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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-8章 冒険者は攻略してこそ冒険者だと思います

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328話 前触れもなく


 今回の一件、それは国内外にも影響を与えていた。そうして、国は王都の調査団が入ることが決まる。

 そんなことが立て続けに起こったことにより、街の中はピリついた日常を過ごしていた。


「イデリア、今回のこの犯人は誰だと思う?」

「ダークウィッチーズで間違いないと思ってる。こんなことをしでかすのは、大体アイツらだし」


 イデリアは決めつけたような言い方をする。それだけ、ダークウィッチーズの犯行が今まで何度もあったことが決めつけに近い原因だろう。

 だがそんな私も、そんな気がしていた。だが、こんなことをして国に何しからの総害を与えたとしても、それでどうにかなるようなら、この国はとっくの昔に滅んでいる。

 

「でも今まで上手いことカモフラージュしてたよね。今は、結界直ってるからあれだけど、気が付かないものかな?」


 街を散策しつつ、私はこの国を守る大事な結界に目を向けた。


「素人が見たら気が付かないでしょうね。それに魔法界支部も、魔法使いの所属がないみたいだし」

 

 ここの魔法界支部は、魔術師、回復術師で構成された二百にも満たない支部だ。

 ただ、この国の結界術師はあまりにも質が悪いと言えるだろう。

 そう思われても仕方ないと思うほかなかった。


「カントリーさんのカモフラージュがそれほど凄かったのかな」

「それはないと思うけど? いくら結界術師が無能でも、それぐらい気が付いていない筈は……待って!」


 突然大きな声を出すイデリア。私は横目でイデリアを見ると、何か分かったような顔をしていた。


「常識のあまり疑いもしなかった。ほら、結界って浄化の力も組み込んでいるのが普通でしょ、それを逆手にとったから、これは上手く行ってたんだ」


 イデリアは目を輝かせ、まるで奥歯に挟まっていた物が取れたかのような喜びようである。


「だから皆、一切結界をちゃんと確認していなかったってこと?」

「そう。カントリーさんは管理者だし、そんなヘマはしないだろうという、勝手な安心感があったんだよ」


 軍でそれなりの地位にいる人だ。その安心安全、結界においての常識、それらを全て裏切ってもバレない自信があった。

 だが、予想外な出来事が起きた。それは、国中で流行った疫病である。

 それはまだ準備段階であるため、毒を水に混ぜる行為はまだしていなかった。

 そうして湖には、ポイズンが棲家にしており近づくことさえ無理だった。

 そんな時、調査に来た連中はポイズンを報告した。


 そこから、討伐は行えなかった。


 それは疫病の影響により、冒険者の数多くが体調不良が原因だろう。

 軍の兵士たちも同様な理由なのが見えてくる。そんな時、私がポイズンを撃破したことにより、疫病の患者は減少していくことになる。

 だが、そんなことは知らず、犯人はこの様な事態の発覚を恐れ、関係者であるカントリーさんを手に掛けた。


「仮にダークウィッチーズの場合、もう出て行っている可能性が高くない?」

「それはあるかもだけど、でもこの国はまだ出入国をまだ規制している状況」


 確かに、この疫病が他の国々に渡った場合、その批判は大きな物になる。

 領主いえど、王都の王族たちに不利益をもたらせば、全て終わりである。

 それに何らかの情報を、ギルド、魔法界、王都のどれかに伝えれば、今回の殺人は防げたかもしれない。

 それを怠った領主は、何らかの処罰が下るだろう。


「とりあえずまずは犯人を捕まえないことには、話がこれ以上進まないわね」

「でもそれは多分だけど早く片付くかも」


 イデリアは不思議そうな表情を浮かべ、こちらを見る。そんな時だ、後ろから魔弾が飛んできたのは。


「今のってサイレント魔法!?」


 イデリアは驚いた表情と共に、その場に尻餅をついた。


「また会いましたね剣聖」


 それは最近各地の国で見かける、ダークウィッチーズの一員の一人である。


「今回の一件、君が関わっているってことで良いのかな?」

「いやただの観光ですよ。だってこんな面白そうな国、我々が見過ごすと思います?」


 杖を構えながら言う。正直どうとっていいか分からないが、戦う気となら相手するまでだろう。

 ボックスから木剣を取り出し構える。


「サイレント・インフェルノビット」

「援護頼むわよ、イデリア!」


 イデリアはすぐさま立ち上がり、結界を展開させる。

 結界が広範囲だったため、何かあると思っていたが、周りの建物を狙うとは。


「あれバレちゃった。せっかく決まったと思ったのに。雷帝の雷」


 油断してたら直撃は避けられなかった。それほどまでの一撃、それを何の躊躇もなく放つなんて。


「おっと、コレは怒らせ過ぎましたかね」


 やはり私の反応を見ての行動だった。私が怒らないギリギリを見極めて放ってくる様な感じなのが伝わってくる。

 人をどこまでも舐めている様な、攻撃方法に私の怒りは着々と溜まっていく。


「サイレント・聖なる刃(ライトニング)


 それを軽く斬り裂き、彼の前に立つ。それでも顔色一つ変えないとは、なかなか修羅場を潜ってきたと分かる。


「質問に答えてもらおうか? あと五分もすれば、私の仲間たちも集まってくる」

「最初から言っているだろ、俺たちは犯人ではないと」


 それが本当か嘘か証拠になるものは、お互いに持っていないことぐらい分かりきっている。

 それでもそれをここに居るってことは、何かしら知っているのだと思って良いだろう。


「それにしてもどうやって入ったの? この国は現在、出入国一切一般人は入れないはずだけど?」

「それぐらい掻い潜ったら別に問題ないことだよ。それに言っておくけど、仲間が何人増えようが俺は逃げられる」


 ここまで言うのだから、それは本当のことなのだろう。確かに彼は逃げていた。


「私がいても同じことを言えるなんて、良い度胸してるわね。犯罪者」

「管理者……またあなたとは個人的に潰したいのでそれまで生きていてくださいね」


 そう言った瞬間のことだった。彼はなんの前触れもなく、消えたのであった。

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