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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-10章 剣聖少女と新たな人類

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481話 再開と修行


 春の暖かい陽気を受けつつ私たちはほうきを走らせる。そんな中、見えてくるのは国である。

 丸い城壁に囲まれた中に街が存在する、いつものタイプだ。


「ようやく国が見えてきたな」

「そうだね、もう一ヶ月近くは国も村も見てなかったからね」

「とりあえず着いたらご飯を食べようニャー、まだお昼食べてなかったでしょ」


 そんな言葉を聞いてか、三人のお腹の音が一斉に奏で始める。

 私たちは顔を見合わせ、クスッと笑ってしまった。そんなことをしていると、国はたちまち近づいていた。

 ほうきを降下させ、私たちは地上に降り立たつ。軽くストレッチをしつつ、私たちは門へと歩いていく。

 私たちが近づくと、門番兵も姿勢を直し、こちらに目線を向けた。


「こんにちは! 旅人なんですけど」

「こんにちは、長旅お疲れ様でした、こちらの紙に必要事項を書いて下さい」


 渡された紙にそれぞれ必要事項を明記して、それをまた門番兵に渡す。一通り確認した兵士は街の中に通してくれた。


「空から見てたけど、結構大きな街だね」

「まぁ、この辺り村とかもないからな、自然に大きくなっていったんだろうな」

「観光かな? 結構獣人族とか他種族とかいるみたい」


 確かに言われてみればそうだ。他の国よりもどことなく色々な種族が集まっているのを感じる。

 パッと見た感じ、獣人族とエルフ族がいる。それも結構な多さであり、他の国でも中々お目にはかかれない状況だ。


「とりあえずお昼を食べようか、どこか美味しそうなお店なんてないかな」


 そうしてとりあえず私たちは、大通りを通りつつ、どこか良い場所がないか探す。

 歩いていると、私たちには馴染み深いギルドが、結構な大きさを誇る建物として建っていた。


「王都のギルド並みの大きさしてる……ここって意外に重要拠点とかなのかな?」

「それはどうだろうな、でもここまで大きくてもあまり必要ないかもな」


 私とフェクトは疑問の言葉を言いつつ、中に入っていくことにした。

 ナズナの方を見ると、建物の大きさに目を輝かせ、鼻歌混じりで一番乗りで入っていく。

 ナズナは勢いよく扉を開けると、一斉に視線が私たちに集まった。中には相当な人数の冒険者がおり、私たちを見るなり、少しばかり驚いているような顔をするのもいた。


「こんにちは、冒険者のアリアです」


 私は軽く挨拶と自己紹介をすると、奥の席に座っていた一人の女性が椅子を倒す勢いで立ち上がる。


「あれってもしかして?」


 その顔には見覚えがあった。つい先日、森の中で出会った魔術師だ。

 武術という才能がありながら、それに全く気が付いていない人だったのを覚えている。

 その奥にはあの冒険者も居り、なんとも言えない顔をしていた。


「お久しぶりです! 剣聖様、この国にいらして居たんですね! あの時は助けていただきありがとうございました」


 そんな大きな声で言わなくても良い気がするが、まぁ感謝されているのだからそこは素直に受け取っておこう。

 彼女はアラタという冒険者を無理矢理引っ張って連れてくる。相変わらずの才能に思わず息を呑むが、全くと言って良いほどその才能に気が付いていは居ない。


「あの時は名前を言わずに去ってしまって申し訳ありませんでした、私は魔術師として活動しているセイレと言います」

「それは良いんだけど、彼の方はまだ冒険者やめてなかったんだ」


 アラタはムスッとした表情をして、何か言いたげな表情をするが、すぐにセイレに睨まれてしまう。

 それには流石にビビったのか、少しばかり頭を下げた。


「次会ったら言いたいことがあったんだよな、セイレさんは魔術師より武術を極めるべきだぜ」


 あ、先に言われた。フェクトがチラッとこちらを見るなり、そのドヤ顔は今まで以上に苛立たしくさせる。


「それ以上言うんじゃねぇ! そんなことセイレが一番わかってんだ、それでも魔術師をしたいっていう気持ちを赤の他人に否定なんてされたくねぇ!」


 お、言うじゃん。私は少しばかりアラタの評価を見直しつつ、セイレの方を見る。

 セイレの顔は、落ち着いた顔つきだが、それはおそらく、もう慣れていると思っている顔だった。


「それはすまないこと言ったわね、ごめんなさい。でも、どうして魔術師なのか教えてくれないかな?」

「魔法が好きだからです。魔法は、不可能なことを可能にできる、そんな力を持っています。だから好きなんです」


 しっかりと言葉で表せており、それを言える。その気持ちは本当のことなんだろうとわかる。

 フェクトの方をチラッと見ると、すごく頷いており、共感しているのが見て取れる。


「そうか、強くはなりたくないか? 俺が魔法を教えてやる」

「デリカシーのない奴らにセイレを任せるわけねぇだろ!」


 良いナイトではあるが、セイレの気持ちをまだ聞いて居ない中で言うのはまだまだな所もある。


「小僧には聞いてねぇよ、俺はセイレ自身に聞いてんだ」

「セイレが行くって言っても俺は認めないからな!」


 大きな声が大きなギルドに響き渡る。


「ナズナ、やめなさい!」


 私の声もまた大きく響く。ナズナは私を鋭い目つきで睨みつけてくるが、すぐに我に戻りスッと落ち着いた。


「今は私もアラタも発言して良い時間ではない、これはフェクトとセイレの話だ」


 それに私がナズナを止めなければ、気絶だけでは済まなかっただろう。

 下手したら首をへし折られててもおかしくないほどに、ナズナは怒っていた。

 それにすら気が付かず、発言を続けようとするのだから、なんとも勘の悪い少年。


「アラタ、私強くなりたい! あの時、私がライトニングをミスってなければってずっと考えてた。そしたら、アラタがあんなことを言われなくても済んだのにって」


 セイレの気持ちはどうやら初めから決まっていたようだ。その言葉を聞いたフェクトは満面の笑みを浮かべる。


「そうか、強くなりたいか。だったら修行としゃれ込もうではないか、俺が魔法の真髄を見せてやる」


 セイレは目を輝かせ大きな声で「よろしくお願いします」と言う。

 そうしてアラタの方は、私が預かることになった。

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