393話 新しい強さ
ナズナが帰ってきた。服がボロボロになっている、何も自分からは話そうとしないが、何かあったのは明白だった。
それでもフェクトと私は、自分から話出さない限り、聞くことはなかった。
そして、私は気付いたことがある。ナズナは、明らかに変化していた。
なんと言葉で示せばいいかわからないが、感じ取れてし舞う。
「とりあえずナズナも帰ってきたことだし、ご飯を食べようか」
「そうだな。一日中寝てたとはいえ、お腹は空いた」
「わたしも話たいこともあるし、早くご飯を食べたい!」
私は簡単に調理を済ませ、料理を提供した。そして、ナズナは食べ始めると同時に、今日あったことを話してくれた。
それは、まるで私の中に存在しているマインと似たようなものを感じた。
「それでどれぐらい、強くなったんだよ? 気になるよな、アリア」
「それは確かにそうだけど、今から組み手なんてしないでよね」
フェクトは「バレた」と、言いたげな表情で私の顔を見る。
そしてナズナもうずうずしていたのが、すぐに収まった。
「明日の予定なんだけど、とりあえずこのまま進む方向で行こうと思う」
「俺もそれには賛成だ。それに今日はゆっくりしたから、その分何かあってくれた方が、俺からしたらありがたいんだけどな」
「わたしも問題なし!」
翌日。私たちはいつものようにほうきに乗って空の旅をしていた。
そして、それからいくつもの日を跨ぎ、フェクトが期待したことが実際に起こっている状況に、私たちは出くわしたのだ。
「おいあれを見てみろよ! 村が魔物に襲われてるぞ」
優雅に飛んでいたのが一変、一瞬にして緊張感が増す。鼓動が早くなっていくのを感じる。
それになんだか、妙な気配が魔物の中に紛れ込んでいた。
「二人とも一気に降下する。それに、これはどうやら人為的に起こされたみたいだ」
ほうきを全速力で降下させ、私たちはド派手な登場で村の前に降り立った。
「我が名はアリア! 剣聖の称号を持つ冒険者として活動しているわ」
「我が名はフェクト、双剣使いにして魔神。魔物ごときが村を襲うか、我が前でやるなんて自殺行為であるぞ」
「せっかくの見せ場、ナズナが全てを懲らしめてやるニャー」
ナズナは自己紹介を言い終えると同時に、新たな覚醒をその場で解放してみせた。
圧倒的な存在感を放ち、思わずニヤけてしまいそうだ。
「こっからは、わたしが相手をしてやるニャー」
その言葉通り、ナズナ単騎で突撃死多大なるダメージが魔物たちには及んでいた。
それに伴い、逃げようとする存在すら、ナズナの前では無理な話なのだ。
全てを破壊していくかのような一撃は、新たなナズナとして、文句のつけようのない出来である。
「相当強くなってるね、アリアが飛び出さなくて良かったよ」
「いや私、そこまで戦闘狂じゃないから!」
慌ててツッコミをするが、フェクトには鼻で笑われる始末。
「聖なる刃」
「インフェルノ」
「サイクロン」
どさくさに紛れて飛んでくる魔法。それは全てナズナに向けられて放たれていた。
「いや、君たちの相手はこの私たちだから、ナズナに手を出すなんて許さないわよ」
「もっと威力をあげなよ、こんなの赤ちゃんみたいなレベルよ」
渾身の一撃とも呼べそうな一撃たちは、私たちの前では全てが無意味だ。
それになぜだろうか、魔法使いたちは顔が青ざめている。すでに魔力が尽きているようにすら見える。
「どうしたの? もう魔力切れとか言わないわよね、そんなちっぽけな魔法なのだから、まだあるわよね」
「ねぇ早く出しなさいよ、もったいぶらないでさ」
より顔が青ざめていく魔法使いたち。それは、魔物を操っていたと決定付ける証拠である。
私たちはそれでも可愛くおねだりするかのように言う。
「何をもったいぶっての? 命を燃やせばいくらでも捻出されるでしょ、魔力って」
「ぁぁぁぁぁっ!!」
放たれた魔弾は、最高な命の輝きを放っていた。私はそんな輝きに心の昂りを感じている。
私はそんな魔弾を一瞬にして消し炭にしてしまう。
「いい魔法だったと思うよ、でも私にはもっと強い魔法ではないと無理だね」
そのまま私は、魔法使いたちを拘束するのだった。そして、その頃にはナズナは魔物を消滅させていた。
「とりあえずこいつらを尋問するわよ」
そんな時、村人たちが村内から慌てた様子で出てきた。
「剣聖様、今回は助けていただきありがとうございます。この村を乗っ取ろうとする存在でしたから」
「そうなんですか、でもこの村ってそんなに重要な場所なんですか?」
「いや特にはそんなことはないと思うですけど、なぜか魔法使いたちが襲いに来てたですよ」
村長と思われる男は、なんとも不思議そうな顔でこちらを見てくる。
私はフェクトに目線を送る。そして、それに応えるかのように、フェクトは天高く飛び上がる。
「わかったわ! ここが狙われるわけやっぱりあるわ」
村人たちは、ざわめきを立てていた。それほどまでにここは、辺鄙の場所である。そうなるのも無理はないだろう。
「詳しく教えてくれる?」
「ここは魔力が多い。それにここを抑えれば、周辺の国々に魔力の総量を減らすことができるわ」
「ダークウィッチーズが関与してる感じ?」
「いや違うね。コイツらはどこぞの国に雇われた魔法使いだ」
なんらかのいちゃもんをつけて、お金でも騙し取ろうとしたのだろう。
だが、それは中々上手く行かずこんな無茶なことをやらかしたのだろう。
「それにしても怪我がなくて良かったわ。とりあえずコイツに関しては、魔法界にしっかり調べてもらいますから」
「あ、ありがとうございます」
そうして私は、イデリアにこのことを報告すると「後で行くよ」と言っていた。
そして私たちはとりあえず、捕縛者を連れて村の中に入る。
未だに気絶しているため話を聞くことはできない。それだけ、魔力切れが強い力を持っているということだ。
私たちは、起きるまでの間、ゆっくりと村で過ごすのであった。




