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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-7章 魔神王と五種の守獣たち

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283話 国の名はカーム


 男はニヤリと笑い、こちらを見るだけで何もしてこない。私が一歩前に出れば、周りの仲間たちの魔力が上がる。

 あくまでも自分の手を汚したくないということか。


「なんて外道なお人なんだか。それで、ここから逃げられると思ってる?」

「イデリアを呼ぶのは悪手だぜ剣聖様よ。今ゴタついてるだろ、剣聖様関連でよ」


 思わず舌打ちをしてしまう。そのことを見越して、わざわざ私の目の前に現れたのだろう。

 あのニヤケ顔、今すぐにでも殴り飛ばしたい気分になる。

 周りにいた野次馬連中もざわざわして辺りがうるさくなる。ここで、これ以上騒ぎを起こすのはそれこそめんどくさいことになる。


「ここでは見逃してやる。さっさと荷物をまとめて出ていくんだな、次会った時は容赦しない」

「可愛い顔が台無しだぜ剣聖様。もう俺たちの用事は終わった所だ、精々革命が行われる国を見ていくといいぜ」


 そうして彼らは転移で何処かへ行ってしまった。気配を直前まで追うが、ここを出た時点で分からなくなってしまった。


「とりあえず私たちもこの場から離れるわよ」


 そうして、颯爽と屋根に飛び乗り箒で逃げるように去ったのであった。

 そんな中、フェクトがあることに気が付いた。


「ここいらの建物は赤とかの派手な色が多いが、奥の方見てみろよ。なんか落ち着きのある建物が見えるぞ」


 確かに言われてみたらそうだ。おそらく改革途中なのだろう。

 それが上空から見ると丸わかりだ。


「あれってもしかして、革命を起こそうとしている連中の家じゃないかニャー」

「ナズナのいう通りだ。結界が張ってある、それもめちゃくちゃ強力だぜ」


 王都の城や国々の領主の家で見られる結界はある。ただ、こんな普通な街の一角にそれに相当する結界って、ダークウィッチーズの仕業なのだろうか。


「とりあえず近くまで行ってみよう! 何か分かるかも知れないからさ」


 箒を飛ばし、すぐさま結界の目に降りてきた。触れてみるとバチッと手を弾かれてしまう。


「このタイプってあんまり見ないよね。ほとんどの場合は守るために使われているからさ」

「確かにそうだな。これはこれは抵抗を示していると言ってもいいだろうな」

「でもこの結界をダークウィッチーが張ってるなら相当厄介そうだニャー」


 確かにナズナの言う通りである。これをアイツらが張ったとするなら、確かにめんどくさいことになる。

 これを壊せばおそらく、軍の奴らも好奇と踏んで、全軍を向かわすと考えていいだろう。


「お前たちそこで何をしている! 軍の雇われ冒険者か」


 後を振り向くと、老人がこちらを睨みつけていた。


「それは誤解です。私たちは旅の者ですしあの考えには賛同出来ませんから」

「信じはせんが信用はしておこう。お主は、あの剣聖アリア様じゃろ」


 どうやら気が付いたのか、そう問いかけてきた。私は即座に首を縦に振り下ろした。


「もしかしてその杖、仕込み剣ですか? 即座に斬れるように、いつでも肌身離さず持っているようですが」


 長年使っているのだろう。色はだいぶ自分色に染まり手にも馴染んでいるようだった。


「この老耄(ろうもう)と戦ってみるか剣聖様よ。ワシは強いぞ」


 一気にプレッシャーが跳ね上がる。ヒリつくこの感じ、先ほどの結界に触れた時のようだ。


「どうじゃ、やる気になってくれたか? 一撃で良い、お前さんにぶつけてみたくてよ、ワシの全力を」

「フェクト、結界出してくれるかしら? 私は剣聖よあの思いに応えるために」


 フェクトは、渋々結界を出してくれた。そうして私も剣を抜いた。


「さぁ勝負よ」


 お爺さんに、この声は届いていない。集中しているのが分かる。

 そうして一歩踏み出した瞬間、お爺さんは私の前から姿を消したのだ。


「一撃一閃・豪雷」


 結論から言おう、勝負は私の勝ちだった。


「まさか簡単に弾かれるとは……思いもしなかった」

「タイミングがあってなきゃ、今頃ぽっくり私だって死んでたかもだよ」


 それだけ速かった。目に追えるスピードではなく、感覚で弾いた感じだった。

 無意識に近い感じそんな気がする。それに弾かなければ()が待っていた。

 それだけ凄く強かった。


「ワシは魔剣士として昔活躍してたんだよ、小童に弾かれるなんて歳を感じたくないね」

「魔剣士? もしかしてこの結界を作ったのはあなたですか?」


 すっかり抜け落ちていたのか、慌ててお爺さんは名前を言う。


「最近は物忘れも多くてな。名乗ってなかったのう、ワシは元領主のカームじゃ。今ではカーム爺と呼ばれておる」


 とんでも発言が聞こえたが、これは触れて良いのだろうか。

 見た目は本当にご老体そのものなのに、強さは本当に化け物級。

 それに魔法使いとしても強いなんて、なんとも尊敬する人物だ。


「よろしくねカーム爺! わたしの名前はナズナ、格闘戦を得意としているんだよ」

「おーそうかそうか。それはまた強そうな。ほれ、飴ちゃんだ。これでも食べておくれ」

「わーい! ありがとうニャー」


 その一連を見ていたフェクトも名乗り出した。


「俺はフェクト。魔神族だが、今はアリアの使い魔さ」

「この結界、とても硬く素晴らしいものじゃ。昔はそういう才能マンに憧れを持っていたが、今では尊敬の眼差しをしてしまうわ」


 フェクトも仲良さげに話していた。


「改めて名乗るわね。剣聖アリアよ、カーム爺これからよろしくお願いします」

「まさか現役の剣聖に握手を求められる日が来るとはな。やっぱ長生きをしておくもんよ」


 そうして結界の前に行き、結界の前に手を当てる。


「早速案内したかったが、少し待っててくれ。軍奴らじゃ」


 そうして振り返ると、確かに軍の連中がそこには居た。


「さっきはよくもやってくれたな剣聖よ! ここではここのルールに従ってもらわねぇと困るんだよ!」

「何を騒いでいるかと思えば、図体だけは大きいだけの弱虫小僧じゃねぇか」


 喚いていた男が一歩後に下がる。剣に手を掛けようとするが、相当震えているのが分かる。


「カーム爺さん……」

「どうした? いつも見たく、その剣を振り回してみよ。怖くて出来ないのか。それだったら剣を持つなこのアホたれ」


 次の瞬間、肘打ちが炸裂するのであった。


「覚悟もないくせに現れるな。次、こんなことをしようもんなら、今度はこっちから攻め入るだけじゃ」


 そうして逃げていく後ろ姿を見送りつつ、こちらを振り返ると笑顔だったのである。

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