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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-8章 冒険者は攻略してこそ冒険者だと思います

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318話 未練と本望


 司書さんは、顔色一つ変えなかった。普通なら変えてもおかしくない話である。

 伝承の彼女……魔法少女はすでにこの世には存在しないのだから。


「そうだったのですね、話してくれてありがとうございます」

「こちらこそです、色々教えて下さりありがとうございました」


 そうして別れようとした直後、彼女は言う。


「私も会ったことがあるんですよ。少し前、冒険者をしていた頃に一度だけ」


 先ほどまで、顔色一つ変えなかった司書さんはとても悲しそうな表情で言う。


「何かその時あったんですか?」


 私は自分の欲が抑えきれなかった。どうしても聞いておきたいと思ってしまい、そのまま口に出てしまう。


「私が所属していたパーティは、魔法少女によって壊滅しました」


 やっぱり……そんな気がしていた。彼女を知っているということは、何かしらに巻き込まれたのだろう。


「魔法少女が現れた際、ようやく会えたという達成感の中、ここで倒したいと思ってしまったのが原因なんです」

「それで返り討ちにあったと」

「運よく生き残ったのは私だけでした。彼女に認められたリーダー一人だけを故郷に転移させました」


 おそらく魔法少女が気にいるだけの技量を、私同様一発で勝ち取ったのだろう。


「魔法少女は、おそらく彼一人以外眼中にもなかった」

「そうです。ただ、それは叶わなかった。理由は、リーダーは私たちを選んだから」


 だろうね。何らかの魔法で、フェクトやナズナを遠ざけたように、それらをやろうとした。

 ただ、司書さんのリーダーの仲間思いだったことが作用し、それを打ち破った。

 夢だった魔法少女に会えたこと、その魔法を打ち破る要因として、倒したいという感情が芽生えたのだろう。

 その結果、上手く行かないことに激怒したであろう魔法少女と戦闘になった。


「そのリーダーは、さぞ強かったのでしょうね」

「白銀の冒険者のアークエスくんの父親ですからね」


 うん? なんか今、爆弾情報投下された? え、私こんな情報知ってても良いのだろうか?

 若干どんな顔をすれば良いのか分からないが、話を続けよう。


「もしかしてですけど、魔法少女ってアークエスに恨まれています?」

「いやどうでしょう? あの子はもう、ここにはあまり未練はないと思ってるんですけど」


 確かに言われて見ればそうだ。この国を出て行ってもいいと何度か発言しているのを私は聞いてる。


「でも一つ未練があるとしたら、ミュアちゃんの存在だと思います。隣人同士の幼馴染ですから」


 それもそうだ。この国は、結構有名な宿屋もあると聞いた。

 彼が紹介してきたのは、あそこだった。私たちを泊めたという実績があれば、客足は一気に広がるだろう。

 色々な国を飛び回りながら、クエストをこなす冒険者とかは、とにかく安い宿を探す。

 その条件に合うのは、せいぜい相部屋とかになる。

 だがここでこの実績があれば、多少高くてもそちらに泊まる。


 なぜなら、剣聖という称号それだけの価値がある。

 それにこの国の、白銀の冒険者が朝食を食べに来ることが加われば客足は一気に増える。


「私たちをそういうことに使うなんて、結構考えているのね」

「なんのことでしょうか?」

「いやこっちのことだから。今日は本当にありがとうございました」


 そうして私は、図書館を後にするのだった。


「あれそんな所で何か用事でもあったのか?」


 後ろを振り返ると、そこにはアークエスが立っていた。


「魔物の討伐かい?」

「はい。そのついでに魔法少女を探してたんですけどね、俺の前に父親を転移させたアイツを」


 あ、これ全然気にしてるやつだ。それを見ず知らずの私が、討伐してしまった。

 これ、なんて黙ってるプランも正直に話すプランも誰かにリークされるプランもどれもダメなやつだ。


「倒したいの? 復讐って感じに聞こえるけど」

「そうですね。出来れば自分が倒したい。あんなに強かった父さんが、見るも無惨な姿だった」


 うーん……これ、話したほうが良いかな。もうゲロった方がいい気がする。

 あ、でもどうしたらいい? え、えぇ……うん、もう言っちゃおう。


「実はね、私が魔法少女を討伐したの。ここに来る前に。立ち寄った村で出会って」

「それ、本当ですか? いや、剣聖少女様が嘘を付くはずないですよね」

「私も、彼女に気に入られてここに来る道中、何度も戦った。ここに着く直前倒したの」


 一瞬でピリつく空気。その場をそそくさと退散していく人々。

 そんな時、図書館の扉が開く。


「いつまでそうしている気? アークエスくん、君は最初から分かってたんじゃないの? 剣聖様が倒したんじゃないかってこと」

「ユーミさんの言うとおりです。最初出会った時、アイツの残滓を感じましたから」

「それにそこまで彼女のことそこまで思ってないでしょ。リーダーは、取り憑かれたように探してた。だから君を放置することが多かった」

「その通りです。父が死んだ時、ある意味本望だと思いましたから」


 それならそう言う風に言ってよ。正直やらかしで、冷や汗止まらなかったんだから。


「アイツが消滅したのなら、ギルドに報告行きましょう。これで、今まで戦って散った人たちが報われますよ」


 そうして私は、アークエスに連れられギルドに行く。ギルドにそのことを報告すると、ギルド内はざわめきに包まれていた。

 それだけ、魔法少女は認知されていたし怯えるに値する存在なのだと、ようやく実感が持てたのである。


「まさかこんなにもお金くれるなんて」

「それだけの存在でしたからね。アイツに認められて彼女の伝承が知られてない所まで退避した人も居ますからね」


 そうして一つ気になっていることを聞いてみることにした。


「お父さんってどんな方だったのですか?」

「赤き閃光の白銀の冒険者です。大剣を用いて戦う勇ましさから付けられたとか何とか」

「え、あの司書さんってもしかして相当強い?」

「金の冒険者ですからね。魔族を剣を突いた瞬間、頭を破裂させたとかっていう逸話がありますよ」


 色々な意味で。衝撃な一日だったといえるであろう。


 退避したのは、アリアの師匠のことです。

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