285話 国の行末
現領主は、カーム爺の息子だった。薄々勘付いていたが。私はそのことに触れる気はなかった。
話し合いは、現領主が住んでいる家で行われた。最初はさっさと国外逃亡しようとしたが、そんなことをする暇なくナズナに捕えられたという。
「早速だけど、今後について話し合いをしましょう」
だが当の本人たちは、どちらとも口を閉ざし、何も言おうとはしない。
それどころか、こちらを睨みつけてくる始末である。
「睨みつけるのは結構ですけど、その分あなたたちの印象は悪くなりますけどいいですか?」
罰の悪そうな顔をして、仕方なくと言いたげな表情を浮かべながら元の顔つきに戻る。
それでも話し出すことはなかった。
「何も話が進まないので、私が勝手に全て決めますよ。私が領主としてこの国を乗っ取りますけど良いですね」
「「いいわけあるかボケ!!」」
さすが親子。息がピッタリとあったこの感じ見てて微笑ましさを感じる。
「それだったら早く話し合いを始めてください。もしまた同じことをやれば、どうなるか分かってますよね」
そうしてようやく話し合いは始まったのである。お互いの意見をぶつけ合い、何時間も会議は続く。
「やっぱり決まりませんね。古き良き伝統を貫くか、新しい風を入れるか、真っ向から対立したままですね」
どちらの意見も筋は通っていた。カーム爺の落ち着きのある国としてこのまま過ごしていきたいという思い。
息子のライブは、もっと活気ある国にして情熱がある国として発展していきたいという思いどちらとも、第三者から見ても良い意見だと思う。
「どちらともに言えることですが、それって民の意見って取り入れました? 困惑に満ちた国では長続きなんてしませんよ」
二人とも取り入れたと言いたげな表情だが、口が動かない。
自分と同じ意見の連中で固まって、それが国の総意とでも思っていたのだろう。
完全にダメなパターンだと私は思う。いずれ大きな革命が起き、両者共々敗れる日も近いかもしれない。
それに漬け込んで、ダークウイッチーズは革命という種を蒔いた。
それがここまで侵食しているあたり、長い年月を掛けて天塩に育ていたと言えるだろう。
「これから民たちの意見を聞きましょう。それでこの国がどうあるべきか、考えていくべきだと思います」
そうして私はその場を後にした。家の周りには大勢の人々が集まっている。
どうなったか聞きたいのがビンビンに伝わってくる。その熱気こそ、この国に関心を持ち、情熱に溢れた国と言えるのかもしれない。
「この国がどうなるか楽しみだね。二人とも」
「そうだな。今までにはなかったような国が生まれるかもしれないな」
「私たちは明日には旅立つけど、きっと良い国になるニャー」
そうして私たちは、国から離れるためその準備を済ませ明日を待つのだった。
翌日。その日はいつもより早く目覚めていた。カーテンからチラチラと見える光。
それがなんとも心地よく、とても素敵だと思った。
カーテンを開け、宿の二階から外の景色を見る。遠くに見えるカーム爺が住んでいる場所。
今は、結界もなく遮るものなんてない。これからどんな国になっていくのだろうと、改めて思うと胸の高鳴りが止まらない。
それだけ、私が楽しみにしているという現れなのだろう。
「二人より先に準備済ませて驚かせるぞ〜!」
その日の朝。二人は私の姿を見て少しばかりの驚きを見せてたのである。
「とりあえず今後の予定は、またあてもない旅を続けていこう」
朝食を食べ門へと向かう。あの気持ち悪かった雰囲気が、とても今は穏やかである。
これがカーム爺が統治していた頃のなのだろう。
「剣聖様! もうこの国から出発なさるのですか?」
門番の兵士が少し驚いた様子で話しかけてきた。
「そのつもり。この国に必要なのは私ではない。私はただ、後押しをしただけだから。この国の発展を願っているわ」
門番兵は敬礼をして、私たちを見送るのであった。
……
ここは王都。ここに来たのは二度目である。一度目は、転移屋を頼り登録だけ済ませてすぐに戻ってきた。
「アイツら大丈夫かな。まぁトータトンが居るしそこまでは心配してねぇけど」
ブツブツと独り言を言いながら王都の街並みを散策する。圧倒的都会を感じ、少し居心地が悪い。
そうして歩いているうちに、魔法を扱える奴らに見張られているのに気が付いた。
こちらが気が付いているのを分かっているのは、一人だけ。それも相当な手練れだ。
ここで不用意な動きをしたら、間違いなく全員にバレるだろう。
それはなんとしてでも避けたい。これ以上ことを大きくするのは御免である。
そうして何事もないかのように、立ち止まらず歩き続ける。
そうして辿り着いた場所は魔法界本部だ。
「一気に警戒心が増したな。そろそろ良いだろ出てこいよ!」
気品とした女性が出てきてすぐ、後に何名かのフードを被った魔法使いが現れる。
「見た感じ、アリア様と同じ年齢だな。でも、あんたの方が凛とした感じだな。それはやっぱり……!」
杖を向けられ、俺は黙った。これ以上踏み込んだら無事では済まないと思ったからだ。
その顔は、とても可愛く笑っているが少しばかり怖かった。
「先ほど言いかけたのは忘れてくれ。それで俺に何のようだ?」
「トータトンさんたちに会いに来たのですよね。四人目の守獣さん」
おそらくアリア様が話したのだろう。ここのボスとは、結構一緒に居るようだし。
「その通りだ。だから、その杖を下ろしてはくれないか? 流石にそのままだと俺だって気分が悪い」
「それは済まなかった。あれ以降揉めていてね、頭が回ってなかったわ」
「そうか、それでトータトンたちは何処にいる?」
「ついてきてください。すぐの所なので」
そうして少女に連れられて歩いていく。その歩き方もとてもアリア様とは同い年とは思えないほどに、気品に満ち溢れていた。
「俺にまでそんな態度とってたら疲れるだろ。かしこまった感じ、俺苦手なんだよ」
「そうなんですね……私の名前はフレリアなの、これからよろしくね」
「俺はアマだ、よろしく!」
そうして向かったのは、大きなお屋敷である。そこの中には、確かにアイツらの気配があった。
そうして門を隔てて現れたのは、横に立っている少女よりも、遥に魔力が多い女が出迎えてくれる。
「そう警戒しないでください。私の名はイデリアよ、これからよろしく」
「俺はアマやで、よろしく」
その握った手はとても力が込められていたのであった。
フレリアが、小さき魔法少女と呼ばれていたのをすっかり忘れていた作者なのでした。
最近は、完全にイデリアを補佐するために凛とした性格になっていたので、最初のフレリアを思い出せる良い回だと思っています。
作者的には、アマフレコンビは結構良いコンビだと思ってます。




