ様! 我々もおります、一緒に戦わせてください」
一際いい装備を纏った獣人族、見た感じ軍隊長で間違いないだろう。
その後ろには、兵士にギルドに居そうな連中も引き連れている。
どう見ても酒を飲んで、酔っている者が多数いるなかナズナの前で止まった。
「邪魔にならないようにね」
ナズナは、邪魔そうな顔をしながらそんなことを言う。そしてすぐに、相手の方に向きかえる。
「あなたたちは、後方からの支援をよろしくお願いします」
「了解しました」
そう言ったのち、私はナズナの肩を叩き合図をした。ナズナは、ニヤリと笑い一気に飛び出して行く。
魔物は、飛び出したのをいいことに襲いかかってくるが、それはすぐに止まる。
一撃で、魔物が葬り去られていくからだ。そして、正確で素早い攻撃は、完全に魔物の足を止めるには充分過ぎるほどである。
「おい、どうした? 先に攻撃してきたのはお前たちだろ。狩られる覚悟はできてるはずだ」
そこからは、一方的なものだった。剣聖の剣、獣人族の戦士、そこが集まれば敵う者などいない。
まだ始まって十分たらず、怖気付いて逃げる魔物も少なくない。
「魔族ってヤツは何処にいる?」
ナズナの声が戦場に響く。その声はただ、圧倒的な強者その者だ。
「なんだ喋られないのか、だったら来るまで暴れようかしら」
「ナズナ、多分無理だよ」
「なんで? ここで殴ってたら来るんじゃないの?」
「おそらく、フェクトが相手をしてるし多分来ないよ」
ナズナは、とても残念そうな顔で魔物を潰していた。そして、軍隊長と思われる者の号令により、一斉に飛び出す獣人族。
素早く対処していく。ナズナほどではないにしろ、それでも軍隊長としての行動を示していただろう。
「魔物が分散していく! それを取り逃がすな!」
私は、瞬時に頭に流れてくる情報をみんなに伝えていく。ナズナとのコンビネーション攻撃が効いたのだろう。私の声でも動いてくれている。
「ナズナ! 私たちは、フェクトの方に行くよ」
ナズナは、魔族と戦えると理解したのだろう。より精度の高い格闘技を披露しつつ、すぐに私の元に飛んできた。
「どこにいるの。早く教えて!」
魔物を斬り倒しながら、フェクトの居る方に進んでいく。その頃には、住民たちも出てきて戦っており混戦となっていく。
みんな強いが、戦闘経験が少ないのが目に見えてわかる。先ほどの連中でないのが、ネックである。
「ナズナ、フェクトはここいつらを抜けた先にいるから先に行ってて!」
ナズナは、察して高い跳躍力を見せ、魔物の頭上を飛び越えていったのだ。
私は、一人残り道を斬り拓く。住民たちが戦いやすいようにと、ただひたすら剣を振るう。
後にその姿は、獣人族の人々にこう呼ばれたのだ。
『剣聖鬼神』
一気に獣人族の士気が上がるのを感じる。それどころではなく、私が離れても何も問題のないまでに成長する。
それは、ここだけではない。国をぐるっと囲む城壁の周りにいた獣人族の士気を上げたのである。
「ここは離れても良さそうだね」
私はそう呟く。周りもノリに乗っていて、士気も最高潮だ。気配を見るにまだ、魔族が死んでいないのがわかる・
フェクトが居て、ナズナも居る状況で死んでいないのはおかしかった。
私は、止まっていた足を一気に動かせる。それだけじゃない、魔力を足に込め一気に進ませ、ナズナ同様に進む。
「フェクト、ナズナ!」
二人の名前を叫ぶ。二人は瞬時に振り返る。その奥にいたのは、死にかけの魔族だ。
それが複数体いる。
「二人とも大丈夫か?」
「俺たちには、怪我はない。ちょっとな、まずいことになった」
フェクトは、神妙なお面持ちでそんなことを言う。
「どうしたんだ?」
「コイツらを手引きしたものがいる」
それは、予想だにもしていないことだった。私は聞き間違えたのか、もう一度聞き直すほどだ。
「コイツらをここに呼んだのは誰なんだ! 狙いは獅子王か?」
フェクトはそうだと言わんばかりでうんと頷いた。
「ラギアだよ、これを仕組んだの」
ナズナは、吐き捨てるかのように言った。
動機がわからなかった。やる必要性がどこにある。ただ、わかっていることは一つ、獅子王関連。
まさか……そういうことか。
「ナズナ来い! 獅子王を救うぞ!」
戻っている最中、慌ただしい声が聞こえてくる。なんだか、様子がおかしいのが分かる。
「何があったんだ! 結界の前で止まって」
「入れないんだよ」
その瞬間理解した、わざわざ大規模なことを起こした理由は、住民を中に居ないようにするため。
それで、魔族と結託して犯行におよぼうとしている。
結界は硬く、完全に閉ざされている。
中にまだ、反応がチラチラ残っているが、幼い子供か、お年寄りしかいない。とても中の人たちのみで、助けるのはとても不可能だ。
「ちょっと退いてろ! 魔武式・結界殺し」
結界が粉砕すると同時に、フェクトは右手を抱えながら倒れ込む。
見た瞬間理解した、それは自分の手を犠牲と引き換えに成功させるものだと。
苦しそうに倒れ込むフェクト。私の足は完全に止まる。それどころか、動けなくなってしまったのだ。
「フェクト……!?」
「アリア、何してやがる! 俺のことは構うな! お前は獅子王を助けろ」
その声で、我に返る私。そして走り出し静まり返った獣人の国をナズナと進んでいくのであった。
決壊殺し、その名の通り結界を壊すための技。
腕はボロボロ、その腕を犠牲にしてでも叶えたい行動ともいえる。




