34話 冷たい目
ダンジョンが見える場所まで着いた。ダンジョンの外観は、遺跡のような場所である。
「えーと、ここは地下五階層まであるみたい」
「中の構造は、だいぶ複雑そうに生成されているみたいだし厄介だな」
そんなことを言っているフェクトだが、満更でもなさそうな顔である。
そんな私も、ダンジョン攻略は楽しみで仕方ないのだ。
「じゃあ行くわよ」
そうして、ダンジョンに入っていくのであった。
中は、探索済みと思われるような荒れた感じになっている。ライトでダンジョン内を明るくする。最初は、暗くて見えなかった場所は、冒険者の戦利品の落とし物なんかもある。
「相当慌てて逃げたんだろうな」
フェクトは、周囲を見るなり状況を見て判断していく。気配感知には、魔物の気配も他のダンジョンに比べて多いと思う。
「ダンジョン探索を最近誰も来てないな、そのせいで魔物の量が増えすぎてる」
「やっぱりそうなんだ、なんかやけに多いなって思ってたんだよね」
「あ、そういえば言うの忘れてたが、ダンジョン内の魔物は、俺を見ても関係なく襲ってくるからな」
「了解」
ダンジョンで生成された魔物とダンジョン外の魔物では、構造からして違うので当たり前か。
そんなことを話していると、ゴブリンの群がこちらに勢いよく向かってきていた。
フェクトは、その勢いを上回るスピードで蹴散らしていた。
「うわー、ゴブリンキングまで居たんだ」
ゴブリンキングは、フェクトが最初突っ込んだ際に、真っ先にやられたみたいだ。
何もできなかったようだ。
「魔石は回収してよ」
魔石を回収しつつ、先に進んでいく。先ほどよりは、だいぶ広い場所に出てきた。
私が辺りを照らしたら、種類の豊富な魔物がお出迎えをしてくれていたのだ。
「いっぱいいるね!」
「楽しそうだな」
「君こそ」
私は剣を取り出し、襲いかかってくる魔物を薙ぎ払う。
その横では、フェクトが力任せな勢いで魔物を蹴散らしていた。
そんな勢いに負けず劣らず攻めてはくるものの、ゴブリンやコボルト、スケルトンなどの魔物では一切の抵抗虚しく、魔石に変わっていく。
「大量だね、これでまたお金増える」
「こんな奴ら倒しても、微々たるものだろ」
「それでもいいのよ、増えるだから」
余裕な表情で、しかも会話しながら魔物を蹂躙する姿は、魔物たちからすると、地獄以外の言葉では言い表せなかっただろう。
そんなことには気にも止めず、剣を振るったのである。
戦闘が終わる頃には、地面のあちこちに魔石が落ちている。それだけ、多くの魔物がいたことがわかったのだ。
「まだ序盤だって言うのに、だいぶ溢れてたんだな」
「この騒ぎは、もうこのフロアには伝わっていると思うから、ここに攻めてくるかもね」
私からしてみたら、そちらの方がありがたいのである。そっちの方が、探索が楽にできるからだ。
そうして、マップで場所を確認する。
まだ、このフロアではここのような、大きな場所がいくつかあるようだ。
そして、そのような場所から溢れ出てきた魔物たちが、ここに向かってきているのがわかる。
「フェクト、魔法を使っていいからね!」
「それは、ありがたい!」
一気にフェクトの魔力量が跳ね上がる。先ほどとは、比べ物にならないものだ。
フェクトは、得意げな表情を浮かべ指を鳴らす。次の瞬間、フェクトが三体現れたのだ。
「分身魔法か、全員が違う動きしているじゃん」
「向かってきてる奴らは、俺に任せろ」
そうして、私たちが入ってきた場所を除く三カ所から、魔物が溢れ出てきたのだ。
「黒砲」
「バレットガン」
「黒炎・バースト」
ダンジョン内が、大きく揺れる。一瞬、ダンジョンの結界が見えた。ダンジョンは、外部からの攻撃を防ぐために、結界を張っているのだ。
自身にダメージが陥らないように相当頑丈である。
それでもフェクトには、言わなければならないことがある。
「やりすぎだよ、魔石が溶けてんじゃん」
「調子に乗りすぎました、ごめんなさい」
感知を見る限り、向こう側で待機していた魔物にも大きな被害があったようだ。
魔物たちは、混乱している様子なのが、反応を見るなりわかる。
「とりあえず、正解の道を進んでいくだろ?」
「当たり前でしょ、私たちはあくまで魔族の討伐目的なんだから」
正解である、中央の道を進んでいく。そうして、混乱していた魔物たちを狩りつつ、ボス部屋の前までたどり着いたのだ。
そして、ボス部屋の扉を開けると、そこには誰も居なかった。正確には、気配が全く感じ取れなかったのだ。
「隠密系の魔物かな?」
「いや違うな、魔族の方だ」
フェクトは、余裕そうな表情で言っているが、少し身構えていた。
「だいぶ広いし、装飾も豪華だね」
「あぁ、ほんと緊張感の欠片もねぇな」
フェクトは、小言をいうがそんなことは気にしない。
なぜなら、魔族から現れてくれたからだ。
「そこにいるのは、わかってるよ」
私の声が、部屋の中に響きわたる。フェクトも気づいたのか、殺気が感じられた。
「せっかく、ダンジョンで遊んでたのになんであなたがいるのですか」
柱の後ろから、スッと出てきたのはどこにでもおりそうな魔族だった。
猫背だが背は、だいたい百七十程度であろう。よく殺し屋なんかが使っている、ナイフを構えている。
「え、知り合いだったの?」
「知るわけねぇだろ」
魔族は、少し小刻みに震えていた。最初は、武者ぶるいとも思ったがみた感じ違う。
目の前にいる私やフェクトに、怯えている。
最初は、強気にだして行こうかとも思ったのだろう。それが最後の方は、声が震えていた。
「あんた、冒険者殺してるだろ。殺してなかったら、見逃していたんかもな」
「――ッ! 嘘をつけ! お前の剣からは、同族の匂いが染み付いてやがる」
声が震えて、所々裏返った声で言ってくる。
「遺言は、それでいい? どうせあと二つのボス部屋にもいるのはわかってるんだしさ」
「俺は、魔族だ! お前ごときに、俺は……」
……
首が飛んだ、言い終わる前だった。
「――はい、おしまい」
主人の、ゴミを見るような冷たい目つき。それが最期に彼が見た光景だろう。
俺は、そんな目をしたし主人になんて声をかけたらいいかわからない。
ただ、それでも一言俺は言うんだ。
「アリア、お疲れ様」
すぐに、冷たい目は元に戻る。
そして、解体ツノを取り終えると第二階層に向かうのであった。




