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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-8章 冒険者は攻略してこそ冒険者だと思います

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323話 毒素を持つ魔物


 燦々と降り注ぐ暑い日差し。それを浴びながらも旅は続く。

 箒を想いのままに動かし、今日も進んでいた。


 どこかで休息を取りたいと思っているのだが、周りに広がるのは、自然のまま伸びていて、草花生い茂った草原地帯。

 上空から見えるのは、草花が風で揺れている光景ばかり。休める場所なんて、ここにはなかった。

 だがここで諦めるわけにも行かないのだ。私の後ろには、ナズナがいる。

 ナズナは、いつも通り寝ているように思えても、だいぶ体力を消耗しているのが気配で分かる。

 それは、ずっと結界を張っているフェクトも同じである。降り注ぐ日差しは、結界を貫いてくるレベル。

 いくら冷たい冷気を流していても、体力を奪うのは結局同じことである。

 ここ数時間、二人は一切口を開こうとしなかった。無駄な体力を消耗したくないのか、ずっと無口で少し機嫌が悪そうにも見えた。


「マップで確認するか」


 マップを展開させ、どこか休める所がないか探す。そうして見つけたのは湖だった。


「ここからそこまで離れてはないわね」


 止まっていた箒を動かし前に進ませる。それの後を追うかのように、フェクトの箒も動き始めた。

 向かっている最中、草木の中から突然上空に魔族が飛び出してくる。

 私たちが飛んでいた所よりも高く飛び上がり、私たちの真上に彼は居た。


「この暑さで油断してたな。俺様の気配を感じないなんて、ここで殺してくれって懇願しているようだぜ!」


 ダブルスレッジハンマーが結界にぶち当たる。次の瞬間、手が目を覆いたくなるような折れ方をしていた。


「魔族ごときが何のようだ?」


 フェクトの逆鱗に触れた。その証拠にものすごい殺気がこちらにまで飛んで来ている。

 殺気を見せただけで、魔族ですら殺しそうなレベルである。

 ただでさえ機嫌が最高潮に悪いと言うのに、それさえ感じ取れない、何とも言い難い魔族で呆れてしまう。

 完全に萎縮しているのが気配で分かる。ただ、それで終わりなら魔族とは呼べないだろう。


「俺様に殺気だと!? お前ごときなんかに負けるか!」


 思わず感心してしまう自分が居た。だがフェクトには、全くそんな言葉届いていない。

 それどころか、実力行使しなければならないことに落胆を見せていた。

 こちらに視線を送り「殺ってくれ」と言われているような気がしてならない。

 だが相手が希望しているのは私ではない。それが分からないフェクトではないだろう。

 あとで何かしら文句を言われるだろうが気にしない。


「あなたのお客さんよ。さっさと行きなさいよ」

「主人様、こういう時は言ってくれてもいいんですよ」

「こんな時だけ呼ばないで。ずっと結界を殴っているわよ」


 最初の一撃で骨が折れたというのに、流石の回復力はいつ見ても惚れ惚れするものだ。

 私にもそれがあれば良いのになぁと思うこともあるが、それはほぼ人間でないので、やめておこうと心の中で完結させる。


「いつまでも殴ってんじゃねぇよ! 魔武式・一鉄突き」


 腹部殴って上半身破裂させた。相当怒り籠っているのが伝わってくるほどだった。


「そんなカリカリしないでよ。せっかく良い場所に連れて行っているだから」

「元はと言えば、アリアがあの魔族倒してくれていたら揉めないよな」

「でも相手は君をご指名だったし、それに私なんて眼中にもなかったわよ」


 フェクトはそれから黙った。私は人間である、それだけで殺す対象から退くことがある。

 それをフェクトには覚えていてほしいものだ。


「とりあえずあと数時間で着くから、それまでには機嫌を直しててね」


 そうしてたどり着いた湖は、とても綺麗とは言えなかった。


「汚染されてる?」

「魔物が居る。それも毒素をばら撒く系の水辺に生息する魔物だ」


 次の瞬間、湖の中から光線のような速さの水が放射された。


「結界にヒビ入ってる! 結構離れているはずなのに、狙ってくるなんて良い度胸してるわね」

「しかも狙ってきた場所、さっきの俺様系魔族の殴ってた所だ」


 結界の脆くなっている部分を確実に狙ってきている辺り、強いという説得力を増していた。


「高密度の魔力反応! もう一回来るぞ!」

「ここは私に任せて!」


 箒から飛び出し、結界の外に出る。先ほど同様の攻撃がこちらに向かってきていた。


「私を止めたいなら、その数百倍は強い威力じゃないと私は止まらないわよ!」


 神速の速度を誇る私の抜刀技術。それの前では、無意味である。


「まだ強くなるのよ」


 フェクトの冷めた声が聞こえた。私にはまだ限界はない。


「一気に湖に飛ぶ! 足場借りるわよ」


 結界に足をつかせ、一気に蹴り出し湖に飛び出す。

 それを阻止しようと、湖の至る所から先ほど同様な攻撃が飛んでくる。


「何十匹も住んでるってわけ? そんな多いことってあるんだ」


 呑気に感想を述べつつ、剣を振るう。こちらに飛んでくる全て、斬撃で相殺する。


「痺れを切らしたのみたいね」


 何匹か飛び出し、噛みついてこようとする。だがそれは、私から見れば、最大の悪手と言えるだろう。


「油断するな! 毒素のブレスが来るぞ」


 上空からフェクトの声が、微かに聞こえる。次の瞬間、噛み付くように見せかけ、ブレスが放出される。


「インフェルノ!」


 毒素とぶつかり、凄まじい爆発を起こす。それと同時に私にも多大なるダメージが体を襲う。


「グゥうッ!」

「アリアしっかりするニャー!」


 ナズナがガッチリと捕まえ威力を殺す。ポーションを掛けられ、痛みは引いていく。


「フェクトも無茶なことをするニャー。とりあえずここから一気に畳み掛けるニャー」


 そう言った瞬間、フェクトの魔法が魔物に炸裂する。


「インフェルノ・ビット!」


 威力は弱まるが、確実にダメージを稼ぐ。その証拠に、魔物の悲鳴が静かだった湖に響き渡る。


「私たちも行くわよ! フェクトに刈り取られる前に、私たちが決着をつける!」

「当たり前ニャー!!」


 木々を飛び越え、一気に飛び出す。


「獣拳・インパクト!」

「一撃一閃・インパクト!」


 湖の中心から放たれる技は、多大なるダメージを魔物に浴びせたのであった。

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