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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-10章 剣聖少女と新たな人類

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476話 フェクトの一人散歩


 春の心地よい風が吹く。寒くもなく、ぬるくもなく、本当に丁度いい風。そんな風もあって、なんのイベントが起きなくてもどことなく楽しかった。


「アリア、ここ数日まともに魔物との戦闘すらないけど、何かある?」


 フェクトにどうやら退屈のようで、この話を振ってくるのもこれで三回目だ。

 フェクトもそのことには気が付いているものの、それでも言葉を発してしまっている。


「ここ周辺にはないかな、それにこれで三度目だけどこの気持ちいい天気を楽しもうよ」


 だが、フェクトの顔は決して晴れなかった。それどころか、ため息すら漏れ出す始末。

 そんな時だった、そんなフェクトの願いを叶えるために現れたと言っても過言ではない、魔物の気配をキャッチした。

 私もフェクトも両者顔を見合わせ、ニヤッと笑みがこぼれ落ちていく。


「ここの魔物は俺の獲物だからな!」


 そんな力強い口調で言っても私は横取りするつもりはない。

 あんなにも生命感溢れる顔を見るのは久しぶりだ。

 フェクトは、ほうきを急速に高度を下げていく。それに、速度はそれに伴って、ギリギリで維持しているかのような速さで降りて行った。


「いくら魔神だからって言っても、流石に速すぎよ」


 あっという間に豆粒のような形になってしまう。そんなに急いで降りた所で、戦うことには変わりないのに、それほどまでに嬉しかったとわかる。

 私が地面に降り立った時には、すでに魔物は壊滅状態であり、フェクトの顔はまだ満足には程遠い顔をしていた。


「それで満足できないのはわかるけど、流石にやりすぎには注意してよ」


 フェクトの一撃なら一発で終わらすことになるが、それでも力を込めすぎると、流石に何かしらの指導を受けることになる。


「それはわかってるけど、やっぱり低俗な魔物では流石に無理だぜ」

「わかるけど、でもそこら辺は自重してよね」


 フェクトは不服そうな顔で返事をする。そうして、またほうきに乗り込み、旅は続くが、フェクトには退屈な時間がまた始まったのだ。


「フェクト、あれ見てよ! あのくっきり真ん中に穴が空いた岩」


 一瞬チラッと見るが、言葉すら返してこない。それになんだか、やる気がないようにさえ思えた。

 今までの疲れがドッと来ているのか、寝そうになっている場面ですら目撃した。


「おっと危ない。興味のない景色とかが続くのはわかるけど、旅ってこういうもんでしょ」

「それはそうなんだけどさ、どことなくなんか、身が入らないんだよな」


 フェクトが漏らした言葉に私は、何も言えなかった。なんて返事を返していいのかわからない。

 それほどまでに、私はフェクトと旅をどうするべきか、迷いの森へと足を踏み込んだ感覚に陥る。


「気分転換に今日はここで旅をやめて、今からゆっくり過ごす?」

「それもなんだか違うんだよな、気を使わせてしまってすまん」

「別にそれは問題ないけど、それじゃあさ、フェクトも私一人で散策したみたいに、フェクトもしてみなよ」


 私は半ば強引に、フェクトのほうきごと下降させて地上に降り立った。

 ナズナは、いつものように寝ているのでそのまま寝かしておき、渋い顔をするフェクトに近づく。


「何か新しい発見があるかもしれないんだから行って来なよ、仲間がそんな顔をしてたら私はずっと心配したままなんだから」


 私はフェクトの背中を力強く手を押し当て、前に進ませる。

 そこからは早かった。フェクトは、一歩を踏み出したことでどことなく明るくなったような気配がした

 それに、フェクトは突然走り出し森の奥へ消えていく。


……


 アリアに思いっきり叩かれた。あの叩きは、俺を信頼している証だ。

 そんな信頼を無下にすることはできないと思ってしまう。それに背中を押されて、どことなく視界がクリアになった気がした。

 それに、足はいつの間に駆け出していき、森の中へ俺を連れていく。

 そんな動きは、久しぶりだとさえ思ってしまう。


「こっから何が起こるか楽しみだな」


 さっきまでの暗かった気配が嘘みたいだ。自信に溢れ、一直線に走っていけることなんて、ないかもしれない。

 それでも俺は走っていく、自分の目標を叶えるために。


「何か面白いことはないかしら? 私の双剣も魔物を待ち望んでいるだけど」


 そんな言葉に反応するかの如く、アイアンスパイダーが現れる。

 魔法で糸を生成させ、それを鋭い速さで撃ってくる。


「そんなの、私には当たらないわよ」


 それを証明するかのように、タイミングよく避けていく。それに、コイツが何をしでかそうとしているのかわかった気がした。


「相手が魔法使いじゃなければ、いい勝負になったんだろうね」


 男性のフェクトに戻るや否や、魔弾で地面に引っ付いている糸を全て破壊する。

 何をしようかバレて怒っているのか、魔弾を放つアイアンスパイダー。だが、そんなことをしてももう遅かった。


「双剣使いの前で、そんなに近づくなんて自殺行為でしかないんだよ」


 私は、アイアンスパイダーを全て狩っていく。私の動きに慣れてきた魔物も居たようだが、それでも私には関係ない。


「私を止めたければ、もっと強い魔物が必要だよ! なんなら今現れても私は一向に構わないんだよ!」


 その言葉は現実になる。先ほどまでのアイアンスパイダーを一瞬にして絶命させる魔物。

 魔族、魔神ではないことぐらいわかっているが、それでも本当に魔物や魔族なんかではないかと思うほどの、強さを誇っているのを感じる。


「あれって、ベアーで間違いないよね」


 冬眠から覚めたのか、どことなく機嫌が悪いのがわかる。それも単にお腹を空かせているとかではない。

 先ほどの声が、彼をどうや招いたようだ。


「すごい殺気……全身全霊で挑んでくる相手を私が拒むと思ってる?」


 その言葉を証明するの如く、双剣はベアーキングの体に斬撃を与える。

 だが、そんな怪我では彼は止まらなかった。それに何より、血で興奮しているのさえ伝わってくる。


「楽に死なせてあげる、私ができる最善策」


 私とベアーキングとの戦いが幕を落とされたのであった。

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