28話 助けてくれた存在
国軍は、未だ私の居場所を把握できていない様子だ。
なぜなら、冒険者までもがそれに駆り出され始めているからだ。
おそらく、ギルマスの指示で動いている金に釣られたアホたちだろう。
気配を消して、近づくがどいつもこいつも銀の冒険者、銅の冒険者といった冒険者しかいない。
金の冒険者もこの国にもいるはずだが、このクエストには参加していないのであろうか?
そんな疑問が頭に浮かぶのだ。
こんなところで、道草を食ってるのもアレだし国に戻ろうとするが、一つだけ懸念点がある。
それは、国に戻るためには手続きが必要なのだ。
侵入するわけにもいかないから、困ったものだと顔にも出る始末である。
「クエストの処理もあるからな」
これをしていないと、冒険者として傷がつくのだ。こんなことで、傷をつけたくないのは誰しもが思うことだ。
それもわかっているからこそ、ギルマスは捜索隊を放ってきたのだろうと推察できた。
「まんまと引っかかったか」
自分の行いがどれだけ悪手だったか、思い知る。
それが原因で、心のメンタルはすり減るのを感じ取るが気にしていてもしょうがないことだと、一区切りをつける。
そうして、国の方に近づくのであった。
以外にも、そこの門番は来たときに出会った彼しかいなかったのだ。
国の警備業務もあるため、人数は残しているのであろう。
ここで捕まったら、まぁ大人しく従うかと腹を括って彼の前に立ったのだ。
「け、剣聖様! ご無事で何よりです」
意外な対応をされ、私は少々困惑する。先ほどまでの決意が揺らぎそうになる。
いや、待てよ。これが罠だとしたらと考えることもできるはずだ。
私は、何事もなかったかのように申請をお願いした。
「剣聖様、領主様が申し訳ございませんでした」
この国軍を使った騒動の主犯が、思わぬところで暴露されて吹き出しそうになる。
(あなたね、そんな喋って大丈夫なの?)
(問題はありません、これは私の意思です!)
はっきりといった青年の瞳は、とても綺麗な青色の目をしていた。
曇り一つない目は今後、汚されたくない瞳だったと言える。そう思ったのだ。
「私の名前はアリア、ありがとう」
私は、青年に手を差し出した。
青年は、最初は驚きと戸惑いの表情を見せていたが、青年は私の目を見て名前を名乗ってくれたのだ。
「私は、ハイド軍門番兵アルグスと申します」
アルグスは、しっかりと握手してくれた。今の行いに多少震えが残っているのが、握った時の感触で伝わってくる。
それでも、自分は間違っていないんだと言い聞かせるかのように、アルグスの震えは次第に収まったのを感じ取ったのだ。
アルグスに改めてお礼を言い、私は気配消しで街の中に入ったのだ。
街の中は、重々しい雰囲気に包まれている。それは当たり前だ。
この世界の中心の国、ダイナールの王族が来訪されるなんて人々にとっても怖いものだ。
そして、国の警備も恐ろしく強固なものになっている。
至る所に、国軍の兵士が少人数のグループとなって動き回っているのが、どこに行っても見られるのだ。
そして、結界術師の姿もちらほら確認できる。
国の整備を慌てて整えているのがわかる。
「まだ見つからないのか! 剣聖様を早く探せ」
グループの指揮をとっているであろう男性の怒鳴り声が聞こえてくる。
そのグループの兵士たちは、「ここにいるわけないだろ」と言いたげな表情をしている。
その気持ちもわかるが、私はあなたたちのリーダーの横に立っている。
それにしても全く気が付かないなんて、バカだなっと思ってしまう。
師匠からは、いかなる時でも気配は探れなんて言われて育った私からしてみたら、使えよと言いたくなる。
突然、テレパシーが流れ込んできたのだ。
(アリア様、ご無事でしょうか?)
心配したミニシアの声が脳内に流れてくる。
(大丈夫だよ、そっちは王子様会いに来てるみたいだけど平気?)
(心臓の鼓動が高鳴っていますわ、それよりも早くお逃げください、領主様は本気で探されています)
(今の所は会う気はないから大丈夫だよ、王子様と楽しんでね)
ミニシアが、今この状況を楽しめないのはわかっている。それでも、私は友達として応援したい思っているのだ。
そうして、宿の方に着くと兵士が何人も集まっている。
これでは、家に帰れそうではない。
宿屋のおばちゃんには、とても良くされたのに最悪な仕打ちをしてしまっている。
この騒動が終わり次第、謝ろうと思うのだ。
そうして、兵士たちが急にソワソワしているのを感じ取る。
そして、領主邸のある方からただなる気配を感じ取ったのだ。
「あれが、第五王子の風格か」
この国を簡単に飲み込めそうな勢いな気配は、私を昂らせるにはもってこいであった。
剣が疼くのを感じる。
おそらく英才教育でもされた王子は、さぞお強いのだろうとよだれが落ちる。
いますぐにでも、壊したくなる。
その感情を、奥底になんとかしまいしつつその場を離れようとした直後のことだった。
気配消しが見破れた感覚がしたのだ。
「まさかあなたにバレるなんて……出店のおばちゃん」
「こっちへ来な、そんな殺気を出すもんじゃないわ」
どうやら、王子に向けた一瞬の殺気で私を見つけたようだ。
「私を、連れて行くの?」
「そんなことはせんわい、その力を使うのも大変じゃろ、私の家に来な、アレを食わしてやる」
得意げな表情で私を引っ張るおばちゃんは、なんかどこか嬉しそうだった。
「どうして私にそこまでのことをしてくれるの?」
当然の疑問であろう。この国に来て数分後に訪れた最初の場所だ。
たったそれだけの接点でありながら、そんなんことをしてくれるのだから。
「孫も世話になったと言っておったしな」
それで点と点がつながったのだ。
アルグスだな。さっき顔を見た時、青い目をしていた。最初はただの偶然かと思ったがそんなこともあるのだなと、私は思ったのであった。




