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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-8章 冒険者は攻略してこそ冒険者だと思います

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321話 終わりと祝いエール


「今の声はミュアちゃん!?」


 先に気が付いたのは、司書さんの方である。私はワンテンポ遅れて、後ろからその後を追う。

 司書さんの顔には、焦りがみえた。おそらく、アークエス同様なほどに情を入れているのだろう。

 そうして声がする方へ駆けつけると、一人宿屋の前でオーガに睨みを効かせていた。


「ミュアちゃんそこから離れて!」


 レイピアを強く握る司書さん。地面を蹴るように踏み出し、一気にスピードを上げる。

 それに連れて私の速度も早くなる。

 だがその攻撃は決まらない。先ほどまでのオーガと違ったからだ。

 司書さんの顔をチラッと見ると、驚きを隠せない様子だった。

 先ほどまでと違った動き、それが彼女の攻撃を狂わせたのだ。

 

「羽が生えた……!? どうなってるの?」


 オーガは高く飛び上がったと思ったら、赤い背中から漆黒な翼が二枚生えてきたのだ。

 大きな雄叫びを上げるとともに、それは各地で起き始めていた。


「何が起こってるの? こんな状況、もう諦めるしかないって言うの」


 心が不安定になってしまう司書さん。それは大変危険な状態だとすぐに分かる。

 呼吸が荒く、周囲をキョロキョロと見ている。


 レイピアが地面に落ちる。


 完全に落ち着きがなくなり、レイピアを持っていた手は自然と解けてしまっていた。

 

「ミュアちゃん、司書さんを連れて逃げてくれる?」

「わ、分かりました」


 司書さんの手を掴み、遅い足を走らせる。上空に居るオーガはジッと見つめ、手に持っていた棍棒を強く握る。

 次の瞬間急降下させる。


「あなたの考えなんかお見通しよ」


 上空での競り合い。圧倒的にオーガが有利である状況から、己の筋力と剣術でパリィする。


「驚きたいのはこっちだって同じなのよ! ここでこれ以上、好き勝手にはさせないわ!」


 上空でバランスを崩したオーガなんて、私からしてみればスライムと同義。

 箒を召喚させ、一気に首を刈り取るのであった。


「まだ沢山居るわね。早く何とかしないと」


 立ったまま箒を速度を出す。バランスは少々取りづらいが、それを気にしている余裕は無かった。


「飛んでるって時点で、ダークウィッチーズの仕業ニャー」


 ナズナは天高く飛び上がり、オーガより上空から一気落下し、頭上からの肘打ちが決まる。


「飛んでいるなんて似合ってないニャー」


 聞いたことがないような声でそんなことを言う。私は冷静さを保ちつつ一近づいていく。


「ナズナ乗ってく?」


 ナズナの顔は急激に赤くなる。恥ずかしい一面をバッチリと目撃されたのだ、それもそのはずである。


「い、今の忘れるニャー!」

「詳しくは聞かないよ。とりあえずオーガを討伐しよう」


……

 その頃、フェクトとアークエスもまた異変には気が付いていた。


「思ったんですけど、これってあのウィッチ倒してからじゃありません?」

「確かにそれはあるかもな。それにしてもそろそろ出てきてほしいもんだけどな」


 次の瞬間、魔弾が弾幕を張る勢いで飛んでくる。それは全てフェクトの前では無意味であった。

 フェクトの張った結界は、一切の魔弾を通しはしなかった。


「ようやく黒幕の登場か?」


 何もない場所から突然現れる。そこに現れたのは、先日ナズナの一撃で気絶した男である。


「いつから気が付いていた魔神?」

「最初会った時点で。まぁ、国に入った時点で薄々感じてはいたけど」


 国に入ってすぐの時、俺を出国させたかったのは俺が邪魔な存在だったからだろう。

 それに伴い、アリアやナズナも一緒に出て行ってもらったら、その方が本当は良かったのだろう。

 ただ、それはことごとく失敗に終わる。おそらく、戦闘訓練も、どうにかして出ていくように仕向けようとした結果。

 それは、アリアがこれ以上感じれないほどのトラウマをエリート軍人に浴びせていた。

 それで直接出向くが、それもあのような形で終わる。その結果、これに行き着いてしまったののが分かる。

 

「ダークウィッチーズなら、これをやってもおかしくないだろうな」

「たった四人で、ここまで完璧に守られると流石に反吐が出ますけどね」

「それは、お前が弱い魔物しか呼べないのが悪い。俺たち三人を削らない限り、この国は落とせないぞ」


 杖を強く握りこちらへ向ける。そこから放たれる魔弾は、全くもって意味をなさない。

 先ほどよりんも弱い魔弾が結界に当たり、爆発を起こす。


「この程度で挑むんなんて、やらかしが酷いな」

「本はお前もいなかったはずだ。それを、ここに残りやがってlこの状況、どうしてくれる!」

「どうするってバカなの? ここは止めているから、間違った判断をしているのはお前だけだ」


 構えを取る。そうして一撃、顔面に叩き込むのであった。一発で伸びる彼を持ち上げ、ギルドに向けて出発する。

 その後を追うような形で、アークエスも後を付いてくる。体は、限界だったはずなのにそれでも必死に走っていた。


「俺たちは加勢はしない。あの二人がいれば充分だ」


 そうしてギルドの扉を開けると、見知った顔がある。それはミュアという宿の店主である。


「ミュア無事だったのか。それは良かった」

「君は本当よくボロボロになるね。とりあえず手当するから待ってて」


 ミュアは、手際の良い手当をしていく。


「フェクト様、それは誰ですか?」


 俺は、肩に下げていたやつを下す。その瞬間、周りに避難していた連中も、声を上げるほどだった。

 長い年月を掛けてこんなことを彼はしでかしたのだ。それだけのことをして、この国がどうにかなるのであろうか。

 考えれば考えるほど分からなくなる。


「とりあえず彼はこちらで預かろう」


 その瞬間扉が開かれる。振り返るとそこにはアリアとナズナが立っていた。

 二人とも返り血を浴びている。そこで俺はようやく気が付いたのだ、戦いが終わっていることに。


「二人ともお疲れ。とりあえず詳しい話は後だ、とりあえず祝いエールでもしようぜ!」


 そうしてその宴会は、国中を巻き込んだ宴会へと発展していくのであった。

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