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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-9章 剣聖は詠唱を唱えて戦いたい

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368話 雷の小槌


「これをやりたいのですが?」


 私は、クエスト用紙を受付嬢に見せた。そうして私たちは、クエストを受注して正門を抜ける。


「とりあえずここからどうするんだ? この天気でこの竜が出てくるのか?」


 フェクトは空を見上げならそんなことを言う。今の天気は快晴である。

 いつもは厚い雲に覆われ、今にも雪が降りそうだと言わんばかりの天気をしているのに、これは珍しい。

 

 まるで、嵐の静けさのようなものを感じさせていた。


「アリア、このクエストを選んだ本当の目的は?」


 ナズナの一言に私は、ドキッとする。鼓動がバクバクと音をたて、今にも二人に聞こえてしまいそうだ。


「ナズナ何は言ってんだ? 本当の目的って……そんなのがあると思ってるのか?」

「獣人の勘ニャー。なんかこのクエスト、何か裏があるような気がしてならないニャー」


 私は観念して重たい口を開く。


「ナズナの言う通りよ。この魔物、攻獣の可能性があると思ってるの」


 私は、思っていることを伝えた。そう思ったのは、ほぼ勘と変わらないが、一番はイデリアの反応である。

 眠気で思考力が低下したイデリアだが、そういった勘は誰よりも働く。

 イデリアが驚かなかったということは、何かしらのことを知っていると思っていい。


「攻獣か。でもこれ以上見つけても、ガードにしごかれて終わりだと思うニャー」


 確かにと思ってしまう私。ナズナの顔がだんだんと、やる気が削がれていっている気がした。

 それぐらい、ナズナの顔が変化を始めたからだ。


「それは俺も同感だ。ガード、相当強くなってたぜ」


 フェクトの顔もまた、やる気が削がれていっているような顔になって来ていた。


「私も思うよ。でも、全員とりあえずは見つけておかないとさ」


 私自身、良い言葉が見つからずどこか適当になっている気がした。

 それでも私は、二人のやる気を取り戻させるために、なんとか場を盛り上げようと努力する。

 だが、それは全くの効果を成さず二人して王都に戻ってしまったのであった。


「え、私一人で探すの?」


 まさかの事態だった。こんなことを想定しているはずもなく、頭の中はパニック状態に陥っている。

 とりあえず落ち着かせるために、一度大きく深呼吸をした。


「とりあえず探してみるか」


 ほうきに跨り、とりあえず空に飛び立った。クエスト用紙を取り出し、パラパラと読み直す。


「最後に確認されたのが、一ヶ月前の夜か」


 ここから少しばかり離れた所にある、山で気配を感じ取り逃げ出したと書いてあった。

 私は念のため気配感知を発動させた。何か反応がないかと探るが、弱い魔物の気配以外特には感じない。


「おそらくドラゴンだから、こちらが気配を感じた時点であっちも気が付いているよね」


 でもそんな反応って、気配感知がなくても存在感が強過ぎて気がつくものだと思った。

 私はこれでも多くの魔物や魔族と戦ってきた冒険者。そんなことを思っていたのに、私は気が付かなった。


「雷の小槌」


 何が起こった? 私は最初そう思った。そう思う他、何も考え付かなかったのである。

 ほうきは一瞬にして、藻屑と変わり私は地面に叩きつけられる。

 体は思うように動かず、今にも意識が飛びそうだ。地面に叩きつけられた衝撃だろうか、辺りには真っ赤な液体が流れている。

 そのせいだろうか、私の体はひどく冷たくなっていくような感覚に襲われる。


「お姉ちゃん雑魚いね〜。うちの攻撃、全く気が付かなかったね〜」


 今すぐにでも、斬り殺したいと思ってしまうほどのガキが私の前に現れる。

 先ほどまで考えることすらままならなかった頭が、急に冴え出して思わず笑ってしまう。


「お姉ちゃん、なに急に笑っての〜キモいだけど」


 とてつもない辛辣な言葉に私は、また笑ってしまう。私よりもだいぶ幼いはずの少女。

 それなのに、私よりも何百年も生きているような魔物。そんなことを考えるまでには、頭はより冴え始める。


「うちのことをつけ回す冒険者なんてこれで終わり! 雷の小槌」


 快晴の空から、雷が降ってくる。だがそれは当たらなかった。


「久しぶりにこんな血だらけになっちゃった。流石に油断が過ぎたかな」


 私はよろけながらも彼女の前に立つ。ボロボロになった服がなんともいたたまれない。


「なんでウチの攻撃を受けて立っての? ウチの攻撃は最強なのに!」

「ピーピーうるさいわよ。剣聖のこの私に手を出したんだから、容赦はしないから」


 少女は目を見開き、何度も目を瞬きさせる。だんだんと顔が青ざめていく。



「どうしたの? さっきの威勢は何処に消えたのですか、ちゃんと最後までやり遂げた方がいいですわ」

「う、う、ウチは最強なんだ! 雷帝の鉄槌」


 私は手を叩いた(オフセット)


 一瞬にして消え去る魔法。その光景に思わず尻餅をつく少女。


「それじゃあね」


 首を斬り落とす瞬間で私の剣は止まる。なぜなら、その場にそのまま気絶してしまったからである。


「そこは、私は攻獣の一人ですとか言えないわけ。せっかく強いのに勿体無い」


 私はとりあえず掴み、王都へ戻ってくる。家の前に転移したため、誰にも見られずに戻ってくることができた。

 ただ、仲間たちは私の姿を見て血の気が引いていた。


「俺たちと別れてまだ三十分も経ってないのに何があったんだよ? 血だらけだし」

「いや、かくかくしかじかでさ。こうなったわけ」


……

 目が覚めた。だがそこは、見知らぬ場所。周りの気配を察するに、これはあの方の家なのだろう。

 それにしても私はなぜ、縛られているのだろうか? それになんだか、力が入らない。

 こんなロープ、普段なら全くの無意味だというのにどうしてだろう。

 私は小さな頭で考える。そうして考えること数秒、私はある答えに至った。


「それは……」

「あ、起きたみたいだね? 改めて自己紹介させてもらうわ、剣聖の称号を持つアリアよ」


 その手に持っていたのは、真剣である。それに顔を見ると、目がまったく笑っておらず、私は再び気を失うのだった。

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