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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-1章 剣聖少女前日譚と旅の始まり

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27話 金の冒険者と逃亡劇


 翌朝、朝早くから目が覚めていた。

 体が、運動を求めているかのようにも思えるのだ。

 ここ最近、運動をしたのは昨日が久しぶりである。

 

「やることもないし、ちょっと国を一周してこようかな」


 そうして、準備を整え軽装で走り出す。まだ外は薄明るいだけで人通りはない。

 いたとしても、出店の準備している人たちをたまに見かける程度である。

 そのため、少しスピードを早めても何も問題なさそうだ。


「この国に来て数日経つけど、ここはだいぶ発展している場所なんだよな」


 それはやはり、第五王子と結婚する可能性が高いからだろうか?

 それもあって、国を豊かにするためにお金を貰った可能性も高いが、私には関係ないことだ。

 そんなゴタゴタな騒動に巻き込まれる前に、関わるのを辞める。

 そんなことを考えていると、朝日が次第に登ってくるのを見ることができた。

 とても綺麗だが、今日もまた暑くなりそうと思うのであった。

 それと同時に思い出したことがある。


「ギルドに行くの忘れてた」


 その瞬間から、一気に疲労感が体全身に伝わってくる。

 基本的、めんどくさいことはあまり好きではない。


「でも行かないとだしな、……そういえば、魔族のあれ換金してもらうの忘れてたわ」


 一気にめんどくさいと思っていたことが、楽しい時間に変わっていく。

 お金が貰えるのだから当たり前だ。

 そうと決まれば、早く半周してご飯を食べてギルドに向かわないとね。

 それから、一時間も経たないうちに走り終え軽くご飯を食べつつ、ギルドが開くのを待った。


「おはようございます、剣聖様」


 少し驚いた様子で、挨拶してきたのはギルドマスターであった。

 ギルマスは、慌てた様子で扉を開け中に案内してくれたのだ。


「まだ時間じゃないのに、申し訳ない」

「頭をお上げください、剣聖様」


 ギルマスは、朝からだいぶ疲れた顔をしていたのは言うまでもない。

 そして、奥の部屋に通されるとすぐに話が始まった。


「金の冒険者として、登録をしたいのですがよろしいでしょうか」

「それはいいけど、理由はやはり推薦があったからかしら?」


 ギルマスは、少し黙っていたが全てを話すまで終わらないとでも、悟ったかのような勢いで喋りだしたのだ。

 理由は、主にこうだ。

 一つ目は、やはり推薦があったから。

 二つ目は、功績として銀の冒険者ではあまりにも違いすぎるから。

 三つ目は、剣聖としての力を発揮しているからといった理由があったためらしい。

 なんなら、推薦に関しては飛び級させろとまで書かれていたほどと言っていたのだから、相当熱意がこもっていたのも窺える。

 二つ目に関しては、私も納得している。なぜなら、魔族を殺し、賞金首の確保及び殺害等の実績が銀の冒険者のランクでは力不足と感じていたからだ。


「そしたら、今日から金の冒険者として名乗っても問題ないってことですよね?」

「はい、もちろんでございます、ラックアップおめでとうございます」

「ありがとうございます、あの魔族のツノを買い取ってはいただけないでしょうか?」


 それには、驚きもせずすぐに対応してくれていた。それには、私も不思議そうな目を向けてしまうほどである。

 そして換金作業が終わった頃、ギルド内が騒がしくなっていくことに気がついたのだ。

 備え付けの時計を見ると、ギルドの営業時間がそろそろ始まる頃であったのだ。


「これ以上は、迷惑になりますのでそろそろ」

「あ、待ってください剣聖様! 昨日のオーク戦誠にありがとうございました」

 

 ギルマスは、とても深々と頭を下げていた。


 私は、それに見送られながら扉を開けたのである。

 驚いてるギルド職員は、誰一人としていなかった。

 全員、一斉に頭を下げた時には、私の方がびっくりしたのであった。

 そうしてギルドを出る頃、街の中が少しいつもとは違う騒がしさをしているのに、気がついたのだ。

 

「号外号外だよ! 第五王子様がお見えになるよ〜」


 新聞を所狭しに投げていた少年の言葉、それがどれだけ重要なことか理解した。

 

「これは、今日屋敷の方に近づくのはやめておいた方が良さそうだね」


 私の直感は、いい感じにあたるのだ。それを理由にしすぐさま、ギルドに戻ったのだ。

 なんでもいいから、クエストを受けていないと巻き込まれるのは、おおかた合っているであろう。

 

「ルングさん、このクエストたち受けるよ」


 大量のクエスト内容の書かれた紙を、ギルマスに渡したのだ。

 それを、全て承認してくれたのはありがたかった。

 そうして、逃げるかのように南門から国を出たのである。

 今の所、追ってはいない感じなのを感知しつつ森の方に箒を飛ばしたのだ。

 

「ここまで来ると安心度が増すなぁ」


 ホッと一息入れつつ、受けたクエスト内容を確認する。

 魔物討伐が三つ、採取クエが二つである。

 とりあえず、魔物に関しては出会ったらラッキー程度に考えつつ採取クエしていく。


「シビレ草と毒草」

 

 いかにも、やばそうなメンツである。

 一体誰が採取を頼んだかと思ったら、病院の方である。解毒薬の新規開発のために必要と書かれている。


「ありがたいけど、回復術師が居たら基本的に要らないやつじゃん」

 思わず思っていることを口に出してしまっていた。

 

 そうして、それらを探していると気配を感じる。

 魔物ではないのは確かだ。おそらく国軍なのは間違いなかった。

 私一人を、探すために国の軍を動かすなんてよっぽどのことが起きたのか、私を王子に合わせたいのか、どちらかは知らないけど、私が君たちに捕まる要素はゼロである。

 師匠から習った気配消しを使用しつつ、森から離れていく。

 幸い、採取クエの方は逃げている際に両方手に入ったのはありがたかった。

 シビレ草は、見た目は黄色い葉っぱのだがその周りに飛んでいる粉こそ、シビレを発症させる厄介なものだ。

 毒草は、見た目通りの毒々しさを放つ紫の葉っぱを特徴とした草である。

 そうして、国軍から逃げる逃亡劇が幕を開けたのであった。


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