281話 四人目
あの騒動から数日経った。新聞を見る限り、どこにも情報が載っていない。
経った数日前のことなのに、誰しもがそんなことなかったような感覚になる。
「なんで私。またこのことを考えてるんだろ」
考えないようにしていたはずなのに、気が付けば新聞を見てはさがしてしまう。
おそらく新聞に載ってないということは、箝口令が敷かれていると考えるのが妥当。
「アイツらに聞かない方がいいわよね。それにしてもいつの間に白銀なんてなってたのよ。教えてくれたら良かったのに」
思わず口に出してしまう。そうすればあの子たちだってあんなことしなくて良かっただろうに。
私は宿を出て外の空気を吸う。頭の中にあったモヤモヤを一旦吐き出すかのように、新しい自然の空気を吸う。
「アリア、こんな所で何してるんだ?」
「フェクト、それにナズナも一緒なのね。ちょっと外の空気を吸いに来たのよ」
「ふーんそうか。そんなことより、俺たち今からクエストで魔物討伐行くけど行く?」
「せっかくだしみんなで行こうニャー」
気分転換にもなるかと思い、私はそれを承諾した。そうして、早速村を出て少し離れた森に向かう。
「聞いていなかったけど、今回どんな魔物を討伐するの?」
「デュラハンニャー。最近、森を彷徨いているらしくて、国のギルドにも出してたみたいだけど、来てくれなかったみたい」
こんな静かな森にデュラハンね。何か異変が起きていると思った方が良さそうね。
箒を握る手に力が籠る。そうして森に到着し降り立つ。
「とりあえず今の所気配はしないね」
「でも魔物の気配はそれなりに居るように感じる」
「それだったらデュラハン居るの? 強い魔物が森に居たら近寄らないよ」
次の瞬間、微かだがいやーな気配が感じ取れた。左右にいた二人を見るが、特に気が付いてる様子はなさそうだ。
「どうした、キョロキョロして?」
「なんでもないよ」
咄嗟に誤魔化してしまうが、おそらく二人からは不信感を感じているだろう。
そうして私たちは、森の中に入っていくのであった。
「おりゃっ!!」
遭遇する魔物を倒しつつ、次々に進むがあの時感じた気配は一向に感じられない。
それでも私たちはクエストを受けている。何かしら報告する義務が発生している。
そのためにも不安材料は払拭しておくのが一番だろう。
「アリア、何焦ってんだ? あの時何かを感じ取ったんだろ?」
「正直に話すよ。おそらくデュラハンはいる、それもいやーな気配だった」
「嫌な気配? それだったら変異種の可能性も考えた方がいいニャー」
ナズナの言う通り、そう思って行動した方がいいかもしれない。
私たちはより深く、慎重に進んでいく。先程までなかった気配が感じられるようになっていく。
二人とも感じ取ったのか、より警戒心を高めているのが分かる。
「二人ともあんまり殺気感じさせたらダメだよ。おそらくあちらにも気が付かれてる可能性あるから」
より強くなる気配、それは一気に跳ね上がる。それすなわち、私たちに気が付いたということだ。
「茂みでガサガサしてないで、さっさと出てきたらどうだ冒険者たち!!」
随分と渋い声、そんな声が静かな森に響く。私は立ち上がり、茂みを抜け声のした方に向かう。
そうして姿を見せる。だが、私は目の前の光景に困惑する。
「怪奇な姿に驚いたか。これはマジックでもなんでもないで、俺は正真正銘のデュラハンやで」
人間の姿をしているが、首は手で持っている陽気なおっさん。
そう印象付けるしか出来なかった。
「この鎧かっこいいやろ。白を基調とした鎧なんやで」
鎧を自慢するデュラハン。そんなことをしているうちに、仲間二人も後を追ってきた。
二人ともなんともいえないような表情を浮かべ、私の方に視線を向けている。
「間違いだったら訂正してほしいんだけど、もしかして五種の守獣だったりする?」
デュラハンは驚いた顔をする。こんな森の中で聴けると思っていなかったと分かるほどだ。
「なんや、一端の冒険者にまでそんな伝承が伝わってるの? いやはや、ようこんな連中のこと知ってたなぁ」
「だって私、剣聖ですから」
そう言った瞬間、一瞬にして雰囲気が変わる。ギロっとこちらを睨みつけ、腰に下げていた剣に手を掛ける。
「嘘だろそれ?」
「トータトン、ズリグリ、マッドンって言ったら信じますか?」
いや信じない。感じ取れる雰囲気で分かる。完全に私を殺す対象として見ている目だ。
「それだったら実力で認めさせます。それなら問題ないでしょ?」
「やってみろ、お前如きなんか一瞬で終わるわ」
次の瞬間、デュラハンは一撃で、木々を次々に破壊しながら吹っ飛ぶのであった。
「誰が一瞬で終わるって、もういっぺん言ってみろや。次は本気で相手してあげるから」
鎧は粉々になり、風に舞って消えていく。そうして、デュラハンは言うのである。
「主人様、本当に申し訳ありませんでした」
「本当は最初から気が付いていたんでしょ? トータトンたちから情報は少なからず言ってたはずよ」
「その通りです。ただ本当に強いかどうか、知りたくてやってしまいました」
完全に萎縮してしまっていた。自慢の鎧は壊れ、一瞬で負けたことによるショックがあるのだろう。
「そう気を落とすことはないよ。普通に消滅してないだけ、あなたは強いから」
「ありがとうございます」
「俺からも一つ良いか? 名前はなんて言うんだ」
すっかり聞くのを忘れていた。フェクトが居なければ、聞かずに別れていたかもしれない。
「アマです。以後お見知り置きを」
「シンプルで良い名前じゃん! これからよろしく」
そうして、村に入るため首を人間同様にする。
「それにしても図体も大きいし、筋肉すごいね」
「それを吹き飛ばしたアリアが言うのかよ」
「まぁそりゃそうなんだけどさ、でもやっぱりこういう努力ってすごいと思うのよね」
そんなことを言っているうちに、村へ戻ってきた。そうして、クエスト報告を終わらせ今後の話をすることになったのだった。




