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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-9章 剣聖は詠唱を唱えて戦いたい

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457話 第二回辻斬り騒動


 投稿忘れてました、申し訳ございませんでした!


 冬が本格的になってきた今日(こんにち)。そんな中、私たちは王都の門を潜るのである。

 王都の中は、冬だというのに人通りが絶えない。私たちはその雑踏を縫うようにして、大通りを進んでいった。


「ここはいつ来ても多いよな」

「そうだね、もう少し少なくても良いんだけど」


 口からこぼれ落ちた言葉は本音だった。それだけ、私自身この状況を良くは思っていないという裏付けでもあった。

 そうして自宅を目指していると、家の前に人が集まってきている。一体何事だとすぐに考えるが、私たちには何も見当がつかなかった。


「あ! 剣聖少女様……今少し、質問よろしいでしょうか?」


 一人の男性記者らしき人を筆頭に、その後ろから報道陣を引き連れてこちらへ向かってきている。

 人が一斉にこちらへ向かってくる光景は、どことなく怖かった。


「一旦引くニャー、ここで捕まっても厄介なことになっても対処できなくなるニャー」


 ナズナに腕を引っ張られるがままに、私は報道陣から逃げた。

 だがここは王都であり、私の自宅がある場所だ。ここで逃げ惑っていたら、私たちは一生家には入られなくなる。


「ナズナ少し待って! ここで話を聞かないと後々めんどくさいに巻き込まれるかもよ」


 私はナズナが言った言葉とは、正反対な回答を示す。ナズナは、少しばかり怪訝な顔で私を見るが、私は腕を引き離した。


「なんでよ! ここは逃げるが一択じゃん。ここで何を聞かれてもわたしたちにはどうせ答えられないのに!」


 確かにナズナの言う通りかもしれない。逃げるのは簡単だ。けれど、剣聖としてここで背を向けたら、私はその肩書きを自分で否定することになる気がした。


「質問はなんですか? 答えられる質問には答えます、それ以外の質問は無回答ということでお願いします」


 追いついた記者に向かって私は頭を下げた。最初、記者たちは少しばかり驚きを見せていたが、最初に掛けてきた男性記者が質問を切り出す。


「現在、王都では第二の辻斬り騒動が起きています。それについてコメントをよろしいでしょうか?」

「申し訳ありません、その事件のことを今知ったのですが大まかな情報を教えてはもらえないでしょうか?」


 質問を質問で返してしまったが、今はそれを悔やむ時間ではない。

 第二の辻斬り騒動……最初の事件から相当な時間が経っているし、同一犯の犯行ではないと考えるのが妥当だろう。

 それにこの時期にわざわざピンポイントでしたなら、ここに私が冬の間滞在することを知っているというのもポイントとして挙げられるだろう。

 それに、辻斬りを起こすことが起きているのならイデリアも操作にあたっているはずだ。


「連続事件であり被害数は五件です。犯行は全て深夜から明け方に掛けて行われて、そのほとんどが鋭利な凶器で斬られたことが原因で死亡しています」

「イデリアや王都の冒険者たちは? おそらくだけど対策には乗り出しているはずよね」

「もちろんです。ただ、彼らの包囲網を掻い潜って犯行を行っているようでして」


 イデリアの気配感知を掻い潜るとなると、相当な手だれとなる。


「おそらくだけど、うちの守獣たちも参加しているよね」

「はい。ただ、犯人に辿り着く前に犯人が転移で消えてしまうみたいで」


 守獣たちでも捕まえられないとなると、本当に手だれだこれは厄介な案件になる。

 それにしても剣聖が帰ってとなると、避けに犯人を刺激してしまう可能性も高い。


「とりあえずですね、仲間やイデリアなどの人たちと連携して動きますので、これ以上は……ちょっと」


 そうして彼らは足早に消えていく。私たちはそれを横目で確認しつつ、自宅の扉まで歩いていく。

 ドタトタと聞こえてくる音が、家に帰ってきたなと思わせてくれた。

 そうして扉が開き、ガードが出てきた。


「三人ともおかえり! 王都は今、大変なことに巻き込まれてんだよね」

「さっき聞いた。まさかの辻斬り騒動でしょ、他のみんなの気配はないけど」


 ガードは少しばかり申し訳なさそうな顔をする。それがどんな意味を要するのか簡単に想像することができる。

 そうして私たちはとりあえず、荷物を置いてリンビングに集まったのだ。


「今回の一件ってどんな感じなの? アイツらが逃げられるって、ナズナが扱きすぎたとかない?」

「それはない! それに彼らは今、一人で全ての掃除をこなせるし、冒険者としても活躍を続けてます」


 そうだったんだ……そんな感想が頭に浮かぶ。できる限り、ガードに近況報告はしていたが、他のみんなのことを蔑ろにしていた節があるのを思い出す。


「そんな湿っぽい顔をしないで! 本題に戻ると、一件目に殺害されたのは王都で勤務している会社員の男性」

「会社員の男性? そんな人を殺したの……もっと権力がある人とかじゃなくて?」

「今回の辻斬りは、誰でも良いから襲いたいといった感情が感じられますから」


 まさかの無差別系。これはある意味想定外であった。こういった状況で狙われるのは、どちかと言えば権力保持者だ。

 そっちの方がどう考えても新聞も大々的に報道することになる。

 それに他の各方面にもこれは伝わるし、より一層事件を強く印象付けさせてくれる。


「他の四件は?」

「二件目は三十代後半の自営業を営む社長、三件目は魔法界所属の魔術師、四件目は銀の冒険者、五件目は魔法界所属の結界術師です」


 誰彼構わず狙っているのがわかる。おそらく魔法界の二人も夜中に出歩いていた所を襲われたと思って良いだろう。

 ただ銀の冒険者が負けるというのは、ギルド信用を落とすきっかけになってしまうかもだ。

 理由は簡単だ、冒険者は他の四人に比べて徹底的に違うから。

 冒険者は常に武器を持ち歩いており、そういったことになった際、応戦は必ずするからだ。

 それでいて返り討ちにしたのなら、ギルドとしても大変キツい状況になる。魔法界所属の魔術師はどちらかといえば、非戦闘員のイメージが強い。

 それを考えたら、あの二つのグループが動くのも無理はない。そうして私たちは、王都辻斬り騒動に足を踏み入れたのであった。

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