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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-9章 剣聖は詠唱を唱えて戦いたい

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382話 探し


 人々が血眼になって探している。誰よりも早く、領主を見つけるために奔走している。

 溜まった鬱憤をぶち撒くように怒鳴り声のような声で、叫ぶ声が各地から聞こえてきた。

 それは一度始まると、次の人はそれより大きな声で名前を叫んでいた。

 まるで、既に崩壊を果たした国と言い表しても問題ないほどに荒れていた。


「こんな状況で見つかれば、間違いなくリンチになるでしょうね」

「でも、それでも見つからないって一体何処に隠れてるんだ?」

「誰かに匿ってもらってるとかない? 一様領主なんだし、友達ぐらいいるでしょ」


 ナズナの意見は、納得できる要素があった。ここまで大規模に捜索されているのに見つかっていない。

 匿っている、それはあながち間違っていないのかもしれない。


「こっからは別れて探そう。もし先に見つかってしまった場合、すぐに転移させてフレリアの所に戻って」

「了解!!」


 二人の気持ちがこもった声が耳に伝わってくる。そして私たちは別れたのであった。

 フェクトは空から、ナズナは地上からくまなく探して行き始めた。

 私は二人が向かわなかった東側と南側を探していく。ほうきを降り、私も地上から探す。


「領主様、居たら返事をしてください! 剣聖です、どこか居ませんか?」


 だが返事など、帰ってくることはない。響き渡る声に遮られ、私の声は届かない。

 私は、一軒ずつ扉をガンガンと叩き、住人が居ないかと探す。

 私が降りた住宅地では、誰も居なかった。少しばかり焦っていたことで、抜け落ちていたことがあるのを思い出す。


「バカだ私……なんで気配感知を使わなかったんだろう」


 息を落ち着かせ、私は気配感知を発動させた。辺り一帯、誰一人気配は感じられない。

 それがわかると、私は屋根に飛び乗り駆け出していく。気配感知を発動させたまま、家に気配がないかと探していった。


「早めに見つけないと……」


 焦る気持ちがだんだんと私を蝕んでいく。そんなことが重なれば集中力が削がれていく。

 それにより、気配感知の精度も落ちていく。落ち着かせようと思っても、それを妨害するかのように、住民たちの声が邪魔をしてくる。


「クソっ!」


 思わず飛び出してくる暴言。でも、そんな声もまた住民たちの叫び声の前では無意味と化すのだ。

 そんな時だった。気配感知に違和感を覚えたのは。それは、家でいる数がまばらに感じられた時だ。

 そのうちの一軒家。そこそこ新築な家の中から、他より多く気配を感じる。

 初めは、二世帯家族とかだと思っていた。それにしては、やけに気配が大きい。

 成人男性の気配が二人。成人女性の気配が二人。子供の気配が多数感じられた。

 まるで、何かを隠しているかのように、その家だけ結界術師がより強力に掛けたと思われる結界が張ってあった。


「もしかしてあの家?」


 確信などは何もなかった。ここでこれを見逃せば、最悪な結果を生み出すかもしれない。

 そう思った時には、私の体はとうに動き出していた。他の住人に気が付かれないように、私は素早く近づいていく。

 息を殺し、誰にも気が付かれないように進んでいく。その結果、私は誰にも気が付かれずその家に到着した。

 周りを見て、誰も居ないかを確認する。そして私は、ドアを叩いた。


「私は剣聖アリアです! もしかしてそこに、領主様はいらっしゃいますか?」


 居てほしい。それが正直な気持ちだった。こんなことを早く終わらせたかった。

 そんなことを考えていると、ゆっくりと扉が開く。


「なぜ……わかったのですか?」


 そう一言、出てきた女性が私に向けて言った。少しばかり、怯えた声。

 そんな声を優しく包み込むかのように、私は声を発する。


「気配感知でもしかたらここかなって思いました。中に入れてはくれませんか?」


 少しばかり考えたのち、彼女は私を家の中に手招きする。そして私は領主様と対面を果たすのである。


(見つけた)


「初めまして領主様。私は剣聖の称号を持つ冒険者アリアと言います」


 全てを観念したかのような顔で、彼はこちらを見る。そこから少しばかりの静寂とした時間が流れていく。

 そして、その時は遂にやってくる。重たい口を開き、覚悟を決めたと感じとっていい声で名乗り始めた。


「この国で領主をしています、べザルです。さぁ、早く私を連れて行って下さい」


 一切の抵抗を見せず、まっすぐ私の目を見て話す領主。横に居た奥さんと思われる女性、その子供は泣いていた。


「迷惑を掛けてしまったな。数日間、本当に世話になった」


 そんな言葉を、この家主たちに言う。夫の方は、ナニカを言いたげな表情をしていたが、グッと堪えている。

 それを見た領主は「それでいい」と言わんばかりな表情をしていた。


「それじゃあ行きましょうか。魔法界もあなたが来るのを待っていますから」


 そして私たちは転移した。領主は転移するなり、フレリアの方を見た。


「さぁ、なんでも罰を言ってくれ。もう覚悟はできている」


 私は彼のそんな姿を見て思ったことがある。それは、ここ数日間に及ぶ逃走は、この決心を付けるためだったのものだと。


「勝手に決めないで。今回の一件、本当ならすぐにでも国外追放ものでしょう。ですが、あなたにはやってもらわなきゃいけないことがある!」

「やってほしいこと? それは一体……?」

「それを今から言う。この国の領主として、この国を再建させてみよ」


 イデリアでも同じことを言っただろう。自分が招いた結果を改めて正してほしいと言ったところか。


「お金に関しては、ほとんど手を付けていないであろう? それをちゃんと使うべき所に使え」

「それが終わったら?」

「もちろん、この国から退去してもらう。ただ、他の国々の出入りは今まで通りできるけどね」


 寛大な措置と言える。それはおそらく、住民たちからは認められないことだろう。

 それでも、フレリアはそれを決断した。今後、この国がどうなるのか、私は楽しみになるのであった。

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