32話 魔神を使い魔にしてみよう!!
疼くのを堪えつつ、外に出ると嫌な気配がする。
今年で丁度五十年、いつ復活してもおかしくないであろう。そうして、街のシンボルであったはずの噴水の前に立ち止まる。
噴水のてっぺんに、先ほどは感じなかった気配が感じてくる。
「なんだあれ?」
赤い宝玉。なんら変哲もないはずだと、先ほどは気にも留めなかった。
それなのに今は、なんとも魅力的に思える。突然、黒い煙が宝玉から放出される。
そして目の前には、魔神と思われる者が現れたのだ。
「この宝玉、壊してはくれないか?」
声は、とても男らしさので魅力的な声だ。
姿はまだ、煙で形成されているからわからない。
「それはいいんだけど、私には勝てないよ」
「大した自信じゃねぇか! お前みたいな小娘なんかに魔神が負けるとでも!」
彼は高らかに笑う。だがそれは、自分が負けることがわかっているかようにも聞こえる笑い声だった。
「自分の実力がわかってるんだね、偉いね!」
彼が笑ったように私は微笑み返した。
「どうせもう解ける封印だ、小娘がいないところで復活した方がいいかもな」
「そんなことはさせないよ、ここで殺すんだから」
私は、先ほどよりも自然に笑みが溢れ出てきた。その顔に、魔神がどこか引きつった表情を浮かべている。
「ちょ、ちょ、さっきの誤解だ、待ってくれ、剣を収めてくれ」
そんな言葉に止まるわけもなく、自分の欲を満たすためだけに宝玉を斬ったのだ。
宝玉は、綺麗に真っ二つに割れる。そして、煙は消え目の前に降り立ったのは、魔物でも魔族でもない。
私の知らなかった生物、魔神である。
「解放されたからには仕方ないか、全力で潰す」
見た目は、全身が黒い体。ツノが2本生えており、魔族のような人間の姿ではなく、完全に魔物みたいな造形をしている。
「――へぇ、それが君の本来の姿なの?」
「あぁそうだ、後悔してももう遅いからな!」
魔神が、雄叫びを上げる。威嚇行動と言ったらいいのだろうか? 周辺の森も怯えている。
「黒砲」
「いきなり全力の魔法? 生き急いでも何にもいいことなんてないよ!」
彼の魔法を、剣で軌道をずらす。それは、相手にとっても許容の範囲内みたいで焦った様子はない。
「でもいい魔法だね、それでは私には届かないよ」
「それだったらこれならどうだ! バレットガン」
速い魔弾だけで、私には当たらなかった。私からしてみれば、止まって見えていた。当たってみたいというのもあったが、ポーションの無駄遣いになるし辞めておいた。
魔弾は、地面に衝撃を与え大きめな穴が空いた。
「至近距離で当たったら、体に大きな穴ができそうだ」
「なんで、そんなことを言いながら笑ってやがる」
「こんなこともできるのかと思って、感心してただけだよ」
彼は、先ほどから一定数の距離を保って攻撃を繰り出している。それでは、有効打が与えられないことはわかっているみたいにもみれる。
……
なんなんだアイツ、俺の攻撃を楽しそうに避けてやがる。それだけではない、あの剣から魔族を斬った匂いが漂ってきている。
俺からみてもアイツらは下等種族だが、アイツからしたら俺も同じなのではないだろうか。
そう思うと、寒気がした。
あ、これで終わるやつだ。 結界を出さないと一撃で殺される。それだけの殺気を脳内に直接叩き込まれた気がしたのだ。
……
「じゃあそろそろ攻撃出そうかな、跳躍」
剣は、結界とぶつかった。その一撃は結界で守られたものの、瞬時に割れた。
「やっぱりなのか……俺が昔、戦った奴は壊すのにだいぶ苦労していたはずなのに!」
彼は、結界を発動し魔法での攻撃を繰り出そうとしている。だが、それは意味のないことなのは彼自身が一番理解している顔が見えた。それでも彼は、一矢報いようとしていた。
剣の一撃で、結界は割れる。そして次の瞬間、彼は地面に地響きを轟かせ、落ちていった。
「もうちょっと強い結界出してよ、それじゃ意味ないよ」
「……」
彼は、何も喋り返してこない。吹き飛んだ瞬間の時も、声を出す暇なんてなかった。
それで死んだということはないであろう。それだったらそこらへんでぶらついている魔族と同じだ。
地面に降りてすぐのことだ。
終わらないのが魔神である。ゆっくりと地面から浮かび上がっていく。
まだその目は、諦めてはいないのがよくわかる。
「――痛いなぁ。お前、名前はなんていうんだ?」
「剣聖の称号を持つアリアだよ」
「剣聖か……通りで強いはずだ、あの時戦った奴も似たようなことを名乗っていた」
「その人には、勝ったんでしょう?」
「今よりは、だいぶ楽にな」
でも楽しい時間は、そこまで長くは続かないものだ。
私は、友達に話しかけるように声を出す。
「そろそろ終わりにしよっか? 全力で結界貼りなよ」
その一撃は、意図も容易殺れる一撃であった。
だが、それを絶叫させてしまう一撃で辞めたのだ。
「ちゃんと防御しても、そんなに痛がるものなのか」
「――なんで殺さなかった、あの一撃で終わってただろ」
「ねぇ、私の使い魔にならない? 私一人旅で、結界とか使えないからいてくれたらありがたいんだけど!」
「はぁ!? なに言ってるのかわかっているのか?」
「だってきみ、今まで戦った奴の中では一番強かったし、私の使い魔になった方がさ、殺せる確率が上がるよ」
彼は、絶句して何も言ってこなった。私的には、こんな条件手放すのは勿体無いと思っている。
「どうする? 今決めて欲しいだけど」
「俺はならねぇって、言って」
彼は、言葉を寸止めした。なぜなら、あと一歩遅ければ首が飛んでいたからだ。
「もう一度聞くね? 使い魔にならない?」
彼は、倒れていた体を無理やり起こし頭を地面に擦り付けるように押し当てた。
「アリア様の使い魔として、一生懸命やりますのでよろしくお願いします!」
「え、本当にありがとう! その見た目はさ、流石に目立つから人型とかには変身できないの?」
「もちろんできます!」
威勢いい返事と共に、体は変化していく。すっぽんぽんではあるが、たくましい肉体を持つ者に変化したのだ。
「あ、これ服ね」
男装する機会があるかもと、渡された服をボックスから放り出す。
「名前とかないの?」
「基本魔族には、名称はありません」
「そうなのか、それだったら今日からフェクトね!」
使い魔には、名前がいるのだ。それが承認されアリアとフェクトの主従関係がここに誕生した。
そして、その主従関係はいろいろなところで憶測が飛び交うのであった。




