50話 解決と出発
会議室の空気が重い。私、フェクト、ギルマスは、ずっと黙ったままだ。
ギルマスは、本当は何があったかすぐにでも聞きたいはずだ。
闇ギルドが、今回の辻斬り騒動を起こしたこと。どうして師匠が泣き崩れていたのかを知らないから。
そんな時だ、この沈黙を破るような出来事が起きる。
「お待たせしたわ、第五王子も聞きたいということだったので、お連れしました」
「早速で悪いが、何があったか聞かせてはくれないか?」
深夜だというのに、とてもシャキッとしている第五王子。眩しくて、目が痛くなりそうだ。
「今回の犯人は、師匠が剣聖になる前のライバルだった相手です」
私は、本人から聞いたことを、そのまま口に出す。フェクトは、事前に知っていたので驚きはしなかったが、他のメンバーは驚いてた。
「剣聖になった以後も、大会で優勝して相手をしていたそうですが、剣聖三年目の以降闇ギルドに所属したそうです」
みんな、驚きを隠せいないのか無言のままだ。そんな中、イデリアが口を開いた。
「ねぇ、その情報なんで知っているの?」
最初にそのことに切り込んできたのは、やはりイデリアだ。予想した通りになった。
「イデリアには謝らないとね。ごめんなさい、昨日あの時点で聞かされたのよ。師匠と戦いたいと言われて、叶えたのよ」
淡々と言う態度に腹を立てたのか、ギルマスは胸ぐらを掴んでくる。
「離してくれないかな?」
フェクトが、今にも手を出しそうになっている。このままこの状況を続けるのは、非常にまずいと予感する。
「お前、それ本当に言ってのか! アイツは知らなくて挑ませたんか」
「そんなわけないでしょう、昨日の時点で伝えてたわよ」
私は、無理やりギルマスから離れる。フェクトは、殺気を完全にギルマスに向けている。
「フェクト、わかっていると思うけど、手を出したら今すぐ殺すからな」
フェクトは、たまらず壁際まで飛んだ。怯えているのか、体が小刻みに震えていた。
「今回の犯行の目的ってなんですか?」
第五王子は、一人落ち着いた様子で話しかけてくる。こういったことにも慣れているのだろう。見ていてわかるほどだ。
「それは、依頼を受けて殺しただけだそうです」
「そうか、全員もれなく恨まれていたからな」
第五王子は、少し下を向いて少し考え事をしているように見受けられる。
みんな、話を聞くごとに暗い顔になっていく。それだけ、今回の出来事がどれだけの被害だったかをものがったっている。
そんな時だ、少しスッキリした様子の師匠が部屋に入ってきた。
その顔は、どこか覚悟の決まった顔だった。
「みんな心配をかけたな。今回の件、闇ギルドはここまでの大ごとになるとは思っていなかっただろう」
「それは確かに」
イデリアがそう呟く。
そして、その瞬間あることが思い浮かんだ。それは、今回の事件、このメンバーが揃うと誰も思っていなかった。
師匠は、基本的には私の故郷以外で冒険者の仕事はほとんどしていなかった。
本当に今回は、たまたまだと考えるのは妥当だろう。
イデリアは、王都が本拠地だし出てくるのは、当たり前だったのもわかる。
そして、ラグにとって一番の誤算は私たちの介入だろう。
「ラグにとって、辞めるきっかけを与えたことになるしね」
ギルマスも、ようやく気がついたのか頷いていた。
「なんたる奇跡ですね、だって剣聖様が来られなかったら、こんなことにはならなかった」
「そうです、昨日の依頼が最後だったので翌日には出国されてましたから」
そして、何より一番彼が焦ったのは、師匠が出てこなかったことだ。
ずっと、王族の護衛を行っていたから。
「おそらく拠点は、すでにもの家のからでしょう。今後は、ギルドも魔法界も手を組んで闇ギルド撲滅しよう」
師匠の提案には、その場にいた誰もが賛同した。そして、翌日師匠は、お店に帰ることを決意した。
「アリア、今回よく頑張ってくれた。どんな形であれアイツと再開できたのは、アリアのおかげだ」
「それは、どうも。師匠、体には気をつけてね」
「それはこっちのセリフだ」
そう言って師匠は、王都を後にした。王都は、犯人が捕まったことが大々的に書かれたためか、人々の表情が最初に見た時の何倍も明るくなっていた。
「じゃあ、私たちは数ヶ月の休憩しますかね」
「冬が終わるまで、退屈だな〜」
フェクトは、ずっと文句を言っていたがこっちの方が安全なのだから仕方ない。
私たちは、旅人として基本乃移動は箒がメインなのだから仕方ないと思う。
そうして、数ヶ月が経った。
「じゃあ、そろそろ行こうかな」
ある晴れた日の朝。私は、ほぼ家とかした宿の一室でベッドから起き上がる。
すっかり、冬の寒さを抜け春の暖かさのやってきた今日この頃。
唐突に思ったのだ。
私たちは、何ヶ月もお世話になった宿にお礼を込めて、宿泊費プラスで大量に置いて後にした。
出国手続きをすませ、箒を取り出そうとした最中、後ろから声を掛けられる。
この数ヶ月の間、聞き飽きたといっていいほど聞いた声だ。
「アリア待って!」
振り向くと、学校の制服に身を包んだイデリアである。息を切らしたほど、走ったのだろう。
少し、息を整えるに時間がかかっていた。
「どうしたんだアリア? 今日は学校だろ」
この数ヶ月色々なことがあった。お風呂やに行くと、毎回私の胸を見るや自分の胸と見比べ、胸に向かって何度もビンタしてくる始末。
図書館で魔術の本を読んでいると、大きな声でびっくりされたり、学校行事に無理やり参加させられたり、散々だったとことを思い出す。
「いや、アリアが行くって聞いたから! 急すぎてびっくりしたわよ、今日誕生日なのにお祝いできないと思って」
私の誕生日? すっかり忘れていた。今日は、私の誕生日だった。
ほぼ毎日、同じような日常だったから、完全に頭から消えていた。
「そういえばそうだったね」
この反応に、イデリアは怒り出す始末である。この日を楽しみにしていたのだろう。
めちゃくちゃ気合いが入っていたみたいで、少し申し訳なくなった。
「はいコレ! 誕生日プレゼント」
渡されたのは、首飾りである。可愛らしい形で、イデリアも身につけていた。
「ありがとう! せっかくだから付けてよ」
私は、イデリアが付けやすいように、少しかがみ込み付けてもらった。
「また冬には、戻ってくるよ」
「絶対だからね……私待ってるから!」
そうして、イデリアが見えなくなるまで、手を振って王都を後にしたのだった。




