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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-9章 剣聖は詠唱を唱えて戦いたい

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371話 新たな武器はトラウマもの


 ダイナール大陸、王都の周辺にも冬がやって来た。冷たい風が体に当たる。

 体の温度を瞬く間に奪い取っていた。いくら準備運動をした所で、まるで暖かくなりやしない。

 体の感覚は、どんどん鈍くなっていく。それでも、私の心だけは熱せられ熱かった。


「ガードと戦えるなんて嬉しいよ。せっかくなんだし、お互いに手加減は無しだからね!」


 ガードにそう言うが、言葉が返ってくることはない。他者を寄せ付けないような集中力。それほどまでにガードは真剣な表情をしていた。


「フェクト! 試合の合図は任せた」


 木剣を構え、ガードを見つめる。ガードもまたこちらを見つめていた。


「組み手開始!」


 フェクトの声が平原に響く。それは風に乗って王都にまで届きそうな声の大きさだった。

 だがそれとは裏腹に、こちらは静寂の時が流れている。両者共々動かず、ただジッと見つめ合う。

 それがなんとも長く感じる。まるで止まった世界にいるかのような感覚。

 それだけ、静かだった。


「お覚悟」


 ガードの言葉共に踏み出す一歩。次の瞬間、ガードはすでにこちらの間合いに入っていた。


「一撃で終わらす、眠拳」

「物理的に眠らせるつもり? その程度で倒せると思うな!」


 拳と木剣がぶつかる。その衝撃は、結界を震わせている。


「手加減なんてしたら、あなたの存在を抹消するからね」


 ガードの顔は、少しばかり機嫌が悪そうだ。それだけ今の一言は、ガードにとって嫌な言葉だったのだろう。


「たった一撃……ぶつかったぐらいで、そんなことを言うなんて思ってなかったわ」


 少しばかり笑みを浮かべているような顔だが、目は全く笑っていない。

 それを証明するかのような拳が打ち出される。


「私は剣聖よ。その程度の拳、フェクトを見習った方が良いわよ」


 軽く弾き、カウンターを決める。そのまま連撃を繰り出し、地面に叩きつけた。


「――ガハッ! 一瞬の過ちで、ここまで攻め込まれるなんて」

「何寝ぼけたことを言ってるのガード? 私と組み手をするって、こういうことになる覚悟があるって意味よ」


 圧倒的な強者の雰囲気を醸し出す私。それに対して、先ほどの威勢は消えさり、地面に這いつくばるガードの姿がそこにはあった。


「早く立ち上がってよ。まだ武器を隠しているのでしょ?」


 また、ガードは嫌な顔をする。私を敵意を向けるような目が、私に突き刺さる。


「なんでアリアがそのことを知っているのかは知らないけど、こっからは反撃させてもらうわよ」

「望むところよ、早く立ち上がって!」


 ガードは立ち上がると、すぐさま後ろのに飛んだ。その際、右手には、とある武器を装備させる。

 細長い黒色の鞭。それが現れた瞬間だろうか、見に来ていたトータトンが身震いをする。


「魔物にトラウマ植え付けてるなんて、どんなことをやったのよ」

「必要なことをやったまでよ。こっからは、剣聖アリアの好きにはさせないわ!」


 勢いよく鞭を繰り出してくる。リーチが単純に伸びたため、戦い方がガラリと変化していく。


「逃げられると思わないで! 私の鞭は決して逃さないわよ」


 パチン、パチンと地面に当たる。その音だけで、痛いとわかるほどだ。近づこうにも、地面に当てた鞭を自由自在に近づかせないようにしている。

 至近距離に近づかないと私にとっては、厄介な相手だと言える。


「魔法も駆使して随分と馴染んでる。天性の持ち物なんていっても良いほどだね」


 ガードは、少しばかり褒められて嬉しいのか、頬が少しばかり緩んでいる。

 だが、鞭の威力は先ほどより増していた。


……


 先ほどに比べて、アリアが攻めづらくなっているのを感じている。

 それをアリア自身も気が付いているだろうが、どうすることもできないのか、あまり動こうとはしなかった。


「トータトン、お前はどうやってこれを突破するんだ?」


 不意に質問を振られ、目を見開いてこちらを見てくる。唾をグッと飲み込み、少しばかり考え始めている。


「盾で守りながらですかね。それでも、衝撃も痛みも凄まじいので、だいぶ必死になりますけど」

「俺だったら正面突破を狙うかな。少しでも早く、自分の技を叩き込む」

「魔法での攻撃は考えないんですか?」

「おそらく弾かれて終わりだろうな。あそこまで自由自在に操ってる時点で、ぶつけるのは難しい」


 そんな話をしていても、アリアは突破口を見出せずにいた。アリアからしてみれば、厄介この上ない感じなのであろう。

 だからこそ、どう攻めれば良いのか足踏みをしている感じだ。


「アリア怖がるな。なんでもいいから行動を起こせ!」


……


 フェクトからの野次が聞こえる。そうしたいというのがわかっているのに、なんとも腹立たしい限りである。


「アリアどうしたの? 避けてばっかじゃ、私にやられちゃうよ」


 おそらく体力勝負にも持ち込んだ所で、ガードは休めることはないだろう。

 あの家を掃除、買い物、料理、そんなことをしていれば、嫌というほど体力が付く。


「一気に突っ込むか!」


 私は満面の笑みで宣言をする。そんなことをしたばっかりに、ここにいた全員の顔に疑問の顔が浮かぶ。


「何を言ってるわけ? こんな状況だからって頭がおかしくなりました?」

「それはどうかな」


 勢いよく振る鞭を軽々に避けつつ、どんどんと詰めていく。それに伴って、ナズナは大きく後に下がるがもう遅い。


「わざわざ弾いた? まさか剣技!?」

「御名答! ソード・インパクト」


 最後は鞭を足で踏みつけ、そのまま体にぶち当てたのであてられる。

 吹き飛ぶ瞬間足を退かし、そのまま吹き飛ばされ勢いよく地面に叩きつけられたのであった。


「勝負そこまで! 勝者アリア!」


 フェクトの声が平原に響き渡る。そうして、組み手は決着がついたのであった。


「よっしゃー! 私の勝ち、やっぱり鞭をよく見て正解だったわ」


 鞭をどれだけ自由自在に動かせようが、何度も見ていれば、避けられると思った私の勝ちである。

 ガードもそれに気が付き、悔しそうな顔で立ち上がり、互いに握手を交わすのであった。

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