309話 ダンジョン探索
魔物、魔族を斬り、前に進んでいく。そうして私たちは、辿り着いたのである。
「魔法陣!?」
それもその周辺の木々を飲み込み、全く新たに作り始めようとしていた。
禍々しさを感じ、武器に手を掛けてしまうほどだ。今すぐにでも対処しなければと思ってしまう。
だが、足はその場から動こうとはしない。まるで石化したかのような感覚である。
左右に立っていた二人を横目で見ると、二人とも私と同じようにその場から動けずにいた。
「これがダンジョンが生まれるってことなのか」
「ねぇ、魔法陣の中心誰かいるよ!!」
ナズナの指差す方を見ると、そこには魔物が立っていた。こちらに気が付いたのか、目線をこちらに向ける。
飲み込まれそうな目、そんな印象を受けた。赤く光る目、次の瞬間フェクトの結界が作動する。
「アイツはメデューサだ! 今結界を発動させてなかったら、確実にアリアは石化してた」
「チッ……まぁここではもう何もしないわ。ボスとしてお相手して差し上げますわ」
メデューサはそう言い残し、そのまま魔法陣に吸い込まれていく。
攻撃しようにも、魔法陣を守る結界は硬く軽はずみに打った攻撃ではびくともしない。
そうして、魔法陣の内部では岩のオブジェが生成されていき、最後に遺跡が生成されダンジョンは完成する。
「これを今から攻略するのね」
ジャングルに聳え立つ大きな遺跡。周りに馴染むように、所々ボロくなっており、ツルが壁に張り付いていた。
何とも無駄に近いような所を凝っているのには、私たちは苦笑するしかなかった。
「とりあえずイデリアに連絡するわね」
「そうだな。でも、もう気が付いていてもおかしくないだろうけどな」
そうしてイデリアにテレパシーをかけ始めた。その時、ナズナが飛び出しそうになるもフェクトが取り押さえてられていた。
(ダンジョンが出来たことなら知っているわよ。私の所も忙しいから、攻略はそっちで勝手に進めて良いから)
(何してるか知らないけど、無理はしたらダメだからね)
そうしてテレパシーが切れた。あの少し焦った感じ、魔物や魔族と戦っていそうだと推測出来た。
それに早く入らないとダメみたいだ。私たちは、生まれたばかりのダンジョンに足を踏み入れたのであった。
中に入ると、そこは真っ暗で何も見えない。一歩試しに歩いてみると、左右の蝋燭から段々とついていった。
「気配を感じ取って点火されるのか。それにこの蝋燭を含め、全て魔法で作られてる」
「少し先まで一本道って感じかな? マップとかって使えないの?」
私はマップを展開させる。ダンジョンとして解禁されたのだろう。一気に情報が流れ込んできた。
「こんなに大きな建物なのに一階層のみって、相当強気な設定みたいだね」
それに特に複雑な道すらない。完全に、誰でも攻略出来そうな初心者ダンジョンのような作りになっていた。
「でも油断はするなよ。あのメデューサ、相当な強さなのは間違いない。それに外の石像も気になる」
確かに入り口にあった石像、あれは間違いなくメデューサを表した物である。
「でもメデューサってそこまで強い魔物ではないニャー」
「ただアイツは、魅了系統も使えると思ってた方が良い」
確かにフェクトの言う通りである。あのメデューサ、おそらく私たちを襲ってきた連中を差し向けた張本人だろう。
ただ、それにしては大掛かりな気がした。
「とりあえず立ち止まってても仕方ないから、この先の開けた場所まで行ってみよう!」
「先頭は俺が行く。俺の予想が正しければ、そっちの方が安全だからな」
いつもならナズナが先頭に居るのだが、先ほどのメデューサを警戒しているのが分かる。
ただ、メデューサはボス部屋にしか居ない可能性が高い。
「アリア、置いて行くニャーよ」
ふと顔を上げると確かに離れ始めていた。私は駆け足で向かう。
ただ前方が突然止まり、ナズナの背中に激突するのだった。
「痛った! 何、急にどうしたの?」
「おいあれ見てみろ。メデューサの群が俺たちを待っているようだ」
チラッと見ると、全員がコチラを向いている。それも少しニヤけた表情である。
まるで餌を来るのを今か今かと待っているようであった。
「何あれ!? え、マジでここメデューサしか居ない感じの場所?」
「それは分からないけど、多分それを覚悟しておいた方が良いだろうな」
「でもあんなに大勢居たら、結構キツイ戦いになるニャー」
確かにナズナの言う通りである。
完全にこちらに気が付いている以上、目視出来ないような速さでもいずれ石化してしまうだろう。
結界を用いた所で同じような結果になるだろう。結界でいくら守っていても、数の暴力というのは恐ろしいものだ。食い尽くす勢いで結界はすぐさま崩壊するだろう。
「だからこのダンジョンは俺に任せてくれ。それにこのダンジョン、他とはどうやら違うみたいだしな」
不思議なことを言うフェクト。そんなことに対して、お構いなしに魔力の高まりを感じさせるフェクト。
完全に臨戦態勢に移行していた。メデューサの所に向かうフェクト。
「俺を石化させるか、俺の魔法で倒されるか楽しみだな。インフェルノビット!」
結界をしているとはいえ、相当キツイはずの攻撃を涼しい顔で耐えならが高火力魔法を絶やさず撃っていた。
「これってもしかして、高密度の魔力があるからじゃないの?」
「確かにそうだ。完全にダンジョンの中だからって、その考えを切り捨てたわ」
高密度の魔力が今も絶え間なく私の体に入り込んでいる。
だからこそ、より安全な道をフェクトは選んだんだ。
「おいおい結界一枚削ることも出来ないのか、お前らはよ」
それを言う頃には、メデューサは跡形もなく消えていた。
完全に、フェクトの独壇場と化していた。
「ここは魔法が扱える連中からしてみたら、良い練習場になるかもな」
「でも無茶な戦い方出来るの、フェクトとか魔法界のトップ層でしょ」
「いや出来ると俺は思うんけどな」
そんなことを言いながら、開けた場所に足を踏み入れたのであった。
 




