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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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514話 不可思議なこと


 不可思議なことが起きた。先ほどまであったはずの死体、それが忽然と消え、跡形もなく痕跡が消えていく。


「フェクトは魔法で原因を探って、ナズナは足跡が消えて行くのを阻止してみて」


 だが、それはどれも失敗に終わった。認識阻害系の魔法で追えず、そもそも物理的に止めようとしても無駄。

 まるで、完全犯罪の片棒を担がされた気分だ。

 それでも何か手掛かりが残っていないか、探るナズナ。必死に周りを探索しているが、やはり痕跡は見つからない。

 だが、そんな魔法を私は聞いたことがない。それはフェクトも同じなのか、困惑した表情を浮かべていた。


「これ、一体どうなってるんだ? アイツらはあの魔物によって殺されていたはずだ、それなのにどうして」


 知識のない私では何の役にも立たないかも知れないが、今思いついたのが一つだけある。

 素人が、思いついたことを言って良いのだろうかと思ったが、ものは試しだと思い、私は意を決して口を開いた。


「もしかして、死後でも使えるように術式を組まれていた可能性ってないかな?」


 フェクトは苦い顔をする。それがどういった術式なのは、私では見当もつかない。それに何より、そんな魔術式があるのかえ私にはわからない。

 だがフェクトの顔を見るに、その魔術式はおそらく本当に存在しているのだろう。フェクトがあんな顔をした時点で私は、気がつくべきだった。

 フェクトに流れる魔力が何だか跳ね上がったような気がする。


「あるにはあるが、それを使ったとしてもこんなことにはならないはずだ」

「そうなの? 自身の死を生贄として、生前では不可能だった魔法が扱えるとかありそうだニャー」

「ナズナにしては冴えてるな、だとしてもここまでのことはありえないはずなんだ」


 おそらく死体の数だけでは、そんな芸当ができるとは思っていないのだろう。自身の死を生贄にして、魔力を最大限高めその術式を発動させる。

 だが、その前提にあるのは人間の死だけだ。それだけで足りないとすると、それは一つしかない。

 だがそれは、本当に同じ人間かさえ思ってしまう。でもそれはおそらく最も真実に近いものだとも思えた。

 だからこそ、私はフェクトの目を見て話した。


「あの魔物も術式内に組み込まれていたんだ。アイツはキメラだ、だからこそ実行に移せたんだよ」


 フェクトの顔はより曇る。それになんだか、蒸し暑さがより際立ち、まるで茹でられているかのように暑い。

 フェクトは唇を噛み締め、怒りで身を震わせていた。


「絶対にこんなことをした奴らを捕まえるぞ、何があってもこの手で俺が潰す」


 膨大な魔力が強く握り締められた拳に集まっていく。それほどまでに怒りに満ち、こんなフェクトを見るのは久しぶりだった。


「とりあえずこれからどうするニャー、どうしてあんなことをしたのかわからないし、闇雲には動けないニャー」


 ナズナの言う通りだ。いくら私たちが強いといっても、たった三人しかいない。

 今できることは、なるべく多くの人に情報を共有するべきこと。それに、私たちは旅人である以上、旅をするのが本文だ。


「イデリアに連絡を入れておくわ、全面的に協力を要請しましょう」

「それは違いねぇな。それによ、こんなことをするのは大抵あの組織以外いないんだからな」


 そうして私は少し離れた位置で、ぬるま湯な風を感じながらテレパシーを繋ぐ。

 だが何度試してもイデリアには繋がらず、不安という種が芽を開かせだんだんと大きくなる。終いには、大きな一輪の花が咲く。

 そんな状態な私は、少しばかり過呼吸になりながらも、精神を安定させる。

 そうして、二人の元に戻るのであった。


……


 アリアがそんな状態になっている頃、イデリアの方は王都が絶賛襲われている最中だった。


「すぐに魔法を再展開しなさい、モタモタしてないで早く!」


 罵詈雑言を浴びせながらも、私は魔法を放っていた。得体の知れない魔物が王都を取り囲み襲ってくる。

 私にできることをしなければと思い、前線に立って戦っていた。

 放たれる魔法、ぶつかる破裂音、冒険者の声、色々な声が混じりあい、戦場は混沌としていた。

 そんな混沌とした空気をぶち壊すかのように、若い声が後ろから聞こえてきた。


「失礼します! 地上の冒険者からの情報です。捕縛した魔法使いは、魔物が消滅すると同時に跡形もなく無くなるみたいです」

「もしかして、全員自ら命を? だとしたらあんな現象にも説明がつく」


 そうなると、こんなことをしたって絶対に解決しない。こんな無駄な行為を今すぐに辞めたいと、叫びたくなる。

 それにこの行為は、彼らにとってほとんどメリットはない。むしろ、仲間を減らすデメリットしかない。


「本拠地を叩かない限り、この戦いを終わらせないつもりかしら?」

「そんなことをしたって無駄ですね、おそらく別の狙いがあるかもしれないよね」


 この行為自体がフェイク。本当の目的が別にある可能性が高いかも知れない。

 だとしてもこの状況を放っておくことはできない。なんとも腹立たしい状況に、私自身が嫌いになる。


「そんなの俺たちに任せて、イデリアは自分の仕事をしてくれ」


 卑下していた私の前に、一筋の光が見えた。


「トータトン! 戻ってたのね、それだったらお願いするわ」


 トータトンはニコッと笑い、一気に地上前線へと飛び降りた。その衝撃は凄まじく、こちらにまで気配が伝わってくる。


「あれだけ強いトータトンを従わせてるアリアって、本当に恐ろしいね」

「それにしては随分と嬉しそうですね、それにイデリアだって負けてないから」


 そんなフレリアに背中を押され、私は管理者室へと戻って行くのであった。


……


「繋がらないってマジかよ、もしかしたらすでに王都で何かあったのかも知れないな」

「そうかもね、でも被害は少なく抑えられる、だってアイツらもいるんだから」


 そうして私たちは謎を抱えたまま、ほうきに乗って進んでいく。

 やはりその風はぬるま湯な風で、ベトついた体には心底気持ち悪かった。

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