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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-10章 剣聖少女と新たな人類

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493話 無謀なトレーニング


 投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。


 ナズナの一撃は、爽快感溢れ出すものだった。先ほどまで劣勢だったにもかかわらず、ナズナはたった一撃でその状況を変えたのだ。

 そのはずなのに、ナズナはため息をしながら戻ってくる。私たちの顔を見るなり、落ち込むようにその場に座り込んだ。


「今の一撃良かったと思うけど?」


 頭に衝撃が走る。どうやらフェクトに頭を叩かれたのだ。叩いたフェクトを見ると、呆れた表情でこちらを見ている。

 そうして、なぜフェクトがこういうことをしたのか、私はようやく理解した。


「覚醒なしで倒したかったんだ」


 ナズナは弱々しく頷いた。確かに考えてみればそうだ、私たちはあの程度の魔族に時間なんて掛けずに倒せていたはず。それなのに、ナズナは時間を掛けた挙句、覚醒で一気に仕留める形になっていた。

 考えられる要因は、ただ一つ。私たちが弱くなってしまっているということだ。


「これってつまり、暇が原因ってこと?」

「一番の要因はそうだろうな、でもまぁナズナにもダメな所はあるけどな」

「それってつまり、一日の大半を寝て過ごしていること?」


 フェクトは大きく頷いた。確かにナズナは、日中も寝ている時がほとんどだ。

 だが、それは旅をしていたらそうなるのも仕方ないかも。だからこそ思考を巡らせる。

 ある考えが浮かんでくる。それは、ナズナからしてみれば地獄のようなものになる。今までの生活に慣れきっていたナズナでは完走することが不可能に近いものだ。

 それでも、私は心を鬼にしてその提案を口に出した。


「ナズナどう?」

「鬼だな」

「鬼ニャー」


 事前に予測した通りの回答が帰ってきた。

 だって考えなくてもそりゃそうだ案件。自分は提案だけしておいて、実際にやるのはナズナ自身。


 私はそれを優雅に眺める鬼畜トレーニングなのだから。


「普通に考えて続くわけないだろ、それにここまでだらけきった体がそれに耐えられるわけねぇだろ」


 フェクトのご意見はご最もすぎるものだ。だからこそ、それを私自身がやらなければ意味がない。


「ほうき並走トレーニング、私がまずは実践してみるよ」


 二人は目を丸くして驚いていた。それがどういうことなのか、理解しているからであろう。

 おそらく私ですら、完走なんて夢のまた夢かもしれない。ただ、仲間が苦しい思いをするなら、私もそれに全力で苦しい思いをした方がいいと思ってしまった。


「とりあえずここ平原だし、やってみるか?」


 フェクトは震えた声で提案してきた。ナズナは首を横に振りながらか細い声で「やめときなよ」と、言う。

 それでも言い出しっぺは私だ。それを私が実行しないでどうする。


「やるよ、私はもっと高みに行きたいから」


 そうして、入念に準備運動を始め体を整えていく。二人はまだ心配そうに私を見ていたが、何も言ってこなかった。


「じゃあ、いつも通りのほうきのペースでやろっか」


 先ほどまで雨が降っていて、地面がぬかるんでいて走りづらい。

 それでも私は、前を向いてほうきと並走を始めた。


 その結果、その日の夕方まで休むことなく走り続けていた。

 狂人の肉体、体力、精神力が私を支えてくれたのだ。


「途中崖の上を飛ぶことになったのに、あんなぴょんぴょん飛ぶ感じで走り続けるとかどうなってんだよ」

「あれぐらいは余裕だよ。だって私、強くなりたいもん」


 その結果、私は二人にドン引きされたのだった。

 翌朝。私はいつものように一番遅く目覚める。ただ、疲れとかは一切残っておらず、なんなら調子が良いまである。

 私はテントを飛び出し「おはよう!」と、高らかな声と共に登場した。


「アリア、あれだけ走っておいて、普通に元気とかどうなってんだ?」


 起きてきた人に挨拶もなしに、まず聞くことがそれか! と、ツッコミを入れたくなるのをグッと堪え私はにっこりと笑う。


「当たり前じゃん、剣聖としてこれぐらいは当然のことだって」

「それは普通無理ニャー、昼頃から走って四、五時間は走ってたよ。ほうきのスピードは緩やかに飛んだとしても、全力で走っている人間を軽く追い抜いて、見えなくするなんてザラにあるのに」


 そんなことを言われても私はできてしまっている。それに何より、こんなことではまだ終わりではない。


「もちろん今日も走るわよ、寒風少女を殺すならこれぐらいの努力をしなきゃ」

「ナズナ、プラン変更だ。アリアを気絶させてでも、それだけは阻止するぞ」

「わかってるニャー」


 二人の雰囲気が変わる。二人揃って、攻撃の構えを取るのだから私もそれに答えないと。だからこそ木剣を取り出し、私は木剣を前に突き出す。


「私に攻撃しようって言うんだ、生半可な攻撃は許さないからね」


 二人は一斉に飛び込んでくる。二人の拳を軽く捌き、カウンターを入れる。

 だがそれは、間一髪の所で防御姿勢の二人に守られてしまう、おそらく想定した動きだったのだろう。よく私を見ている。


「良いじゃん、二人とも! 私を気絶させるために作戦を立てて嬉しい」


 一気に間合いに攻め入り、連撃を打ち込む。ただそれも、二人が捌いたことにより、攻撃は決まらなかった。それでも頬から血を流していた。


「全然速くなってる、俺たちの想定を遥かに超える強さってわけかよ」

「昨日、今日であそこまで足が速くなる? どう見てもおかしいニャー」


 確かにフェクトの言う通り、私は相当速くなっている。おそらく昨日走り続けたことにより、その感覚が作用しているのだろう。

 それでも、二人がこうして私に挑んできてくれることが本当に嬉しい。

 だからこそ、私はもっと強くなれる。


「二人とも、私を倒してみなさい、あなたたちの持てる力を使い果たしてでも」


 それでも二人とも、素のままで倒そうと画策するようだ。その証拠にナズナは、覚醒を発動させていない。それがどれだけ無謀なことか、わかってるはずなのに。


「へぇ〜、それで挑み続けるのか。それでも良いけど、私的には二人にもっと強くなってほしいんだけどな」


 そうして私たちはぶつかりあったのだった。

 


 うちの主人公は、ラスボスか何かなのでしょうか?

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