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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-1章 剣聖少女前日譚と旅の始まり

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37話 剣聖少女は、使い魔とパンを食べて街を堪能しています


 門で、手続きをしていた時から気になっていることがあった。それは、とてつもなくパンの香りがしていたことだ。

 フェクトの方を見ると、よだれを必死に抑えているのがわかる。魔神の心を、完璧に鷲掴みしていた。


「フェクト、パンでも食べる?」

「いいのか、あそこから食べようぜ!」


 フェクトは、とても嬉しそうだ。パンに目を輝かせ、今にも、魔法をぶちかましそうな勢いだ。


「アリア、早く来いよ! めっちゃ美味しそうだぞ」

「今すぐ行くから、そんな興奮しないの」


 この光景は、側からみたらどのような風に見えているのだろうか。

 私はそんなことを、ふと考えたがそんなことはすぐに忘れた。フェクトが、こんなにも楽しそうにしているのだから無粋のことを考えるのは辞めよう、そう思ったのだ。


「フェクト、どれにするか決まった?」


 フェクトは、あまりにも集中して選んでいる。どうやら私の声が、届いていないみたいだ。

 それを見ていた、露店のおばささんが何かを準備している。

 私は、パンを見つつおばさんの行動も観察していた。


「えーと、このくるみパンが欲しいんだけどいいか?」

「それだけでいいの? 他に何か買っておくものはない?」

「それじゃ、この甘そうなパンも」


 フェクトが指を指したのは、ミーテルパンである。パンの中にミーテルがぎっしり詰まっており、老若男女問わずとても人気の高いパンなのだ。


「それじゃ、ミーテルパンとくるみパンを二つください」

「そこのお兄さんは、どれも吟味してくれたし、おばちゃんおまけしておくわ」

「ありがとうございます、また機会があれば来ます」


 そう言って、露店を後にした。フェクトは、ジッと袋の中身を見ている。


「どっちから食べる?」

「そうだな、ちょっと待ってくれ……まずはくるみパンから食べようかな」


 私は、角底袋(かくぞこぶくろ)からくるみパンを二つ取り出し、他はボックスの中にしまった。


「そこにベンチがあるからそこで食べようか」

「あ〜早く食べたい」


 そう言って、すぐにベンチに移動するあたり、本当に早く食べたかったのがわかる。

 座って即、パンにかぶりついた。その表情は、魔神が出していい表情なのかと、ツッコミを入れたくなるぐらいな、幸せそうな表情をしていた。

 周りにいた人たちも、その光景を見てかパン屋の方に向かって行っているほどだ。


「アリア、めっちゃうめぇぞ!」

「それは、よかったわね」


 フェルトの横に座ってパンをちぎって食べる。フェクトが言うように、とてもおいしかった。


「よし行くか!」

「え、どこに行くんだよ?」


 フェクトは、不思議そうな表情でこちらを見てくる。


「どこ行くんだよって、今日から泊まる宿を探さないと」


 なるほど! という表情をして探し始めたのだ。

 案外、すぐに見つかってくれて安心したのも束の間、宿を出ると、いつもの新聞社が号外を配っている。

 私は、嫌な予感が瞬時によぎったが、頭を横に振る。

 

「号外だよ! 号外」


 フェクトが地面に落ちていた、新聞を拾い上げる。大きく見出しの書かれた方を、まじまじと見ている。


「おいこれ見てみろよ、俺らおもろいことなっているぞ」


 フェクトがニヤケ顔でこちらに、新聞を渡してくる。

 それを嫌そうに受け取る私。もう。何が書いてるか容易に想像がつく。

 私は、案の定予想は完璧に当たる。


『剣聖少女! 横の男性はお付き合いされている方か!?』


 こんな見出しを書かれ、私も黙っているわけにもいかなかった。


「おい、そこの新聞屋、ちょっとここの代表にあわせろ」


 先ほどまで、意気揚々と新聞を配っていた男は、顔が青ざめていく。

 今にも気絶しそうな勢いを、必死にこらえている。


「――た、た、はい、仰せの通りに」


 新聞社の支部は、浮かれ気分だったのが一瞬のうちにして地獄に変わる。

 ガチギレした私、それを横で笑っているフェクトが来訪したのだ。


「――こ、これはこれは、剣聖少女様。今日はどういったご用件でしょうか?」

「はぁ!? わからないの、今すぐ潰してもいいんだぞ」

「大変申し訳ございませんでした、すぐに取り消しますので、どうか穏便に済ませてはいただけないでしょうか?」


 それで気が休まるわけもない。


「何言っての? お前が頼める立場じゃねぇんだよ」


 そんな時だった。玄関の扉が開く。


「まぁまぁ、落ち着いてください。剣聖様」


 現れたのは、ギルマスだった。


「ギルマス……なんのようだ」

「ここを潰しに来ました、最近悪酔いし過ぎていると思いましたね、この支部を潰すことを王都の本社と話をつけてきました」


 支部長は、完全に別の生物のような顔になっていた。他の社員もこれからのことで、完全に終わったような表情になっていた。


「だって、あなたが連れているのは使い魔ですからね」


 正直、ビクッとした。このギルマス、全然強そうには見えないのに、なんていう観察眼を持ってるの。


「やはり驚かれますか。私はこれでも、この世界で最も長くギルマスをしていますから」


 それで、身についたっていうのか。


「――そうなのですか、すごいお方とは知らずに申し訳ない」

「ここには、二、三日で退散した方がいい、魔法界のお偉いさんが来たがっているみたいだからな」

「わかりました、ありがとうございます」


 そう言って私は、支部を後にしたのだ。

……

 そして後日談にはなるが、支部に居た社員たちは全員本社で激務をさせられることとなり、誤解を招いたことに対する謝罪、私たちに対する謝罪が大きく掲載されていた。

 そして、支部は一度無くなっていたがクリーンな報道をする社を目指すために、新しく人が入れ替えられ、始まったと新聞には、書いていた。


……

 話は、家族や師匠からの誤解を解いた後まで戻る。


「なぁ、魔法界のお偉いさんってエルフだろ?」

「それが違うんだよ、私と同い年の人間だよ」


 それを聞いたフェクトは、紅茶を吹き出していた。


「エルフより強いってやばいだろ、絶対俺は殺されるじゃん」

「まぁ、私がいるから大丈夫だよ」


 それより、私にヘイトが剥きそうで怖いんだよな。フェクトに会うちょっと前、旅をしている途中に村に立ち寄った際、見た新聞にヤバめな記事が載ってた。

 イデリアが、マメシアと戦闘を繰り広げたという話だった。

 

「イデリアって言うんだけどね、そいつが私と交流があった人たちに迷惑をかけてんだよね」

「マジか……それ大丈夫だったの?」

「大丈夫だったみたいだけど、相当苦労したと報道されてたよ。王都で会った時は一度組み手をしようと思ってるんだ」


 その顔は、笑ってはいるものの目は全く笑っていなかったという。


 補足

 フェクトは、人間の個体を真似ているため、国に張ってある結界は普通に問題ない。


 お知らせ(時期未定)

 一章が終わりましたら、間章話として剣聖の過去、出会った人たちのその後、イデリアがマメシアたちと戦う話の投稿予定です。

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