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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-9章 剣聖は詠唱を唱えて戦いたい

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354話 剣聖剣技


 フェクトは攻撃方法を変える、近接戦闘から中遠距離だ。魔法に切り替える。

 魔弾を放出し続け、私を近づかせないように作戦を変更したようだった。

 的確に撃たれる魔弾。私の癖を一番理解しているからこその攻撃方法。

 その上私が普段、戦わない空中というフィールド設定。

 完全にフェクトペースの状況が続いていた。


「随分と戦いづらそうだな」

「その分、フェクトはイキイキしているね。今すぐぶった斬ってやりたいよ」

「そんなニコニコな笑顔で言われたら、流石に怖いわ」


 フェクトの言う通り、口角が上がっていた。それぐらい私は、キレている。

 怒りが溜まっていき、いつの間にか顔に出てしまっていた。


「せっかくなんだし、楽しくやろうぜ!」


 自分の作戦が上手く言ってるからこその、この言い分。本当に腹が立つ。

 私は剣聖アリア。こんな状況、私からしてみればハンデを上げているようなもの。そう思えばいい。

 そんなことを考え、私は冷静さを取り戻す。

 私が変化したことに感づいたのか、フェクトの魔力が高鳴る。

 まるで、私を最大限に警戒しているかのようだ。


「そろそろ私の攻撃、当たってみない?」

「それで当たりますなんて言ったら、やばい奴のレッテルを貼られるだけだろ」


 そんなくだらない会話の直後、互いの攻撃が再開する。フェクトの魔弾は、一切の躊躇なく放ってきている。

 油断なんてするものかと言っているかのような攻撃に、私の心に火を灯す。

 私自身、それに応えるかのように一気に魔弾を斬り捨てる。


「どうせ結界で身を守ってるでしょ! そんなもので私の剣技を止められると思わないでよ。ソード・インパクト」

「当てさせるわけないだろ、インフェルノ・ビット!」


 勢いよく飛んでくる魔法。組み手とは思えないような速さで飛んでくるその物体を、私は避けていく。

 そうして私は、ようやくフェクトの前に辿り着いた。


「もう一度言ってあげる。ソード・インパクト!」


 フェクトは地面に叩きつけられ、同時に結界も割れる。ただ私は、地上に降りるだけで追撃はしなかった。

 

 その理由は簡単である。


「やっぱり追撃はしてこないよな。結界が割れた直後、カウンターを決められる可能性が少なくとも残っているからな」


 フェクトはそんなことを言うが、フェクトなら確実に追撃を潰す一手を叩き込む。

 カウンターを決められたら、それこそ今までの努力が水の泡と化す。

 それだけ、今の一手は今後に少なくとも影響するものである。


「空中戦っていうものを失った気分はどう?」

「別に何も思わねぇよ。だって、まだまだチャンスはいくらでもあるだろ」


 次の瞬間、木剣と拳がぶつかりあう。何度もぶつかり、互いの攻撃を相殺していく。

 互いに、決定的な一打が決まらず、体力、魔力の消耗が凄まじく減っていく。


「知り尽くしているからこそ、どちらの攻撃も一歩届かないか」

「だけど、こっからは違う」


 体力が減り続けている以上、生まれる隙。それをどちらが先に、叩き込めるかで大きな決定打になる。

 それが分かっているからこそ、私たちはまた動けなくなる。

 私たちは、必死になって隙を探してしまう。早く勝負を決めたいと焦りが見え始めえていく。


「見つけられないなら、作れば良いんだよ! 魔拳・乱撃」


 一瞬にして、間合いを詰められ攻撃態勢に入るフェクト。だが、それで倒せるなら先ほどのお見合い状態にはならない。

 私は、フェクトの攻撃を全て裁ききり、カウンターの一撃を放つ。


「それぐらい見えてんだよ!」


 結界に攻撃が吸収される。


「魔拳・インパクト」


 腹部にめり込むように決まる一撃。私は思わず悲痛な声を漏らすとともに、そのまま吹き飛ばされた。

 地面に叩きつけられ、意識が朦朧となる。だが剣はまだ力強く握られている。


 それなら大丈夫である。


 そんなことを思い、私は追撃が来る直前には立ち上がり後ろに飛んだ。


「まだ余裕そうに動くか」

「それはそっちもでしょ」


 そんな時、この状況を打破できる解決策が天から降ってくる。

 だが、私がそれをやるのは少々ダメージを受けすぎていた。


「でもやるしかないわよね」


 フェクトは不思議そうな顔をしつつ、勢いよく攻め続けている。

 そうして私は思い付いたことを実行に移す。


「我が声を聞け、我が剣に命じる、全てを切り裂き、目の前の壁を斬り飛ばせ! 剣聖の力を響かせ、"剣聖剣技・抜刀一殺"!」

「詠唱剣技!? なんだそれ……って急にギアを上げるんじゃねぇよ!」


 フェクトは全ての魔力で結界を生成し、私の剣技に迎え撃つ。

 だが、そんなものは無意味である。全てを斬り裂くのだから。


「マジかよ……完敗だ」


 木剣でなければ、もしかすればフェクトの命を奪っていたと思うと、流石に怖くなる。

 そうして組み手は、私の勝利で終わるのであった。


「二人ともお疲れさまニャー。アリアがあんな剣技を出すなて思わなかったよ」

「それは俺も思った。流石に、詠唱を言い出した時にはビビったぞ。どんな攻撃も全てを避けられ、自分の弱さを痛感させられた」

「フェクトが弱い? 何言ってるの、フェクトは普通に強いわよ、詠唱を言ってる間、何度か当たるかと思ったか」


 実際、ずっと避けられていたが、内心では心臓バクバクである。

 一度でも当たれば、詠唱は止まる。そんなことになれば、私が恥ずかしくなる。

 それに詠唱剣技は本来、魔剣士が使うことが多い。ただ、とてつもなく複雑な詠唱を多用するため、それは自然に使う人はごく僅かになった。

 それだけ、難易度が高いということ。

 それに何より、攻撃魔法が使えない私が使った所で、ただのかっこつけになってしまう。

 それでも、私はなんだか決まったことに対して、とても嬉しい気持ちになる。

 そんなことを思っていると、ナズナに肩を叩かれる。


「どうしたの?」


 指を指すを方を見ると、ボコボコになった大地。私は全てを察して、元に戻すのであった。

 そうして、旅は再開するのである。

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