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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-10章 剣聖少女と新たな人類

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491話 完成と旅立ち


 翌日。私たちは二人に呼ばれて、上空に居た。


「二人して焦った感じで呼んでどうかしたの?」


 二人の顔は、とても満足そうな顔をしている。十中八九、結界ができたということ。それを展開するため、私たちをわざわざ呼んだのであろう。


「俺たちがずっと作ってた結界がようやくできたんだ、エルザの母さんにも協力を仰いで正解だったな」

「本当そう。最初はどうなるか心配してたんだけど、上手いこと展開できそうなんだよね」


 確かにあの人なら、こういった案件には強いはずだ。それを専門にしてあんな塔に篭っているのだから。


「それじゃあ早速見せてよ、良い感じの結界なんでしょう」

「絶対にアリアも驚くと思うわよ」


 イデリアがここまで自信満々な顔をして言うのも珍しい。魔法界のトップが本気で喜びたくなるほどには素晴らしい結界なのだろう。

 そうして、イデリアが指を鳴らすと同時に、今までの結界は役目を終えたかのように、割れて消えていく。

 新たな結界は誕生を始め、段々と構築が進んでいく。


「こりゃまた、随分と手の込んだ感じにしたんだね」

「え、まだ完成はしていないのにわかるんだ」


 イデリアは少しばかり驚いたような顔をする。私はすぐに言い返したくなったが、より深く海に潜るかのように、結界の魔力をより深く感じていく。


「ただの結界では、ここまで手の込んだものにはしないよ」


 この結界……説明するとするならば、魔法界本部の牢獄を感じる。ただ、あの重々しい雰囲気ではなく、結界における強度の話だ。

 ここまで高めるのには随分と無茶を重ね、まるでセイレが暴走した時みたいな、多重バフを何度も掛けている感じだろう。


「こんなことをして大丈夫なの? 魔力の方とか」

「それはいつも通り管理は、結界術師が基本的にやってくれるから」


 こんな結界を結界術師に任せるのか。これがもし、なんらかの不備が起こったとなると、結界術師のクビだけでは絶対に済まない。

 そんなことを思うと、背筋から寒気がした。


「これを任せるって大丈夫なのか? どう考えても維持が大変だと思うけど」

「それは大丈夫だよ、結界術師の力を見くびりすぎだよ」


 いや、見くびってはないんだけど。それを言ったところで、あまり意味がないことだと判別をつけ、先に話を進める。


「ここまで俺たちがやってきたんだ、こっからは結界術師の腕の見せ所だからな」


 そうだとしても、ここは辺鄙な国の中。どう考えても、地方都市並みのこの国ではそう長くは持たないだろう。


「それに大丈夫だ、心配することはない。何より結界が今まで壊れてこなかったのはなんでだと思う?」


 急にクイズ形式で言われても、なんて思いつつ私は思考を巡らせる。

 そうして答えに辿り着いた時、フェクトの顔をチラッと確認する。私と目を合うなり、とてつもなく笑顔をこちらに見せつけてきた。


「自然治癒を使った魔力補給ね」

「正解だ、この国に限らず、どの国、どの村でもこれで充分なんだよな」


 自然に発生した魔力をそこに吸い込ませるのか、よく考えられている。

 それに何より、結界術師の人々を考えての行動、そこには思わず拍手してしまう。


「そういったことをして、ここまでの結界を維持するってわけね、それにこの結界随分と硬そうだね」

「そりゃ当然だろ、ここまでやるのにどれだけ時間が掛かってると思ってるんだ」

「そうみたいだね、転移からの抜け道もなそうだし、これで完成?」

「完成よ、これ以上王都を開けるわけには行かないから、それじゃあね」


 そうしてイデリアは去ってしまった。上空には私たち三人だけが残されてしまう。

 やることもなかったので、私は結界に触れて、より深く結界を調べた。

 私では絶対に作れない結界は、どんなに硬いのか試したくなってしまう。でもそんなことをすれば、結界を生成した意味がなくなってしまう。

 そう思うと、私はできなかった。


「とりあえず降りようぜ、そろそろ出発もしたいしさ」


 そうして、私たちは地上に降り立ち街の中を歩いていく。皆、新しい結界には相当気になるのか、所々で立ってて観察をしている姿に遭遇する。


「今の子ってさ、結界術師加那?」

「多分な、あんなに目を輝かせて見てたんだ、相当好きだと思う」


 確かに結界が新しくなったことで、街の人々に活気が戻ってるのを感じた。


「フェクト、結界作成に関しては本当お疲れさま、主人として、私がせっかくだし奢るわ」

「本当か!? 結界作りやって良かったぜ」

 

 フェクトは体全身で喜びを表現して小躍りをする始末。そんなに嬉しかったのかと、私は少しばかり驚いてしまった。


「とりあえずオススメのパンがあるんだけどさ食べたくない?」

「何それ!? 一体どんなパンなんだよ」

「自家製くるみパン、セイレが私を忘れて小躍りするレベルには好きなパンだよ」


 フェクトのテンションはより上昇して、私の手を引っ張って走り出してしまった。


「フェクトは道知らないんだから、ちょっと待ってよ」

「フェクト待つニャー、それをするのは、本来はわたしの役目ニャー」


 いや違うけど!? そんな言葉を心の中でツッコミつつ、私たちは駆け出していく。

 そうしてパン屋に着いた頃には、フェクトは興奮気味で、息遣いが少しばかり荒い。そうして、フェクトはパン屋の中に満を持して入っていった。


「あの、自家製くるみパンってありますか?」


 昨日の店員さんがすぐに応対してくれたおかげで、出来立てを買えた。フェクトはすぐさま会計を済ませ、その場で大きな一口をかぶりつく。

 次の瞬間、フェクトの声が店に響き渡ったのだった。


「アリア、どうしてこんなパンがあるって教えてくれなかったの?」

「わたしだって昨日知ったの、気に入ってくれて良かったわ」


 そうして私たちはこの日一日掛けて、旅に必要なものを揃えて終わる。

 次の日、セイレ、アラタは号泣の中、見送りに来てくれた。


「またいつか!」

「また手合わせお願いします!」


 そんな言葉を送られながら私たちは新たな旅へと向かうのであった。

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