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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-8章 冒険者は攻略してこそ冒険者だと思います

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319話 血飛沫冒険者


 翌日。私たちは、朝からギルドの方にやって来ていた。ギルマスからの呼び出しである。


「朝から慌てて何かありました?」


 アークエスは、周りを見ながら言う。ギルマスの顔は、焦っていた表情から、安堵した表情へと変わる。


「待ってたぞ。門付近に魔物が集まって来ているんだ」

「それの討伐ですね。すぐに終わらしますね」


 そう告げた瞬間、アークエス一人転移で行ってしまった。それの後を追うように、私たちも転移する。

 気配感知を作動させると、門の全域に魔物の気配がする。どこか統率が取れたような配置なのが引っかかる。


「統率が取れている、その点に充分注意してね」


 そうして私たちは、門を飛び降り一気に飛び出していく。それに気が付いたのか、四足歩行の魔物が飛び出してくる。


「犬っころか。私を止めたいならもっと強い魔物差し向けた方が良いわよ」


 魔物に意味のないアドバイスをしつつ、突き進んでいく。それを阻止しようと魔物が次々に来るが無意味であった。

 剣を振り翳し、複数同時に絶命に追いあっていく。耳に残る最期の声。

 それらを聞いても、私は止まることは無かった。


「それにしてもどうして?」


 そんな時だ。国の方から何やら騒がしさを感じてしまう。嫌な予感がする。確証はないが、それをやるには好都合すぎるタイミングである。


「私、国に戻るわ!」


 二人は困惑した表情をしていたが、アークエスは腕を大きく突き上げる。

 そうして、私は一時戦線を離脱した。


「何事もなければ良いんだけど」


 全速力で走る。それは私の思ったことが起きていた。軍の連中、冒険者連中が交戦を始めていた。

 オーガが国のなかで暴れ回り、入ってすぐの所は、破損箇所が多く見られた。

 オーガは、周りが見えないほどに興奮をしているのが伝わる。

 持っている棍棒を振り翳し、建物に当てながら攻撃していく。

 軍や他冒険者では、倒すのは確実に無理そうである。


「私を見ろ!」


 こちらに視線を向けさせるため、大きな声で叫ぶ。暴れていてたのが、嘘みたいに鎮まる。

 こちらを睨みつけ、棍棒で構えをとる。


「良い子だ。私が相手をしてやるからありがたく思ってよ」


 オーガは雄叫びを上げる。凄まじい殺気とともに走り出し、こちらに一直線に向かってくる。

 棍棒を地面に叩きつけた瞬間、上空に飛び上がり、真っ二つに斬り裂いた。

 消滅した瞬間、他にもいたオーガたちは一目散にこちらに向かってくる。

 私が圧倒的に危険と判断しての行動だろう。何かを成すために、その犠牲として向かって来ている。

 最初から勝ち目がないことぐらい、オーガは分かっている。

 

 それでも、歩みは止めない。


「その行動、それが君たちの答えというのなら否定はしない」


 立ち止まっていた体を動かす。瞬間加速でオーガの目の前に現れる。

 次の瞬間には、そのオーガの首は宙に舞っていた。そこからは簡単な行動である。

 こちらに振り返る瞬間に斬り飛ばす。

 立ち止まったからには、それ相応の覚悟を持ってもらわないと私を前にして、立ち止まるなんて自殺行為でしかないのだから。


「あれが剣聖の強さ」

「何やってるか全く分からん」


 若い冒険者の二人が、そんなことを言う。おそらく銀の冒険者の成り立てだろう。

 それも銅の冒険者として、あまり経験を積んでいない感じなのが、雰囲気から伝わってくる。

 それなのに、こんな場所に向かってくるなんて、自分の強さを理解していない、ただのアホである。


「お前たち、そこで突っ立ってないでさっさと避難しろ!」


 冒険者の二人は、自分たちに言ったのかと疑問の顔でこちらを見てくる。


「お前たち如きの強さで、オーガに向かってんじゃねぇ! ここで死にたいわけでもないんだろ、軍の連中らも、さっさと動け!」


 彼らは逃げるように、この場を去っていく。これでようやく戦いやすくなる。


「剣聖様。あの様な言い方では、反感を買いますわ」


 狭い路地から現れたのは、昨日の司書さんだった。図書館で来ていた制服のまま、血まみれのレイピアを持っている。

 何とも異色の光景だが、そこは置いておこう。


「ここに魔物が出た原因って分かりますか?」

「分からないわ。でも一つあるとしたら、魔物を呼ぶベルが使われたとかはありません?」


 ダークウィッチーズが開発したあれか。確かにそれは考えられるが、だがアイツらは今回まだ遭遇していない。


「なんでそれを思ったんですか?」

「あれアークエスくんから聞いてない? ここは少し前、ダークウィッチーズに襲われたんですよ」


 だったらその考えに至るのも当然って言えば当然か。


「もしかしての話なんですけど、コレって可能性あります?」

「それは考えられるわね。そっちの方がまだ可能性としては高い」


 そうして原因を探りつつ、オーガの集団を刈りとる。それにしても一つ思ったことがある。

 アークエスが言っていたことは本当だったんだと。


「オーガの頭がそんな簡単に破裂するなんて」

「レイピアは突きの一撃が強いのも特徴ですからね」


 だがその姿、誰が見ても逃げ惑うレベルである。破裂した瞬間、血飛沫にあたるためそのせいで全身魔物の血で真っ赤である。


「ベトベトして気持ち悪くないんですか?」


 司書さんは、自分の姿を見る。

 真っ赤な顔から繰り広げられる笑顔は、私が後ろに飛び上がり構えを取るほどの迫力である。


「だって私、血飛沫冒険者なんて巷では呼ばれてたからね」


 よくそれで、今は子供たちに怖がられないな!! おそらく親世代とか、その呼び名知ってるのに。


「そんな顔しなくて良いのに。全然こんなこと、冒険者の時は日常茶飯事だったわよ」

「なぜ司書さんだけが生き残ったか、分かった気がします」


 司書さんは驚いた様子だ。


「え、何? それってどういうこと!?」

「魔法少女と会った時も、血飛沫を多少なりとも浴びてましたよね。攻撃に当たってしまい、服に体に付いた血と出血で死んだと思われたのでは?」

「確かにそうかも」


 そうしてなぜ自分だけが死ななかったのか、その真相がこんな形で顕になるのであった。



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