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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-1章 剣聖少女前日譚と旅の始まり

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第29話 第五王子


 おばちゃんの家は、年季の入った家だがどこか懐かしさを感じさせる一軒家であった。

 

「今は、お孫さんと暮らしているのですか?」

「そうだよ、アグルスはいつも疲労感の溜まった顔で帰ってきておる」


 門番兵は、昼夜を問わず働く。交代制であるものの、やはり夏場冬場は、相当苦しいものだと師匠が言っていたのを思い出す。

 それが原因で、ストライキを起こした事例がいくつもあると言っていた。

 

「大変なお仕事ですものね」

「でもな、剣聖様みたいな人もいるおかげで頑張れるって言ってた」


 その言葉は、私にとって嬉しかった。

 その行為をしていなければ、私は今頃領主様の元に連れて行かれていたであろう。

 私自身、他者を見下したりすることもあるが、師匠や家族がいなければもっとひどいものになっていただろう。

 そこは、とても三人に感謝している。


「それは何よりです」

「ちょっと待ってておくれ、レーン味でいいかい?」

「あ、はいありがとうございます」


 そして、おばちゃんはすぐさま用意してくれた。そして嬉しそうな顔をして言うのだ。


「剣聖様のおかげで商売繁盛しております、本当になんとお礼を言っていいか」

「いや私、食べただけですよ」

「自分の影響力を、舐めたらいけませんわよ」


 思い出してみると、見かけたのは見かけたけどそれはどこでも売っていたからだと思っていた。


「剣聖様が食べた影響で、うちの出店が売れたんですよ。あなた様が困っているのを、助けずにはいられませんよ」


 恩返しがしたかったのか。だからこそ、助けてくれたのかと思い知らされた。

 そうして時間が緩やかに進んでいく。

 そして、事件が起こったのだ。

 

『剣聖少女様! 今すぐ領主のもとに来い』


 国の中心地から、アナウンスが流れたのだ。

 この国にいることがバレている。

 

「私行くよ、迷惑はかけられないよ」


 極力関わりたくはなかった。しかし助けてくれた人を巻き込むのは間違っている。

 おばちゃんは、とても悲しそうな顔で止めてくれたが、そんなわけにも行かないのだ。

 そしてもう一度放送が流れたのだ。

 その一言は、私を本気でキレさせるには充分過ぎる放送だった。


『剣聖少女様来ていただけますか? さもなくは、あなたを国に入れた門番兵を処刑するまでです』


「この声って、第五王子に聞こえてる?」

「いや、えーと聞こえてないはずです、これは国民に向けた放送なので」


 今にも倒れそうなおばちゃんを、家に入れ私は勇気を分け与えるかのように言うのだ。


「待ってて、絶対に助けてくるから」


 周りにいた、兵士たちが集まってきていた。


「剣聖様そんな所にいられたのですか! 今すぐ領主様の所まで連行します」

「はぁ!?」


 その声は、そこにいた兵士たちは尻餅をつかせ明らかに漏らしているかのような水たまりを作り出していた。

 そんな光景を苦笑し、私は魔法を唱えたのである。

 次の瞬間、貴族たちの住む所にあった結界が、砕け散る音が国中に響いたのだ。


「お望み通り来てやったよ! どうなるかわかってるんだろうな」


 そこでは、優雅にお茶会が行われていた。

 そこに、領主の姿もあり完全に怯え切っていた。


「さっさと場所を吐け! お前の首なんか私の気分次第で飛ばせるんだぞ」


 胸ぐらを掴みながら言ったのが、効果的面だったのかは知らない。

 すぐに吐いた。

 

「ちょっと待っていただきたい!」


 慌てた声が私の足を止める。

 見た目は、白髪の年老いたおじいさまだ。だがその服装はどう考えても、只者ではないのが容易に想像できた。

 

「わからんのか今急いでんだよ、若き青年の尊い命をお前のせいで失わせるのか」

「……」

 

 何も言ってこなかった。いや、言えなかったとでも言っておいた方が、彼のためになるであろう。

 ミニシアは、まだ状況が掴めていない様子である。それに比べて、向かい側に座っている男は楽しそうに会話を続けていた。

 そして、おそらく第五王子である男がこう言ったのだ。


「爺や、行かせなさい。その代わり剣聖様、あとでお話しよろしいでしょうか?」

「助けに行く青年が生きてたらな」


 私は、箒を取り出し全速力で向かう。

 向かった先は、この国の軍本部である。そこの屋上で処刑執行されかけているらしい。


「居た!」


 まだ幸いにも、屋上で空を眺めていた。そのすぐ先には、断頭台がある。

 

「そんな処刑させるわけねぇだろうが!」


 箒から飛び降り、断頭台を破壊する。最初は驚きと恐怖の入りじった顔をしていたが、次第に青ざめていった。


「今すぐ解放するか、ここで斬られたいのかどっちがいい?」


 誰一人、何も言うことが出来なかった。凄みの効いた声は、兵士たちをビビらしてしまっていたみたいだ。

 そして、ある男が震えた声で言ってきたのだ。


「今すぐ解放する、なので剣をしまってはくれないでしょうか?」

「先に解放だ」


 そしてその時だった、あの男が国民に向けて喋り出したのだ。


『ハイド国民の皆様、ごきげんよう。王都ダイナールにて第五王子のインテグリティ・ダイナールと申します』


 この放送から伝わる、圧倒的な言葉の重さ。ただ、名前を名乗っただけなのに、それだけで周りにいた連中はこの世の終わりだと言いたげな表情をしている。

 

『早速本題ではありますが、この国の領主変更をするためにこの国に参りました』


 あの領主が、何かやらかしたと言うわけか。確かにあの男なら、犯罪なんてやってそうだった。

 それでわざわざ突然来訪か、そんなことは滅多にないと思っていたが、これが実在するなんてよっぽどのことをやったのか。

 まぁ、いくら考えても仕方ないことだ私は思う。今やるべきことは、違うのだから。

 

「帰るぞ、おばちゃんが心配してる」


 足枷、手枷を斬り落とし自由の身にさせる。ただ、すぐには歩けないだろう。

 体のあちこちから、血が出ている。

 短時間で、相当な拷問を受けたのだと推察できるほどだ。

 ポーションをかけ、魔法で眠らせる。

 怖い思いをしたのだから、夢の中でとりあえず休んでほしいと思ったのだ。

 なぜ自分が、ここまでしたのかわからない。それでも、助けを求める者がいるのなら助けるべきだと私は思う。

 アルグスを抱き抱え、一気に孫の帰りを待つおばちゃんの家まで行ったのだ。

 

 おばちゃんは、孫が帰ってきて泣き崩れていた。何度も感謝され私は、その度に「どういたしまして」と声をそっと掛けたのだ。

 そして、私はもう一度アイツの待つ領主の屋敷に向かうのであった。

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