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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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540話 願いの勇者と悪竜


 静寂に包まれた部屋の中。辺りを見渡すと、本棚にはびっしりと本が置かれており、本棚自体にも結界が施されていた。


「随分と厳重に保管されてるんだね」


 思わずそんな言葉が口から出てしまった。とりあえず本棚を見ようと近づいていく。

 この国の歴史書物を始めとする、様々な本が種類分けを施され並べられていた。

 その中でも一際厳重に結界を施されている書物があった。一体どんな本なのだと興味を持ち、その場でしゃがみ込む。


「勇者と悪竜……空想の物語?」


 気になった私はその本に手を掛けた。パラパラとページを捲り、軽く読んでみた。

 そこに書かれていた内容はシンプルである。悪竜と呼ばれる竜がこの国を襲い、勇者とその仲間たちが国を救うという冒険譚。

 このような本がどうしてこんな場所に保管されているのか、私には見当もつかなかった。

 それに何より、この本は空想の物語ではない。


「本当にあった出来事を元に書いてる可能性が高い」


 本を机の上に置き、この国の歴史書を開く。何かあの内容と同じことがあったのではないかと思い調べていく。

 何冊目かの本に、先ほど読んだ内容が書かれていた。

 だがそれは本の内容とは別物だった。


「この国は一度滅んだ、だからこそあのような本を著作は書いたんだ」


 次現れた時、絶対に勝つ未来を願って。そのような内容を見たからには、私は剣聖としてやるべきことが出来た。


「絶対に私が倒す」


 冒険者として剣聖としてやるべきことがあるのではないかと、私は本棚の本を片っ端から調べることにした。

 何か悪竜に繋がる本がないかと思い、時間が許す限り調べていく。


(剣聖様、そろそろ閉館のお時間です)


 頭に流れ込んできたのは、先ほどの受付嬢の声だった。すごく冷静で落ち着いた声が頭に入ってくる。


(連絡ありがとうございます)


 そうして私は、本棚に本を仕舞いその場を後にした。戻ってくるや否や、私は片付けに勤しんでいた受付に声を掛けた。


「すみません、少し聞きたいことがあるのですが?」

「悪竜のことですよね、剣聖様なら聞いてくると思っていました」


 受付嬢の後を追い、外に出る。冷たい風が吹きつけ髪を靡かせる。

 寒さを感じ、肌を摩り少しでも良いからと温めようとする。


「あの悪竜は、今も生きているんですよ」

「やっぱり……そうですよね」

「悪竜は、この国を破壊したのちそこから少しの間だけ、この国を寝床にしていました。当時の剣聖様、管理者様が命を賭けて追払いもう一度ここに国を立て直したのです」

「その悪竜は今も姿を確認が出来るのですか?」

「数年前に一度確認されて以来、ここから離れた山の中に悪竜はいます」


 おそらく力を溜めていると考えるのが妥当。

 もう一度この国を壊すためならば、悪竜からしてみれば力を貯めるのも悪くないだろう。


「その悪竜は最近動きを見せています。どうか、この国を救ってはいただけないでしょうが?」


 受付嬢は頭を深々と下げた。


「この件はギルドからクエスト依頼と受け取ってもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。元々、剣聖様が来たらこの話をしてほしいと父から頼まれていたので」


 この受付嬢の父親は、ギルドマスター、もしくはギルド職員なのだろう。


「私たちに任せて下さい、必ず倒します」

「私たち?」


 受付嬢は少しばかり疑問のような顔を浮かべるが、すぐに顔色が明るくなった。


「私たちも話を聞かせてもらったわ、ここで昔の管理者様が戦ったというのであれば、私も当然戦います」

「あなたはすぐにギルドの方に報告お願いします、ここは数日の内に悪竜が動くことは間違いないから」


 そうして私たちはその場を後にした。


「あの気配、まさか悪竜とか呼ばれるやつだった可能性が高いな」

「わたしも感じたニャー、結界を張り替えている最中に感じたから、思わず組み手が中断してしまったニャー」


 おそらく私が気がつかなったのは、あの部屋にいたからだろう。


「そうなんだ、予想ではいつここに来ると思う?」

「早ければ明日の朝。迎撃するなら、私とアリアで充分だと思うわ」


 イデリアはいつもよりも自信に満ち溢れているようだった。

 そこまで言われたら、それで充分なのだろうが念には念を入れて準備しておいた方がいいだろう。


「フェクト、ナズナはギルドの方に行って情報を共有」

「フレリア、ウッドは支部の方に行ってちょうだい」


 四人はそれぞれ指示通りに動く。気配の方は感じようと思えば感じられる程度にはわかる。

 それにしても随分と大きい。それにあそこまでの高密度な魔力を有していると、流石に戦いづらい。


「結界の範囲を広げておいた方が良さそうだね」

「それはそうだけど、魔力は温存しておいた方が良いわ」

「それだったらフェクトに頼む、それじゃあまた後でね」


 そうして私は一度宿屋に戻る。


「ようやく戻ってきたね、それにしても街の方が少しばかり騒がしいけど何かあったのかい?」


 すぐに情報は伝わるだろう。ここで誤魔化した所で意味がない。


「悪竜が来るかもしれません。そのため、私たちが対処をするつもりです」

「そうかい……だったら出陣前に美味しいものを食べてもらわないとね、たらふく食べて存分に戦っておくれ」


 長い髪を束ねエプロンを着る。先ほどまでとはまるで別人で、その後ろ姿はとてつもなくかっこよかった。


「アリア、今帰ったぞ。ってこんな所で何してだ?」

「料理を作ってくれるってさ。フェクトにナズナ、絶対に倒そう」

「当たり前だろ、何今更言ってんだ」

「フェクトの言う通りニャー。この国を守るためなら、わたしはいつものように命を張って戦う!」


 豪勢な料理をたらふく食べた私たち。その日はそのままそれぞれの部屋で眠ってしまった。

 決戦の時間は夜中だった。

 大きな音を立て、その気配を国中に知らしめている。気配に飛び起きた私たちは、すぐさま宿屋を後にした。


「空ってあんなに暗かったっけ?」


 ふと空を見上げるといつもなら星々が見えても良いはずなのに、一切見えなかった。


「ウッドの魔法ニャー! これで結界を守ろうとしてるみたい」


 ナズナの一言を聞いて、魔法界組は相当無茶をしたということ。なんともイデリアたちらしいが、こんな時こそ休んでほしかった。

 そんなことを考えながら、私たちは出入り口から出るのであった。


 遅れてしまい申し訳ありませんでした。

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