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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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519話 恨みと仲直り


 夏の日差しを全身から浴びて、湖に飛び込んだ。水飛沫を上げ、それと同時に戦いは始まった。


「今日は私も参戦するわよ、二人とも覚悟しなさい!」

「わたしはフェクトを狙うからその後で相手してあげるニャー」

「ナズナ、また返り討ちにしてやるよ」


 二人の攻防を無視するかのように、水をぶっ掛ける。それを二人は素早く避け、大きく飛び上がった。


「上空に逃げたら意味がないでしょ、もう少し頭を使わなきゃ」

「それはどうかな?」


 フェクトがニヤリと笑う。何か来ると思った私はすぐに臨戦態勢をとった。

 突然、水が牙を剥く。誰がどう見ても、それをやったのは誰だかわかるだろう。

 フェクトが魔法で水を操り出したのだ。

 それによって、私とナズナの二人は一気に不利になる。どんなふうに水を掛けようにも、魔法で簡単に寝返ってしまう。

 だからこそ、フェクトは空中で止まったのだ。


「ナズナ、ここは一時休戦としよう、ここで私たちが争った所で何の意味もない」

「わかったニャー、でもどうやってあんな奴倒すニャー?」

「この状況で使えるのは、一つしかない」


 このバトルは、基本的に攻撃方法は水。それを使うための手段として魔法や武器の使用を許可しているが、中々それを使うものはいなかった。

 だからこそ、純粋な水掛け勝負になっていたのだ。


「圧倒的な水を浴びせてやるよ、ガトリング」


 凄まじい速さで水の弾丸が飛んでくる。それも一つなんかではない。集中砲火での圧倒的な質量勝負をされたら、私たちは何も出来ない。


「水獣拳」


 ナズナは自ら技を生み出し、それに対処する。ただ、そんな一撃では高が知れている。

 圧倒的な質量による暴力。ナズナは一瞬にして湖の藻屑に成り変わった。


「あとはアリアだけだ! ここで日頃負けている恨みを晴らさせてもらう」


 私は手を叩いた(オフセット)


「――ぐがぁっ!」


 普通のオフセットではない。ここでの使用ができるように、水に私の魔力を流していた。

 それにより私諸共ダメージを喰らう。

 水に魔力を流したことで、私自身も水を操ることは可能になる。

 ガトリングを連射していた時に、フェクトの体に貼り付けさせてもらった。


「どうかしら、痛いでしょう?」

「何しやがった、俺の魔法を相殺したら失格案件になるだろ」

「それは違うんだな、もう少し周りを見ることをオススメするよ」


 フェクトはあまりの痛みで湖に沈んでいきそうになる。気絶しそうになっているが、何とか耐え抜いている感じがする。


「剣聖たる所以の一撃、喰らっとく?」

「まだ負けてねぇ!」


 痛みで悲痛な声を出しそうになるのをグッと堪え、何とか立つことが出来たフェクト。

 ただ、もう出来ることは数少ないのは自分が一番わかっているだろう。


「お遊びはここまでしよう」

「何がお遊びだ! 今日ここで俺が勝って気持ちのいい一日を過ごすって決めたんだよ!」


 力強く言ってはいるものの、体は限界をとうに超えているし、軽く小突いた程度で気絶するだろう。

 私はそんな中、容赦なく水をぶっかける。

 そのままフェクトは対応することが出来ず、ぶっ倒れた。

 私は高らかに右腕を掲げた。


「とりあえず二人を回収しないとね、それにしてもたかが十五分足らずでこの満足感、しばらく水の中に入るのはいいかな」


 疲労感に満ちた体に鞭を叩き込み、二人を抱き抱え岸に上がった。

 私を含めポーションをぶっかけ、起きるのを待った。

 そうして昼過ぎ、二人はようやく目覚める。二人して、一気に起き上がったものだからそのまま地面に沈んでいく。


「二人とも大丈夫? とりあえず、元気になるもの作ったから早く食べよう」

「なんでアリアだけ、そんなに元気なんだよ」


 いや、二人と違って気絶してないし、それに何よりポーションを飲んだら少しは誰だって元気になる。


「二人が寝てる間に鍛錬も出来たんだよ! 二人とは体の作りも違うからね」

「それにしても俺のガトリングを食らっておいて、一歩も動かずに耐え切るってどうなのよ」

「マジで!? アリアってあれの攻撃を何も対処せずに受け止めてたの?」


 確かに私はあの時、何もしなかった。なぜなら耐えられる自信があったからだ。

 それに何より、あの程度の水で傷つく体ではない。


「魔弾としての威力は充分過ぎるほどにあったと思う、それでもね、しっかり踏ん張れば動かず対処出来るわよ」

「いやあの魔法攻撃、魔族の頭でも貫ける威力は持ってるぞ」


 今、聞きづてならないことが聞こえてきたんだけど……魔族の頭を貫く威力? 主人であるこの私に、そんな攻撃を日頃の恨み込みで発動してた。


「フェクト、最期に何か話しておきたいことがあるなら聞くわよ、それにしても主人にとんでもないことをしてくれたわね」


 フェクトは血の気が引いた顔をしていた。ナズナの方は、わたし知らないとでも言いたげな表情をしている。


「あれは言葉のあやだったんだ、言った威力は水では出せないからさ」

「魔神の言葉を誰が信じると思う? もう少し発言を考えてから言うべきだったわね。それじゃあ、バイバイ」


 渾身の一振りはナズナによって止められた。フェクトは自分と剣との近さにまたもや気絶してしまう。


「流石にやりすぎニャー、そりゃキレるのもわかるけど」

「それもそうね、もしまたそういうことになったら全力で止めてね、期待してる」


 そんな言葉を言い残し、私はテーブルに乗った料理に手を付ける。

 ナズナの方は、フェクトをもう一度叩き起こし、席についた。


「二人ともさっきの発言は謝る、すまなかった、流石に調子に乗りすぎた」

「別に気にしてないから別にいいよ、それにしてもあのガトリング、これからはちょくちょく使いなさいよね」

「そうニャー、あの魔法があったら魔物をどれだけ楽に討伐出来るかわかってるでしょ」


 仲直りした私たちは、またいつものような食事を楽しむのであった。こんな日が長く続くことを願って。

 

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