278話 ボス
「ぜぇぇぇいっ!」
最後の魔物を討伐する。そうして私たちはその場に座り込むのだった。
「入ってすぐの場所なのに、魔物多かったね」
「弱かったが最初から大勢で来られるとは思わなかった」
私たちは今ダンジョンに来ていた。あの騒動がようやく終わりを迎え、旅を再開した直後にここを発見したのである。
「でもマップを見る限り、ここで大量に魔物が出るのは通常だよ」
ダンジョンの構造は至ってシンプルな洞窟型である。広い所に出れば戦闘は大抵発生するし、ボス部屋前には大きな扉があるやつだ。
休憩を終え出発しようとした時、地面が泥となり足の自由を奪っていく。
「守獣ではなさそうだな。アイツより弱いのは気配で分かる」
「でも気配的には、複数が合体してるように感じるニャー」
「そういった場合は、核を狙えば一撃で終わる。とりあえず飛び上がって出てきた所狙うわよ」
そうして飛び上がると同時に、マッドン同様足元から拳を突き出してきた。
「泥で気が付かなかったが、コイツ相当大きいぞ!」
突き出した拳の時点で、私たちの身長を超えていた。
「いや違う。ここがいくら開けた場所って言っても、コレが収まるようなスペースはない」
「ってことは、泥を集中させて作り出した物って考えて良さそうだな。インフェルノ!」
フェクトは魔法陣を展開し、拳にインフェルノを当てた。その瞬間、痛がると同時に逃げるように地面に腕を戻す。
「とりま浮遊してた方がいいね。地面に降りたら、おそらくまた同じことの繰り返しだと思う」
「それだったら俺にいい考えがある、バーニングショット!」
地面に炎の塊をぶつける。その衝撃は凄まじく地面にはクレーターが出来上がっていた。
「多分もういないニャー。さっきの攻撃を受けて逃げたのかも」
そうして私たちは次の場所に向かうべく地面に降り立った瞬間、周囲から鋭利な棘が体に突き刺さる。
右肩、左腹部、両足突き刺さっていた。
「ー!? マジ……!?」
本当に降り立つその時まで、気配すら感じなかった。それなのに棘が出てきた瞬間、気配をまた感じる。
「二人とも大丈夫?」
「俺はたちも急所は外してる! ただ、このまま攻撃したって意味がないぞ」
フェクトの言う通りだ。いくらフェクトの魔法が早いとはいえ、主戦場の土がある限り相手が有利なのには違いはない。
「ここでこれ以上暴れたら崩落する危険性もあるよな」
このまま刺さった状態で居ろというのにも限界はある。それに第二陣を発射してこないのは、私たちの攻撃を警戒している証拠である。
(おそらくこの棘から抜けた瞬間、私たちが離れたことが伝わる可能性がある)
(それだったらこの棘に攻撃すれば良いかもね)
(俺に任せろ)
次の瞬間、棘は一瞬のうちにして破壊され魔物が飛び出てきた。
「マッドライズン!」
マッドライズン―主に地中の中で生活している。攻撃方法は、周囲を泥に変え人間中に引きずり込んだり、飛び出して一撃浴びせたりする。
弱点は、火であり魔法での対処が一般的である。他にも核を狙って武器で攻撃することも可能だが、まず難しいと思っていい。
基本的に地面に衝撃を与えたり、基本的に火魔法を与えて炙り出さないとまず攻撃出来ないからである。
魔法が使えるなら、圧倒的に魔法が使った方が楽とされている。
「どうやって攻撃したかは後で聞くとして、ここは私に任せて!」
剣を振り翳し核ごと叩き切ったのであった。
「手こずった、もっと鍛錬しないとだね」
「それよりも気になるだけどさ、どうやってあの状況で外に連れ出したの?」
「それって怪我を治すより先に聞くことかよ。まぁ良いけど、熱した魔力を一気に流し込んだだけだよ」
だから壊れる瞬間、熱く感じたのか。無茶苦茶な方法には違いないが、それがなければまだ戦っていただろう。
フェクトが居てくれて本当に助かっている。
「とりあえずナズナはポーション飲んで」
ナズナは嬉しそうな顔で貰い、美味しそうに飲み干すのだった。それを見てほっこりしていると、フェクトは回復魔法で一気に治す。
「まだダンジョン始まったばかりのはずなのに、ボスと戦った気分だ」
「それは同感ね、確かにそんな気がするもん」
そうして私たちは次の場所に足を踏み入れていく。至って普通の道を入念に気配を調べつつ、進んでいく。
だが感じる気配は、開けた場所に集まってきている魔物の気配である。
そうして魔物を倒してマップを確認する。ダンジョンの詳細情報を展開させる。
「攻略はされてるけど、ここ最近の記録はないね」
「もしかしたらさっきのアイツが、行手を阻んでいたかもしれないな」
「そうかもしれないけど、でもアイツは銀の冒険者だったら普通に対処出来るはずだよ」
「それってさ、単体だったらの話じゃない? 私たちの戦ったアイツは複数の気配があったよ」
それだけの要因で、そこまで難易度は変わらないはずだ。相当数の気配が入っていたと考えるべきなのか、分からなくなってしまっていた。
「そこまで深く考えなくても良いと思うぞ。どうせ、俺たちのことだ、そこまで深く覚えてねぇよ」
「それもそうだね」
そうして私たちはダンジョンの奥深くへと入っていた。そこからは特に魔物はおらず、単純に進んでいく。
「ここを曲がれば、ボス部屋に繋がる扉があるみたい」
ナズナが先行して向かうと、びっくりした様子で戻ってくる。
私たちは慌ててボス部屋を見にいくが、扉が開いており中には誰も居なかった。
「え、どういうこと?」
「アイツがボスってことか? それだったら辻褄は合うけど、流石に考えたくはないな」
そうして中に入ると、いつもの魔法陣が展開していた。それを見て私たちは確信するのであった。
恐る恐る魔法陣の上に乗り、次の瞬間出入り口に飛ばされる。
「あれがボスなら、ちゃんとボス部屋に居てよー!!」
思わず大きな声で、そう叫んでしまうのであった。




